Prorasoクリーム緑による、シェービング基準泡の作成

当サイトで技法を紹介する際に参考にできるよう、Prorasoのシェービングクリーム・グリーン(緑)から基準(標準)泡を作る方法を紹介します。

配合

  • イタリアのProrasoが製造販売している、メンソールとユーカリオイル使用を特徴とするシェービングクリーム・グリーン1.0グラムに対して、水10mlを混合する。
  • なめらかなクリーム状になるまで、シェービングブラシで泡立てる。

泡の特徴

前記の配合でできる泡の性質を星の数で表してみます。


滑り : ★★★★★
クッション性 : ★★★★☆
剃った後の感覚 : ★★★★★

給水性 : -☆☆☆☆☆0★★★☆☆+

滑りはカミソリでヒゲを剃った時に、どの程度スムーズであるかを示します。Prorasoの製品はとても良く滑るわけではありませんが、程々に滑ります。5つ星にしているのは、Prorasoクリーム(グリーン)を使用した場合に、最高によく滑る配合であるからです。ホームメイドタイプのソープなどはProraso製品より滑るため、最高に滑る水分配合にすると、このProrasoの泡より数割よく滑ります。(例えば、私のお気に入りはWetShavingProductのソープですが、動物の油脂を使った製品は滑りもクッション性もこの基準泡より40%増し、動物の油脂を使わない製品は20%増しの使用感です。)

クッション性は粘りのことです。泡立てたときの泡だけの粘りではありません。泡と元の石鹸水の性質が合わさった感触です。手のひらで感じるクッション性でなく、指でこすり合わせたときの粘り具合です。実際的には、カミソリを肌にあててヒゲを剃る時に、刃の当りをどの程度柔らかくしてくれるかの指針です。今回の基準泡のクッション性は、荒い刃や切れ味鋭い刃のあたりを完全に和らげてくれるほどではありませんが、程々の鋭さの刃であれば、この泡のクッション性を頼りにして、神経質にならずに剃れる能力があります。

クッション性は加える水分量が少なければ高く、多ければ低くなります。この配合より水分を少なくすればするほど、クッション性は高くなります。(ただし、あまり高すぎると保護力が大きくなりすぎ、カミソリを肌に押し付けないとヒゲが剃れなくなります。そのような状況では、カミソリのコントロールをミスった場合に、大きく傷つけてしまいます。)

剃った後の感覚は、英語でポストフィール(post feel)と呼ばれます。剃った後の肌の感覚です。つっぱらない、乾燥しない、すべすべである、保湿感があるなど、実のところ人により基準はバラバラです。当サイトでは剃り終え、洗顔した直後に指先で確認した触感の滑らかさを示そうと思います。Prorasoの場合、これはとても良いです。キレート剤が入っているため、べたつく金属石鹸(石鹸カス)が肌上に残らないからでしょう。

「給水性」は私が勝手に言葉を作りました。石鹸の濃度により、ヒゲに十分給水できるか、それとも逆にヒゲの水分を奪ってしまうかです。カラカラのヒゲに対して水分を与える能力ではなく、ヒゲを剃る準備段階として3分程度の洗顔を行い、8から9分程度給水した後のヒゲに対して水分を供給できるかという指針です。石鹸水が濃いためにヒゲから水分を奪い、固くしてしまうのが左方向のマイナスです。石鹸水として十分薄く、ヒゲに水分を供給し、より柔らかくできるのが右のプラス方向です。この泡は水分が多めですので、給水性は良いです。

この基準泡の使用感は、スプレータイプのシェービングフォームの標準的な感覚と似ています。もちろん、シェービングフォームにも固い柔らかいなど製品ごとの差はありますが、そうした製品群のほぼ中間的な固さです。シェービングフォームは一度手に取り、それから顔に塗るのが普通ですが、その時に手に取った段階の固さではなく、湿らせた顔に塗ることで多少柔らかくなった段階の固さに似ています。

Youtubeなどのビデオを見比べるとある特徴があり、一般的にプロの床屋さんや有名なビデオ投稿者は、水分多めの柔らかい泡を作っている人が多いのです。そうした人たちが使っている泡と近いでしょう。経験の浅い、泡作りだけに命をかけているような若い投稿者の泡は、たいてい水分が不足しています。スキルが足りない、もしくは急いで剃るために、肌にカミソリを押し付けて剃る人には、この配合の水分の泡では、クッション性が足りないかと思います。(特に切れ味の高い刃を好む場合です。)

