王道ウェットシェービング

このサイトでは、普通の「王道」シェービング方法をまとめて紹介していませんでした。今回は、王道の剃り方の記事です。

当サイトで人気があるシェービング記事は、日本で入手しやすいシェービングソープとクリームを紹介した記事です。次は、私個人の変則的な剃り方を紹介した記事です。

私の剃り方がどのような評価を得ているのかはわかりませんが、変則的な方法です。

心配なのは、私の方法を「通常」の方法と勘違いされることです。あくまでも、王道のシェービング方法があり、それを補足するのが変則的な手段であるべきです。

そこで、基本的な「王道シェービング」方法を今回紹介します。

何を持って「王道」とするか

ウェットシェービングの方法は様々なバリエーションがあり、道具も色々です。手法と道具は個人の趣味が反映され、様々な情報が乱れ飛んでいます。

ただ、そうした違いはあれど、基本的で重要なアイデアがあります。

  • 剃る前にヒゲに水分を含ませ、柔らかくする
  • 切れるカミソリを使用する
  • カミソリは軽く肌に当てる
  • よく滑る泡を使用する

これは、ヒゲをカミソリの刃で切断するが、肌をできるだけ削り取らないようにするためです。肌にカミソリを押し付ければ、一度に深く広い部分を剃れます。スピーディーな方法ですが、肌にダメージも与えてしまいます。

逆に王道とは、カミソリを柔らかく肌に当てることで、少しずつ、剃っていく方法です。ですから時間がかかります。初心者に「じっくりと時間を取ってシェービングする」というアドバイスがされるのは、「肌に負担をあてないように、少しずつ剃っていく。そのため、時間がかかるのは仕方ない。時間がないと焦り、力を入れてカミソリ負けしたり、慌てて傷つけてしまうので、心に余裕が持てるように、時間を確保する」ことを意味しています。

多くの人は、さほどシェービングに時間が取れません。そのため、当サイトでは変則的な方法を紹介しています。しかし、ウェットシェービング初心者はしっかりと時間を確保し、肌に優しい「王道」な方法を体得しましょう。それができてから、だんだんと剃る時間を短くするために、様々なテクニックや、他の人の独特な方法を真似しましょう。

繰り返しますが、王道とは「優しく、少しずつ剃ることで、肌に負担をかけない剃り方」です。まず、これを習得しましょう。

カミソリ

カートリッジ式でも、両刃でも、西洋カミソリでもかまいません。よく剃れる刃が必要です。

ある程度押し付けて剃るのであれば、切れ味は多少落ちてもかまいません。押し付ける強さによっては、切れ味が鈍ってからのほうが快適に剃れます。しかし、あくまで最低限度の力で肌にカミソリの刃を密着させるのが王道です。そのためには、切れ味はやはり重要です。

そのため、カートリッジや両刃の場合は、比較的刃が使用できる回数は短くなります。たとえば、さほどヒゲの濃くない人で1ヶ月使用できるカートリッジであれば、王道の方法を採用するなら1ヶ月未満しか使えないでしょう。両刃の替刃であれば3から4回でしょう。私の場合、通常は4回か5回両刃の替刃を使用しますが、この王道の方法では3回から4回です。切れ味が重要です。少しでも切れ味が落ちたら、この方法ではきれいに剃れません。

押し付ける力を最低限度にすると、両刃のホルダーの違いやカートリッジ式、使い捨てという、カミソリ自体が持つデザインや構造の違いは、あまり重要で無くなります。肌への押し付け方が強いほど、カートリッジの刃を囲んでいるプラスチックの構造物や、両刃ホルダーのヘッドの構造の特徴が発揮されます。最低限度の力とは、刃だけが肌に接触する最低限度の力のことで、要は「刃」そのものの切れ味が反映されます。

準備

部屋は高温多湿が好ましいのですが、ダラダラ汗をかくのも泡が流れて逆に面倒ですので、暑い時期は冷房を使っても良いでしょう。要は血の巡りが悪くならない程度の温度で、泡が乾燥しづらい湿度がある方が剃りやすいということです。乾燥している場所で剃る場合は、泡を厚めに肌に塗り、蒸発を防ぎます。

可能であれば、事前にシャワーや入浴するのが好ましいです。ヒゲに十分吸水させ、柔らかくすることができます。さらに、暖かさにより血流が良くなります。血流が良くなると肌が張ります。肌が張ると、剃りやすくなります。