なぜ、水分の十分な泡を基準泡に採用したかといえば、「給水性」が高いという一点が決め手です。ヒゲが水分で柔らかくなれば、力を入れずに剃れます。力を入れなければカミソリ負けを防ぐことができます。そのため、仕上げ剃り用に水分多めの泡を別に用意したり、シャンプーなどを水に溶いた物を使うプロフェッショナルがいるわけです。ただし、慣れないうちは力を抜くと、微妙なカミソリのコントロールが難しくなります。(肌にある程度の力で接触させれば、カミソリは安定し剃りやすくなります。しかし、押し付けずに、一定の圧力で肌に接触させ優しく剃るスキルが必要になります。Youtubeのビデオをチェックしてください。特に自分自身で剃る場合に、押し付けて剃る人が多いのです。そのため、若い投稿者の場合、今回の基準泡よりも水分が少ない泡を使用している人が多いのです。)

繰り返しますが、水分たっぷりの泡はヒゲを柔らかくします。柔らかいヒゲは小さな力で剃れますので、刃にかかる負担も小さくできます。それにより、刃の切れ味の寿命が伸びます。しかし、水分が増えるにつれ、保護性能は落ちますので、替刃を連用していくとによるコーティング剥がれにより段々「荒く」なっていく感触を和らげる、クッション性能は低くなります。こうした傾向を理解していない人たちが製品レビューを行っているため、シェービング用品では同じ製品に対して反対の意見や評価が起きるのです。

この配合の泡は、「十分なクッション性を保ちつつ、水分を補給してくれる、滑りが最高」になる割合です。

応用

カートリッジタイプのカミソリは、両刃や西洋カミソリに比べて「肌当たりが優しい」のが特徴です。これは刃をフレームで囲い、強い力が刃にかかりづらくしていることと、刃の枚数が多いために圧力が分散されやすいからです。

刃の枚数が多いため、刃と刃との間に隙間が狭く、固い泡では目詰まりを起こします。この泡は、多枚数のカミソリで目詰まりを起こすほど固くはありません。

ただ、元々あたりが柔らかい上に、更にスムーザーまでついているため、より肌に優しくなっています。そのため、カミソリが泡を肌から掻き取る能力も低いため、泡が肌に残ってしまう場合もあります。これを防ごうと力を加えてしまっては、カミソリ負けの原因になります。

そうした場合は、クリーム1.0グラムに対し水を11ml加えてください。

標準的な泡の10mlに対して、わずかに1ml増やしているだけですが、泡は適度に柔らかくなります。その分クッション性も多少落ちるのですが、「柔らかい」刃当たりのカートリッジ式多枚刃カミソリの場合は、肌に優しい分だけクッション性を犠牲にすることができます。また、肌に優しいと言うことは、ヒゲにも優しいと言うことです。つまり、ヒゲを刈り取る能力も低くなります。ですから、水分を多くして、その分ヒゲに給水させ、柔らかくして剃りやすくすると言うのは、利にかないます。(ただ、1mlの水を足すことで、どの程度水分を補う能力が上がるのかを数値で検証したわけでありません。感覚的なものです。滑りに関しては、10mlから12ml間の変化は大きめですが、12ml以上加えると変化は少なくなります。)

逆に初心者でカミソリの扱いがまだうまくできない場合は、力を入れ気味になりますので、水分を減らしクッション性を上げた状態の泡で剃りましょう。8ml程度の泡であれば、詰まりやすいカートリッジ式のカミソリでも、こまめに泡を流し落とせば、快適に剃ることができます。(ただ、クッション性が増えすぎるがために、深剃りは難しくなるかと思います。クッション性能は肌だけでなく、ヒゲも保護するからです。)

水分量による泡の感触の変化についての個人的な考察を最後に追加しておきます。興味がある人は、後ほど参照してください。

実践

読者の方の手元で、同じ泡の状態を再現するにはもちろんProrasoのシェービングクリーム、グリーンが必要です。同じ販売元のシェービングクリームでも、他の香りの商品は使用感が異なります。入手方法は、選考理由について書いた前記事をご覧ください。

それ以外に、以下の用具を揃えてください。

* 化繊のシェービングブラシ
* ボウル
* 0.1グラム単位で量れる重量計
* 水量を計るインジェクター(針のない注射器)