しかし、環境的に難しかったり、時間的にそこまでの余裕は無かったりする場合は、洗顔をしましょう。最低3分間かけます。これは、アメリカのジレットによる研究・実験で出された結論です。肌がきれいになり、ヒゲが柔らかくなるため、3分間という時間が導き出されました。

可能であれば、スクラブ洗顔のほうが好ましいようです。肌の汚れが落ちてなめらかになり、小さな粒によるマッサージ効果で、吸水が促進されるからです。日本でも、シェービング用品の近くにスクラブ洗顔料が売られていることがありますが、こうした理由なのです。

ホットタオルも良いのですが、ホットタオルを用意する時間と肌に乗せておく時間を考えれば、洗顔のほうが実用的です。床屋さんでホットタオルを使用するのは、1.贅沢さの演出、2.心地よさのサービス、3.血流の促進、そしてなによりも4.お客さんに「顔を洗え」とは言えないからです。

気持ちよさを味わいたいのでしたら、自宅で剃る場合でもホットタオルを利用するのはもちろん自由です。

もし、使用したければプリシェーブ用品を利用することもできます。しかし、基本的には洗顔やホットタオルでヒゲを柔らかくしてから利用しましょう。ヒゲを柔らかくするのは第一に水分です。

ソープ、クリーム、フォーム、ジェル

王道という点では、「滑り」を重視するのが良いでしょう。適切に滑るのであれば、シェービングソープやクリーム、フォームでもジェルでもかまいません。オイルでもかまいません。

肌への保護性には、滑りとクッション性があります。クッション性、つまり粘りはある程度肌に強く押し付ける剃り方で重要になります。最低限の力でカミソリを肌に押し付ける場合は、さほど重要ではありません。

現代的な複数刃のカートリッジの場合、刃と刃との隙間が小さく、粘り気のあるもの、水で簡単に洗い流されない泡が固いか、粘りが強いタイプのものは適していません。詰まってしまうからです。最近のジェルは、もちろん複数刃のカートリッジに合わせて、水で流しやすくなっています。

ソープやクリームを泡立てる場合は、滑りが良くなる水分量を心がけましょう。一番触覚的に、わかりやすい指針です。「泡の細かさ」のような目で見る指針より、触感優先で判断するほうが良いでしょう。

ヒゲを柔らかくするため、最高に滑りの良い状態よりも水分を加えることもできます。大抵の床屋さんは水分たっぷり目の泡を使っています。たっぷり目にしないと、ヒゲを柔らかく保ちづらいからです。

ウェットシェーバーの一部が主張する、「シェービングフォームは水分が足りない」という主張はとてもおかしい考えです。たとえ、歴史のあるシェービングソープやクリームを使用する場合でも、それを肌に直接付けて剃るバカはいません。水分を加えて泡立てます。剃る前には、事前準備でヒゲを柔らかくします。それと同様に、フォームを使用する場合でも、事前準備を行い、肌に水分がある状態でフォームを塗るのであれば、適切に剃ることができます。

日本国内の場合だけを考えると、よいソープやクリームは輸入する必要があり、コストが高く付きます。フォームは国内で大量生産され、安い製品も多いのです。ブラシも不必要ですし、コストを優先させるのであれば、実際フォームのほうが安いでしょう。ただし、日本人はソープやクリームを超節約する傾向がありますので、そこまでやれば同程度のコストパフォーマンスだと思います。(ただし、ソープをケチるのは王道ではありません。)

ジェルに関しては、水分を買っているようなものですので、コストパフォーマンス的には好ましくないかなと思います。独特な使用感が気に入っていない限り、ソープ、クリーム、フォームのほうが良いかと思います。

シェービングオイルという選択肢もあります。剃った後の道具や洗面所のクリーニングが面倒ですので、少数派です。ただし、ソープ類が肌に合わない場合は、有効な選択肢になります。

当サイトでは、Prorasoシェービングクリームの緑を使用した基準の泡を紹介しています。1.0グラムのクリームに水10mlを加えたものを標準としています。

これは、「水分でヒゲを柔らかくできるが、滑りとクッション性もある。」という配合量です。事前にシャワーを浴び、それから剃る欧米人のシェーバーは、どうやらよりクッション性を求めるようですので、1:6から1:8の状態の泡を好む方が多いようです。(これは、見た目が良いため、Youtuberのシェーバーがよく利用している影響もあると思います。)

ただ、髭剃りが上手い人は1:10程度の水分を十分に含んだ泡を利用する傾向があるようです。動画や写真をよく見ると、結構水分が多い泡であることに気が付きますよ。

香り

香りは好みです。特に、ウェットシェーブを本格的に始める場合の利点は、色々なシェービング用品、様々な香りを楽しめることです。

香りに関していえば、男性的でクラッシックな香りが「王道」でしょう。すると代表的なのは、サンダルウッド(白檀)かベイラム(月桂樹の葉のラム酒付け)でしょう。しかしながら、中性化した現代では、オヤジ臭いと嫌う人も多数あります。

多くの人に受ける香りは性別を感じさせない中性的なものが多いようです。

香料にはアレルギーの問題もあります。絶対的なオススメはありません。そして、香りは気分を変化させてくれますが、シェービング自体には関係しません。気持ちよく剃れるように、好きな香りを見つけてください。

ブラシ

ソープとクリームを使用する場合、泡立てるためにシェービングブラスを通常使用します。

シェービングブラシにのブラシ部分(ノット)は、アナグマ、豚毛、馬毛などの動物の毛、もしくは塩化ビニールなどの人工毛からできています。持ち手(ハンドル)は木材、動物の骨、牙、アクリルやプラスチックなど様々な素材からできています。

王道的にはアナグマが最高とされています。その中でもシルバーティップが最高級な原料です。毛のランクの付け方には基準がなく、統一されていません。製造元やメーカーが勝手にランク付けしています。同じ製造元、メーカーの製品を比べる場合、シルバーティップが高級品であることを意味しています。ただし、シルバーティップより上のランクを付けているメーカーもありますので、本当に適当なものです。

ほとんどのアナグマのノットは中国産です。ノット工場ではある程度の品質の最低ランクから、最高級品まで1つあたりの価格差は数ドルです。それが、完成品のブラシの形で市場に出る時点で、最低ランク品は5ドル程度、最高品は数百ドルになります。

実用的には、アナグマにこだわる必要はありません。初心者であれば、きちんと作られた人工毛のほうが使いやすいでしょう。ベテランシェーバーでも、最近は人工毛のブラシを愛用する人が多くいます。2017年の9月頃だったと思いますが、Facebookのシェービング愛好家のグループで、20から30ドル程度の製品であれば、どの毛を選ぶかというアンケートがあり、圧倒的に人口毛を選ぶ人が多かったです。

アナグマが最高と言われるのは、毛先の柔らかさに対して、毛に腰があり、吸水性が高いためです。豚毛はアナグマより固いと言われますが、使い込めば毛先の繊維がバレて柔らかくなります。イタリア製の最近の豚毛ブラシは、最初から使いやすい状態になっているものも多く、値段も手頃です。人工毛はちょっとと思うが、アナグマには手が届かないと言う方は、イタリアのメーカーのSemogueやOmegaのブラシを検討すると良いかと思います。特に、Omegaには安くて評価の高い製品がありますので、初心者におすすめです。

ブラシの大きさは、泡立て方法、ボールを使用するかしないかが関連します。特に関連するのが、シェービングする広さです。頭も剃るヘッドシェーバーであれば、大きいブラシが便利です。口髭と顎髭がある方は、喉と頬の狭い範囲を剃るだけですから、小さいブラシが便利です。

適切な大きさのブラシを使うほうが、ソープやクリームが無駄になりません。3パス行う場合の、個人的な目安を紹介します。記述するブラシの毛の部分=ノットのサイズは、根本の直径のことです。ブラシのサイズは一般にこのノットのサイズで表します。ただし、基準や規格があるわけでありません。各メーカー自由にサイズを表示しています。

また、直径のサイズであるということは、ブラシの毛の量は2乗になります。同じ材料で、同じように製造するならば、10ミリのブラシと20ミリのブラシを比べると、10×10:20×20ですので100:400、つまり20ミリのブラシは10ミリのブラシの4倍の毛を使っているということです。

毛の量が、水分や泡をブラシが保持できる量です。よくあるサイズ、19ミリ、24ミリ、29ミリの場合、19ミリを基準にすれば、24ミリは1.6倍、29ミリは2.3倍です。24ミリを基準にすれば29ミリは1.5倍です。実際には毛の長さも関連しますが、同じ材料で同じメーカーの製品を比べれば、大体このような感じになります。(ブラシの毛の長さは計算に入れていません。もし、ブラシの毛の長さも直径に比例するのであれば2乗でなく3乗になります。しかし、長さはさほど変化が大きくありませんので、簡単にするために省いています。)