化繊のシェービングブラシ

動物性の穴熊、馬、豚などの毛は、それ自身で給水性があります。泡立てている間や、ヒゲを剃るために置いている間の時間で、水分を吸い込んだり、逆に出したりし、泡の水分量が変わってしまいます。そのため、今回のような実験的/教育的な用途では、給水しない化繊のシェービングブラシが必要です。

もし、既に穴熊や豚などのシェービングブラシをお持ちであり、この基準泡を作る目的だけに化繊のシェービングブラシを買い求めるのであれば、eBayで中国から発送される300から400円程度のちゃっちい化繊シェービングブラシで十分です。実際に私は、同じ形の小さいナイロンブラシを3つ持っていますが、Prorasoのクリームは泡立ちやすいため、ちゃっちいブラシでも泡立てられます。

基準泡の再現を行った後も、通常のシェービングで使用するのであれば、AliexpressやeBayで送料込み1,000円から2,000円で販売されているブラシを購入しましょう。日本のアマゾンでも製品は少ないですが、この値段帯の化繊ブラシを購入できます。

Aliexpressなどでの購入時に気をつけることは「穴熊の毛でない≠人工毛」です。「穴熊の毛ではない」とか、「穴熊のイミテーション、偽物」だと表記しているものは、主にナイロンの人工毛であることもあれば、豚毛を着色したものであることもあります。写真が商品と同じであるなら、写真を見れば判断はつきますが、ブラシに詳しくないと見分けるのは難しいでしょう。ですから、可能であればしっかりと「ナイロン」、「人工毛」と書いてある商品を選びましょう。(ただし、ナイロンと書いてあるにもかかわらずに、豚毛のブラシの写真が掲載されていることもままあります。)

以下に購入先のリンクを示します。できるだけ妥当な値段の商品を選びましたが、最安値と言うわけでありません。また、数ヶ月で商品が入れ替わりますので、リンク切れになることもあるでしょう。参考にする程度にしてください。

インドのジレット

中国製の典型的な化繊ブラシ

ハンドルが金属製

先端だけが白い2バンドに似せたブラシ

ボウル

シェービング用のボールをわざわざ購入する必要はありません。Prorasoクリームはたいへん泡立ちやすいため、ステンレスでもプラスチックでもキッチン用のボールで十分です。料理用でもボウルをまったくお持ちでなければ、100円ショップで販売されている製品で十分です。

大きさは、直径15センチ程度あると良いでしょう。泡も結構多めにできますので、大きめのボウルで良いかと思います。

0.1グラム単位で量れる重量計

キッチン用品として売られている、スケールで十分です。0.1グラム単位で量れるタイプが1,000円程度で販売されています。測量単位が1グラム単位の製品は、誤差が大きいため基準泡の再現には向きません。

参考までに、日本のアマゾンで販売されているキッチンスケールです。

最安値ですが、発送が中国かららしいスケール

上記商品を日本基準で調整したらしいスケール(同型の最安値ではない)

やっぱり日本のメーカじゃないとと言う方向け(生産は中国、私も使用しています)

水量を計るインジェクター

要はメモリが印刷されてある注射器です。10ml(cc)のものが良いでしょう。ホームセンター等で販売されています。アマゾンで購入しても、大した値段ではありません。

日本のアマゾンで販売されているセットを紹介します。印刷のメモリが数回の水洗いで落ちてしまうようです。私の所有しているものとは異なりますが、洗浄する場合は水道水を吸い上げて、捨ててを繰り返します。そもそも、外側をゴシゴシ洗う必要は感じられないので、この安いセットで十分かと思います。

泡立て方

ボウルやブラシは、使用前に軽く洗いましょう。その後、できるだけ水分は振り落としてください。特にブラシは、何度も振り、毛と毛の間に溜まっている水分をできるだけ振り落とします。乾いたタオルで吸い取るまでする必要はありませんが、振り落とせる水分は落としてください。

クリームを1.0グラム絞り出してください。つまり、0.1グラム単位のキッチンスケールで表示が1.0になるように取り出します。プラスチックの軽いボウルを利用する場合は直接ボウルに絞り出しても良いかと思いますが、大きなステンレス製や陶器製などの重量のあるボウルを使用する場合は、別の軽い入れ物やスプーンなどで計量しましょう。通常、そのほうが誤差が少なくなります。