たとえば、フェイスラザーに19ミリの小さいブラシを使用していて、2パスは可能だが3パスを行うだけの泡がブラシで保持できない人が、同じメーカーの同じ材料のブラシを購入するなら24ミリ程度のサイズを買えば3パスが余裕でできるわけです。

クリームをボールなどで泡立てて使う場合は、ノットが20ミリ程度の小さなブラシでもかまわないでしょう。ボールに泡をためておけるので、ブラシで泡を保持する必要がないからです。この大きさであれば、日本製の豚毛ブラシも安く売っていますし、日本のアマゾンでも低品質のアナグマブラシが安く手に入ります。

ソープを使用する場合、ノットは25ミリ前後あったほうが良いかもしれません。ボールで泡立てるにせよ、顔で直接泡立てるにせよ、3パス分程度のソープを溶かし出し、ブラシに含める(ローディング)するには、このくらいのブラシサイズが必要です。(ただし、思い切り水分を含ませたブラシでローディングする方法を使うのであれば、もっと小さくてもロードはできます。)

ソープに無駄はでますが、大は小を兼ねます。クリームをボールで泡立てる場合でも25ミリ前後でかまわないわけです。すると、ソープとクリームの違いは無視でき、25ミリ前後の製品が一番使用しやすいということになります。そのため、このサイズにあたる24ミリノットのブラシが一番市場に出回っており、入手が簡単です。(アメリカ、ヨーロッパの話です。)

24ミリとか29ミリとか5の倍数引くことの1ミリのノットが多いのは、たぶん5の倍数ミリのドリルが入手しやすいからです。ノット自体の製造誤差もありますが、一番の理由として考えられるのは、その1ミリを接着剤で充填することで、固定するためです。

ボール、スカウター

ボールで泡立てるやり方の場合、泡が冷えないように予めボールをお湯に付け温めておくか、もしくは泡立てるところとは別にお湯をためておき、温度を持続できるスカウターを使います。

ボールは様々な原料からできていますが、蓄熱性を考えるのであれば陶器性に分があります。スカウターはほぼ陶器製です。

金属のボールは蓄熱はできませんが、お湯を張った洗面器に浮かべておけば、温かいままです。

泡立てかた

泡立てることをラザーニングといいます。

ボールやスカウターを使用する方法は、ボールラザー(ニング)、顔で直接泡立てる方法をフェイスラザー(ニング)、手で泡立てる方法をハンド…ですが、ほとんどボールラザーかフェイスラザーでしょう。ハンドラザーは初めての製品を試して見るときとか、スティック型のシェービングソープを顔に直接塗りたくない場合とか、何かを混ぜ合わせるとか、特別な場合に行われますが、わざわざ手で泡立てる人は少数派です。

「王道」的な視点からボールラザーとフェイスラザーのどちらかになります。ただし、どちらとが王道かを言い切れません。個人的な推測ですが、ボールラザーはイギリス、フェイスラザーはイタリアでの昔からの泡立て方法だったのであろうかと思います。それが、最近は混ざってしまっているのであろうと思います。

泡立て方ですが、泡立てながら少しずつお湯を加えていき、最適な泡の状態を作り上げるのが「王道」です。ただし、ネット記事や動画でよく言われている「大きな泡が立つようになったら、水の加えすぎ」と「大きな泡が出て、それが消えて細かくなるまで」という2つの意見が、「王道」的であるとは言い切れません。多分、動画によりだんだん広がった間違いかと思われます。

そもそも、現在の床屋さんは水分が多めの泡を機械で作っています。

日本の昔の床屋さんは、花王の粉石けんに日本独自の四角いスカウターを使っていました。あれで、動画のように細かくなるまで泡立てられるかと言えば簡単には無理で、そこまでやるには時間がかかりすぎ、効率的でありません。それに、大抵の床屋さんは肌に乗せるとすぐにぱちぱちと弾けだすような、粗く水分が多い泡を使っていました。

過去記事で書きましたが、私自身の経験でも、水分の多い泡はヒゲを柔らかく保ってくれるため、とても剃りやすいのですが、微細な泡になるまで泡立ててしまうと軽くなり、水分補給と滑りが足りなくなります。ほどほど泡立てる程度が最適でした。