インジェクターで10mlのぬるま湯を測り、それをボウルへ入れます。インジェクターは先端をお湯の中に入れ、少し吸い込み、先端を水中に入れたまま勢い良く押し出して空気を抜きます。それから、そのままゆっくり吸いこむことで、空気を入れずに正確に測れます。

ボウルに入れたお湯は、まずブラシに吸わせます。それからクリームを溶かしてください。先にブラシへクリームを付けてしまい、根本に押し込んでしまうと、それがなかなか溶けずに泡の性質が変わる可能性があります。最初にブラシへ水分を吸わせておき、そのブラシでクリームを溶かします。

後は、泡立ててください。最初は粗めの泡ができますが、泡立てていくうちにすぐに弾力のあるクリーム状になります。よくビデオなどで紹介されているように、通常のソープやクリームでは数分かかりますが、Prorasoクリームは比較的短い時間で泡が完成します。

泡立てるときは、ポンピング(ブラシを底に垂直に押し当てて、ブラシ内の泡や石鹸水をブラシの外と混ぜること)したり、ボールの壁面を登っている泡を底の泡と混ぜたりしながら、ブラシ内とボウル内の泡全体が均一になるように泡立てます。

ここに書いたコツを守れば、簡単に基準泡が作成できます。

※ 山の湧き水や井戸水を生活用水として利用している場合は、水に含まれるミネラル分により、再現できないかもしれません。泡立ちが悪い場合など、水分が硬すぎると疑われる場合は、薬局などで500mlで100円程度で販売している精製水を利用してください。

※ 石鹸の一般的な傾向として、水温が低いと泡立ちが落ちます。もし寒い冬の時期に水で試してみて、泡立ちが良くないようであればお湯を使って泡立ててください。Prorasoの場合泡立ちやすいため、冬の水でも大丈夫だと思いますが、暖かめのお湯のほうが泡立ちが確実で、肌に塗ったときに気持ちが良いですからね。

※ クリーム1.0グラムと水10mlで、3パス十分な泡ができます。もったいないからと言って、量を減らして作ろうとしないでください。誤差が大きくなり、再現できない可能性が上がってしまいます。この後の「プログラム」で、フェイスラザーを使い、より少ない量の泡を作成する方法を紹介します。しかし、基準の泡を作成するときは誤差が大きいと再現性が落ちますので、1.0グラムのクリームを使用してください。

プログラム

この記事の目的は、比較の基準となる基準泡を紹介することです。この基準泡を元にして、「これよりクッション性がある」とか「泡が固い」とか記述することで、読者の方がイメージしやすくするため、比較の標準となる泡の作り方を紹介しています。この基準泡を元にして、過去の記事は少しづつ加筆します。

このセクションの「プログラム」は、ソープやクリームを使用して泡立てた泡で行うシェービング経験のない方向けに、Prorasoグリーンによりフェイスラザーで基準泡を作成し、シェービングできるようにするものです。ウェットシェービングの経験を十分お持ちの方は、もちろん行う必要はありません。

基準の泡ですが、シェービングに慣れており、カミソリを肌に押し付けすぎずに剃れる方であれば、使いやすい泡だと思います。利き手の逆の手で肌を張る場合でも、滑ることはありませんし、一度剃った後でも十分に水分が残りますので、もう一回程度ならそのままストロークを重ねられます。

また、現在カートリッジ式のカミソリを使っており、フォームやジェルの使用を止めて、ソープやクリームを使用したいと思っている方にも、程よい使用感だと思います。スプレー式のフォームよりもやや滑りは落ちますが、泡自体の感触は極端に変わりません。切り替える理由としてよく言われる「フォームの泡は乾燥している(水分が少ない。)ソープやクリームに変更することで、水分が十分な泡で剃ることができる。」ことの利点を感じられる泡かと思います。

しかしながら、いくら毎回同じ状態の泡が再現できるからといっても、いちいち秤でクリームの重さをチェックし、厳密に一定量の水を加えるのは手間です。つまり、実用的ではありません。

自分の求める泡になったかどうかは、ブラシで泡立てる時の手と顔面の触覚と、泡の状態を視覚で判断します。実のところ注意深い人であれば、数回実践すればこのレベルに達することができるでしょう。認識力、判断力を身につけ、ボウルを使用せずにフェイスラザーで基準泡を作れるようになりましょう。

1日目

まず、水10mlのうち8mlをボウルに入れ、1.0グラムのクリームを溶かし十分に泡立てます。「今、求めている泡の状態の一歩手前だ」と認識できるように、観察しましょう。一歩手前の状態を覚えるのが初日の大きな目的です。

よく泡立ったらブラシを通して感じられる、泡立てているときの弾力と滑り方を覚えてください。

次に、泡に光が反射するようにして、輝きぐあいを視覚で覚えます。あまり強い直射日光では、真っ白に見えて判別しづらくなります。適切な間接光や蛍光灯の明かりが観察しやすいかと思います。

この「あと一歩」の状態を観察したら、残りの2mlをボウルに投入してください。全体が均一に泡立つように混ぜてください。

きちんと混ざり、均一になったら、ブラシを通して伝わる感覚の変化に注意を払います。柔らかく、滑りが良くなったことに気がつくでしょう。

もう一度、光を当てて反射ぐあいを観察してください。泡の艶が増していることに注意してください。

ブラシで適量の泡を取り、両頬を中心に塗り、ブラシを円運動で動かして、クッション性と滑る感覚、顔の皮膚に伝わる感覚を覚えます。フェイスラザー(ボウルを使用せずに直接顔の上で泡立てること)が完了した状態を感覚で覚えましょう。(もし、基準泡を作成するために使用するブラシとは別のブラシを普段使いしているのでしたら、化繊のブラシの泡を絞り、一度ボウルへ戻します。それから、普段使いしているブラシを使い、この段階から試します。)

今度は、泡を顔へ塗りましょう。ペインティングします。つまり泡を顔の上に置くように塗っていきます。ペイントすると、ブラシの横や根本からも泡が外側へでてきます。それを皮膚の上に乗せ、ペイントアクションで塗り広げます。すると横や根本からまた泡がでてきますので、それを皮膚に乗せ、塗り広げるを繰り返します。

基準泡は柔らかいため、きれいに隙間なく塗り広げるのは無理です。ところどころ皮膚の色が薄っすらと見える程度でかまいません。塗り広げたら、優しいタッチで剃りましょう。

以降パスを繰り返すごとに、ペイントアクションで塗り広げます。

2日目

絞り出した1.0グラムのクリームの量を視覚で覚えます。後ほど、フェイスラザーを行う時に、ブラシへ取る大体の量を感覚で捉えるために役立ちます。

加える水分は、今回最初4mlからはじめ、2mlづつ水分を足していきましょう。フェイスラザーで「泡立てるときは、少しづつ水分を足していく」をシミュレートします。その都度、クッション性、滑り、泡の色や艶が変化することに気をつけましょう。

3日目

基準泡の状態を記憶していない場合は2日目の手順を繰り返してください。覚えていれば、フェイスラザーで同じ状態の泡を作ってみましょう。

普段使いのブラシをお持ちの方は、そのブラシで行いましょう。基準泡を作成するために使用した化繊ブラシを使用する必要はありません。

このクリームの外箱の説明には、2センチブラシに付けるように指示されています。よく外人さんが言うところの「アーモンド1個分」に相当します。Prorasoグリーンのクリームの場合、約1.5グラムです。

1グラムでも3パスに十分な泡ができるのを経験してもらっています。ブラシのノット(根本)のサイズ25ミリ前後で、水分と泡の保持能力が落ちる化繊シェービングブラシに2センチ付け、それで基準泡を作成しようとすると、大部分が泡立てている間に落ちてしまうか、落ちないようにすると固めの水分不足になるかでしょう。要は、クリームが多すぎます。

ブラシに付けるクリームの目安は自然毛ブラシの場合、ノットが30ミリ程度、もしくはブラシの毛の部分が長いものであれば、泡の保持力がありますので1.5センチ程度、ノット25ミリ前後であれば1センチちょいでピッタリかと思います。それよりも小さい場合は、最初に付ける量はより少なくし、後で足りなくなった時にクリームを継ぎ足すほうが泡立てやすいでしょう。

化繊ブラシの25ミリ前後でも、ブラシの特性によっては3パス分の泡を十分に保持できないかもしれません。その時は小さいブラシと同様に最初につけるクリーム量を減らし後から追加するなど、工夫が必要です。