目安としては固形物を全部崩した、ヨーグルト状がベストでしょう。これが一つの指針です。

ただし、このヨーグルト状の泡は、一番滑りが良い状態ではありません。一番滑りが良い状態はより水分が少なくなります。具体的には、ソープをロードし、少しずつ水分を加えておき、「ベストに滑る」状態になったら、水分を加えるのを止めます。直接潤滑性を感じられるので、フェイスラザーのほうが簡単です。

床屋さんがお客の顔を剃る場合は、水分多めのヨーグルト状が「王道」でしょう。(標準泡の製造で紹介した記法を使うなら、1:12位で、あまり泡立てない。)しかし基本的に自分で自分の顔を剃る場合は、「滑り最高」の泡が「王道」でしょう。(1:8でしっかり泡立てる。)十分にヒゲを軟化させていない場合やヒゲの濃い方は、水分多めが良いでしょう。(1:10でしっかり泡立てる。)それ以外の場合は、剃り方に合わせて肌へのダメージを最小限にできる「滑り最高」を選びましょう。

そして、使用する泡の量ですが、やはり贅沢に「多め」が王道でしょう。実用的な指針は、「ヒゲが隠れる程度」ですが、王道としては「贅沢さ」もポイントですので、たっぷりな泡で剃るのが王道です。(ただし、空気がたっぷりな、軽いもこもこの泡ではありません。)

剃り方

肌への接触は最低限度の力で剃ります。難しく感じるのは、握る力まで必要以上に緩めてしまうからです。

ヒゲを剃るとき、刃でヒゲを引っ掛けます。その時にカミソリがぶれてしまうとうまく剃れませんし、髭を引っ張り痛かったり、肌を傷つけてしまったりもします。軽く握りすぎると、細かくぶれます。ヒゲは固いものだからです。

カミソリを握る力は適切に、カミソリを肌に接触させる力は最低限です。最初は意識しましょう。すぐに慣れます。

カミソリの刃は進行方向に対し、直角に保つのが基本です。多少斜めにすると、切れ味が上がりますが、その分肌へ負担をかけます。大きく角度を付けると、横滑りしたときと同様に、肌が切れる確率が増えます。(王道ではありませんが、これもテクニックではあります。)

3パス

順剃り、横剃り、逆剃りの3パスで剃るのが王道です。

いきなり逆反りで剃れれば一番良いのですが、長いとカミソリの刃が引っかかりやすく、その結果肌を傷つけやすくなります。そこで、各パスで少しずつ剃るわけです。

毎日丁寧に剃る方であれば、順剃りか横剃りを省略し2パスでも十分かもしれません。髭が濃い場合は3パスのほうが安全に剃れるでしょう。パス間にお湯で泡を流すごとに、より一層吸水され、髭が柔らかくなるからです。

ストローク

王道的には、細かいストロークを重ねるのが良いでしょう。一度ではそれない髭も、何度か繰り返すと引っかかり、剃れます。

肌へ接触する力を強くする利点は、ストロークが安定することです。逆に最低限度の力で剃る場合、ストロークが安定しづらいため、長いストロークをコントロールするのに集中力と技術が必要です。ですから、短いストロークを重ねる方法のほうが簡単です。

とはいえ、平たく面積も大きい頬は長めに剃りましょう。いくら安全だからといって、スピードの出せる高速道路を徐行して走るのは愚かです。

顔の曲面で、曲がりの大きい箇所ほど軽く肌に剃刀をあて、小さく細かいストロークを重ね、慎重に剃ります。

添え手

添え手は肌を張るために行います。肌を張り、髭を起こすためにも使います。

肌を張らないと、髭が引っ張られ痛みを感じることがあります。また、引っ張られる結果、肌を痛める可能性もあります。

自分で剃る場合、添え手以外に肌を張る方法が取れます。口の周りは口の中に空気をため、頬を膨らませられます。後ろから舌を当てることもできます。耳の周りは耳を引っ張ることができます。

日本の床屋さんではまずありませんが、外国(特にアジア圏)の床屋さんでは客に色々指示するところもあるようです。ただ、欧米の床屋さんの中にも客にいろいろ指示するのは「プロフェッショナルではない」と言い切る人もいます。(これはイタリア人の床屋のインストラクターが言っていたのを特に覚えています。逆に同じくイタリアの別のインストラクターが、客に剃りやすいよう鼻の下を伸ばすように指示している動画もYoutubeに存在します。)