余りクリームをケチるのはおすすめしませんが、化繊ブラシでノットサイズが25ミリ前後であれば、生の小豆1粒分(若い人は見たことがないかも知れません。チューブから5ミリ絞り出す程度)で基準泡を作成すると、3パスに必要最低限(厚塗りせず、3パス目はブラシの泡を搾り取る)の泡ができます。

フェイスラザーを行ったことがない場合は以下の知識が役立つでしょう。

* 基本的に円運動とペイントモーションを使用する。
* 円運動は、1.最初の泡立て、2.水分を加えたときに、顔上とブラシの泡を均一にする場合に使用します。
* ペイントモーションは、1.泡を均一の厚みで顔に塗る、2.大きな泡をつぶし、泡をクリーム状にするために使用します。
* 給水が十分でない場合は、マッサージで給水を促進し、ヒゲを柔らかくするため、両方のモーションを使います。

円運動の代わりに縦や横方向にゴシゴシこするように泡立てたりできます。要は決まった方法があるわけでありません。ブラシの使い方はブラシの大きさ、形状、材質で多少コツが異なります。

最初は円運動で泡立てながら、剃る場所へ泡を広げ、ある程度泡立ったら水分を加え、ペイントモーションを繰り返し、細かい泡のクリームにします。粘りと滑り、泡の色艶を判断し、水分が足りないようであれば、ブラシに水分を加え、その水分を円運動で均一に混ぜ、混ざったらペイントモーションで塗り直し…を繰り返します。

要は、最初にある程度泡立て、それを肌上に塗ってみて、まだ水分が少ないようであればブラシに足し、その水分を肌とブラシ上の泡と混ぜて均一にしながら泡立てて、できた泡を肌に塗るを繰り返し、自分の理想の泡の状態にします。

シェービングの基本は、事前にヒゲに水分を含ませて柔らかくしておくことです。そのため、事前にシャワーや入浴をするのがベストです。もしくは、3分以上の洗顔を行います。

温かい水分を含んだタオルで軟化することもできますが、効果はシャワーや洗顔などに劣ります。床屋さんでホットタオルを使うのは、お客に顔を洗えとは言えませんし、ホットタオルで蒸す気持ちよさでゴージャスさを演出するためです。何度かタオル蒸しを繰り返さないと十分軟化しません。夏で冷房を使わない状況ならともかく、顔に汗を書いていない状態からタオル蒸しだけで、硬い部分のヒゲを十分に軟化するのは無理でしょう。(もちろん、柔らかいヒゲであったり、髭の濃くない場合は可能でしょう。通常は難しいため、事前のマッサージ、タオル蒸しを繰り返す、ゆっくりと泡立てる、水分の多い泡を使うなど、床屋さんでも工夫しています。素人が自分のヒゲを軟化するのであれば、シャワーや洗顔が手っ取り早く、効率的です。)

マニュアル的にタオル蒸し一度だけで、自動泡立て器の泡を顔に乗せ、そのまますぐ剃る床屋もあります。こういう店では、硬い部分のヒゲを剃ってもらう時に痛みを感じることがあります。理由は簡単で、十分にヒゲが柔らかくなっていないからです。

フェイスラザーで、基準泡に近い泡を作り、髭剃りを行ってください。ブラシから伝わる泡の粘り(クッション性)、滑り、色、艶に注意を払えば、すぐに体得できます。

番外編

自分で試すと身につきます。物は試しです。フェイスラザーができるようになったら、事前の軟化準備なしに、泡立てだけでヒゲを軟化して剃ることにチャレンジしてください。お湯が使えない場所などで軟化できずに剃る場合のトレーニングになります。

まず、顔を石鹸などを使わずに洗います。剃る箇所は軽く濡らす程度にします。事前準備はこれだけです。

そうしたら、いつものとおりにだんだん水を加えながら泡立てていきます。十分に泡立った状態になったら、「毛先」を使うブラシの動きを数分続けます。

続けていくと、乾燥したり、肌やヒゲが水分を吸い取ったりするため、泡が固くなります。気づいたら、水を足して泡立て続けます。

最初はブラシの毛先が固いヒゲに引っかかりますが、それが時間と共に柔らかくなったのが感じ取れます。そうしたら、剃りましょう。

この番外編は、フェイスラザーが十分にできるようになってから試しましょう。軟化が十分でないまま剃ると、カミソリ負けしてしまいます。ブラシを通して感じられる触感の変化を感じられるようになってから、試しましょう。

ポイントは基準泡のような十分に水分が多い泡で、マッサージを兼ねて数分間余計に泡立てることです。鼻の下や口の周り、顎など特に硬い部分は、ブラシのマッサージだけでは足りないかも知れません。十分に柔らかくならない場合は、指先でもマッサージして、水分をヒゲになじませましょう。

番外編、パート2

この後の考察で説明しますが、基準泡の2倍の水分、つまり1.0グラムに対し20ml加えた泡であれば、給水能力がとても高いため、ブラシでマッサージする手間を省くこともできます。

シェービングの数分前に軽くヒゲをお湯で濡らしておきます。シェービングを始めるまでに、クリームを1.0グラム量り、お湯を20mlボウルに入れ、ゆっくりと泡立てていれば、数分経ちます。

出来上がった柔らかい泡を肌の上に乗せ、ヒゲの柔らかい部分から剃っていきましょう。丁寧にゆっくりと剃りましょう。クッション性はほとんど無いため、力を入れ過ぎたり、コントロールをミスるとすぐにカミソリ負けになったり、出血したりします。

1パス終わる頃には十分にヒゲが吸水して柔らかくなっています。2パス、3パスでも丁寧に剃れば、きちんと剃れます。

ただし、クッション性がないため、無理はしないことです。ある程度スキルがないときれいに剃り上げるのは難しいです。ウェットシェービングに慣れていない方は、試さないほうが無難です。もしくは、程々の剃り上がりでやめておき、深剃りは行わないようにしましょう。

考察

水分量について、私の個人的な考察をまとめておきます。

1.0グラムに水分6ml


滑り : ★★★☆☆
クッション性 : ★★★★★
剃った後の感覚 : ★★★★★

給水性 : -☆☆☆☆★0☆☆☆☆☆+

クッション性重視の固めの泡です。大抵の切れ味鋭い刃や、荒れ気味な歯でも、鋭さを和らげてくれます。

刃と刃の間が狭いカートリッジ式カミソリでは、詰まってしまい剃りづらいでしょう。ものによっては両刃カミソリでも、さっと洗い落とせないかもしれません。

剃った後の感覚を今回、「剃り終え、洗顔した後に指先で感じる肌の感覚」を基準としているため、星5つのままです。ただ、一度剃ると肌に残った成分がすぐに乾燥し、粘ります。それを「乾燥しやすい」と評価する人もいるでしょう。(剃った直後のつっぱりやしっとり感は、水分量に影響を受けやすいため、製品の評価の基準には本来ならないのですが、これを得意げに動画で主張している外人が多いようです。)

剃っていると、やや肌の水分を奪う濃度のため、給水性に関してはマイナス方向へ星を付けました。こうした泡を使用する場合、パスとパスの間に泡を流す時に、肌へ十分水分を再補給するようにしましょう。

これも感覚的な話で申し訳ないのですが、ビデオやそのコメントを見ていると、約一割程度の方がこの極端に「クッション性重視」な泡を愛用しているようです。

1.0グラムに水分8ml


滑り : ★★★★☆
クッション性 : ★★★★☆
剃った後の感覚 : ★★★★★

給水性 : -☆☆☆☆☆0☆☆☆☆☆+

半分のウェットシェーバーが、この泡を支持するでしょう。推測ですが5割ほどの方が、この状態の泡を好んでいるようです。滑りとクッション性が十分にあります。特に鋭い刃を使わなければ、ほとんどのウェットシェーバーがそうであるように、やや押し気味にカミソリを使ってもカミソリ負けが起きづらいからです。

もちろん、鋭い刃を押し付け気味で剃れば、カミソリ負けを起こします。ですから、市場で一番鋭いフェザーの両刃を嫌う人がいるわけです。

給水性は中立、つまり給水して柔らかくせず、水分を奪って固くすることもない状態です。この状態の泡を使う人が多いため、「シェービングは事前準備が一番重要」という意見が比例して多くなるのです。