自分で剃るのですから、自分が剃りやすいようにしましょう。ただし、曲面を剃るときはカミソリの刃の接触面積が小さくなります。それだけ、肌に当てる力も弱くする必要があることをお忘れなく。

視覚的な基準

目で見て分かる基準としては、肌に接触させたカミソリが、肌を凹ませている場合はうまく行っていないと判断してください。少なくとも王道シェービングにおいては、力が強すぎている可能性があります。

もし、ほんの軽く接触させただけなのに凹む場合は、肌の張りが弱すぎます。きちんと張りながら剃りましょう。

シェーブ後の洗顔

王道的には洗い流すほうが良いでしょう。まれにソープの香りを香水のように長続きさせるため、洗わない人もいます。

床屋さんではお客に「剃り終わりました。どうぞ、顔を洗ってください」とは、さすがに言えませんので、ホットタオルで拭き取ります。しかし、ソープの成分の全部が肌に安全と言い切れません。

また、ソープは新品でない限り、細菌やアメーバーで汚染されています。たとえ汚染されていても、肌を流水で洗い流せば、肌に残らないことが証明されています。可能であれば、流水で流すのが一番清潔です。

洗い流し、もし香りが欲しければアフターシェーブや適切な香水を使うほうがベターです。

アフターシェーブ

肌のことを考えるのであれば、現在のアフターシェーブは「保湿」が王道です。昔は、アルム石で引き締めと殺菌を行っていました。ただ、若く薄い肌やカミソリ負けをしている場合は滲みます。そのため、今ではアフターシェーブ用品がメインです。

一般にアフターシェーブローションは、肌に保湿成分を与えるもの、アフターシェーブバルムは、肌が乾燥しないように肌を覆う製品を意味します。両方のタイプのアフターシェーブ剤を使うウェットシェーバーが多いようですので、「王道」は両方使う方法でしょう。

ただ、特にローションはメーカーによる成分がバラバラです。水、アルコール、香料と言う、保湿成分がまったく入っていない、香りを楽しむコロンのような製品から、保湿成分と肌を覆う成分の両方を含むものまで様々です。

アルコール分は殺菌という意味では役に立ちますが、肌の表面を殺菌しても数時間で毛穴の奥から細菌が肌上に広がります。そうした細菌は通常悪さをせず、悪さをする細菌等が広がるのを防いでくれています。また、アルコール分が皮膚の油分を溶かしてしまうと保水力が落ちます。そうした意味で、アルコールのみが有効成分であるローション、スプラッシュと言われることもありますが、必要ありません。

また、日本の夏は高温多湿で、保湿は必要ありません。肌へのダメージだけを考えるのであれば、日光の紫外線を防いでくれるサンスクリーンのほうが有効でしょう。

TOBSクリーム

この記事では特定の製品についての意見を書くつもりはなかったのですが、最近自分自身で再確認したのでメモとして残したいと思います。

当サイトでも紹介していますし、比較的値段が安く、品質も良いため人気のある、イギリスのTaylor of Old Bond Streetのシェービングクリームに関しては、あまり水分をたっぷりにせず、一番クリーミーで滑りが良い状態で剃りましょう。

不思議なことにこのクリームで、水分たっぷりの泡で剃ろうとすると、いつもカミソリ負けになります。一番滑りが良い状態で剃ると、剃り味も抜群、剃った後の感触もよく、カミソリ負け知らずです。ドンピシャの水分量で使用すると、ほんとに素晴らしいシェービング体験ができます。(当サイトの標準泡で表現すれば1:8状態の泡です。ただし、この泡を作るためにTOBSのクリームでも1:8の水分量だという意味ではありません。滑りが最高の状態の泡と言う意味です。)

この滑りの良い状態では、吸水の足りない固い髭に水分を十分に含ませることができません。予め十分に給水させ、髭が柔らかくなった状態の肌で使用しましょう。

TOBSのクリームに関しては、一番滑りの良い水分量で剃ることをおすすめします。

まとめ

基本は時間をかけ、ゆっくりと軽く、短いストロークで剃るのが王道です。まず、王道をマスターしましょう。

その上で時間を短縮したい、うまくそれない部分があれば、本サイトを始めとしてネット上で紹介されている様々なテクニックを利用しましょう。