1.0グラムに水分12ml


滑り : ★★★★☆
クッション性 : ★★☆☆☆
剃った後の感覚 : ★★★★★

給水性 : -☆☆☆☆☆0★★★★☆+

基準泡より2ml水分を増やした状態です。基準泡より柔らかい感触です。やや柔らかすぎる感触のため、「水分を加えすぎたかな」と解ります。

Prorasoは泡立ち能力が高いため、この状態でも比較的しっかりした泡が立ちますが、通常のクリームやソープでしっかりと泡立てると、泡が「軽すぎる」状態になります。ですから、水分過多の泡を利用するときは、泡立てすぎないのがコツです。(私の長年の秘伝です。)

この段階まで水分を加えると、給水性能の良さに特に気が付きます。ヒゲを最後に追い込んで剃る段階で、柔らかく剃ることができるのです。ただし、追い込んできれいに剃ることに集中すると、力が入りがちになりますが、保護性を構成する滑りとクッション性が低いため、後からカミソリ負けに気づくことが多いでしょう。

1.0グラムに水分20ml


滑り : ★☆☆☆☆
クッション性 : ☆☆☆☆☆
剃った後の感覚 : ★★★☆☆

給水性 : -☆☆☆☆☆0★★★★★+

基準泡の2倍まで水分を増やした状態です。当サイトで究極に水分の多い泡で剃る方法を紹介していますが、Prorasoクリームでこの状態を作ろうとすると、基準泡のほぼ2倍の水分が必要です。

カミソリが肌に引っかからないギリギリ最低限度の「滑り」で剃る方法です。本来なら、どう剃ってもカミソリ負けしそうに感じますが、軽く剃るようにすれば防げます。それは、豊富な水分でヒゲが極端に柔らかい状態になることと、肌も水分を十分に吸えるため、張りがあるからです。

基準泡や、それより水分が少ない泡では、なまくらでまともに剃れない刃でも、剃ることができます。

Prorasoの高い泡立ち能力により、この状態でも比較的しっかりした泡が立ちます。普通のソープやクリームでは、先ず細かい泡を作るのが大変ですし、泡立てても異常に軽くて、まともに剃れません。ですから、きれいに泡立てずに、軽く白濁し、ややとろみがついた程度で泡立てを止めましょう。Prorasoを使う場合でも、完全に泡立てるよりもとろみがついた程度で剃ったほうが、滑りとクッション性はやや良くなります。

ちょっとでも力を入れ過ぎると、カミソリ負けします。きちんと肌を張り、刃をできるだけ幅広く使って剃りましょう。どうしても刃の一部で剃る場合は、特に圧力をかけずに優しく剃りましょう。

もしくは、切れ味は悪いが、刃あたりの優しい刃を持っていれば、昔の刃を肌にあて「ゴリゴリ」こするように剃る「根掘り」という技術が使えます。肌へのダメージは0ではありませんが、ゴリゴリこすることにより傷むだろうと予想するより遥かに肌は痛めません。(多少は痛みます。)

問題は、なまくらだが刃当たりの優しい刃を用意することです。通常は、使い古した替刃ですが、大抵の場合よく観察すると、刃の欠けなど肌を痛める不具合があります。本来根掘りは良く研いだカミソリを革砥のラッピング時に適度になまくらにさせることで、刃先は整いながらも多少なまくらな状態をわざと仕立ててから、使用していたテクニックでした。替刃で行われていた方法ではありません。

さすがにここまで薄めると、剃った後の感覚で多少つっぱり感がでてきます。キレート剤が含まれていても、薄いと石鹸カスは肌に残りやすくなり、ベト付きます。ただし、肌は水分のおかげで張りがありますので、極端に悪い感じではありません。

まとめ

基準泡と、水分を変化させたときの感覚の違いを説明しました。

ウェットシェーブを行う方は、個人個人で好みややり方が異なります。製品に対するコメントも幅があります。基本的なことですが、泡立てるときの水分量により泡の性質は変化します。各自がバラバラの状態で剃り、それをレビューしているため、コメントもバラバラなのです。考えてみれば、当たり前です。

この実験的な手順を自分で行ってみれば、シェービングの知見が高まります。そして、ホルダーや刃の鋭さ、ソープなどの性質、髭の状態、どのように剃るかを判断して、泡を調整できるようになります。逆に出来た泡に合わせて、カミソリのコントロールを行えるようになります。ベテランの方でも、自分の固定観念を壊し、より上のシェービングができるようになれるでしょう。

今までなんとなくわかっていた知識が、具体的な水分量と結びついて、頭の中で整理されます。そうした知識はぼんやりしたものよりも応用範囲が広くなります。


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