アメリカアマゾンのシェービングソープ、ベストセラー10位内にずっと収まっている、Smolderソープをレビューしました。購入も米アマゾンからです。
この製品でまず興味を惹かれるのは、なんと言っても西洋カミソリを持った死神のイラストです。以下の画像はアメリカアマゾンの購入ページヘリンクしています。
今の時点でベストセラー6位ですが、半年前くらいまでは4位前後が定位置でした。最近は、アマゾンに広告を打っている製品が商品リストの上に表示され、販売数を伸ばしている影響で少しずつ順位を下げています。
ストーリー
Blades Grimは若いブランドです。Bladeという名前をつけているところからも分かる通り、当初の押しはストレートレザーでした。トップページから、いかにも鍛冶屋さんの集合体であるかのような、ブランド紹介ビデオがリンクされていました。現在も、上部の”Our Story”リンクから観ることができます。
ところが、(推測ですが)ストレートレザーのラインナップを増やすためなんでしょうけれど、安めの商品にGold DollarをOEMで揃えていまして、それがぼったくり価格だったわけです。当時のGold Dollarはとにかく「研磨しても刃が付かない」評判でした。それが、そのままこのブランドのストレートレザーの評価となったと思われます。
現在は、鍛冶仕事で作ったようなストレートレザーだけを中心に据えていますが、値段は高めです。ホームページには値段を直接載せなくなりました。多分、他のブランドか鍛冶屋さんのOEMかなと思います。
一方、何種類か香りを揃えているシェービングソープの中で、今回レビューするSmolderがアマゾンで人気を得て、ベストセラーリストの上位に居続けています。
ですから、ブランドとしては当初の目論見とは外れ、ソープ中心のブランドになっているようです。
ソープ自体は、ソフトソープです。Prorasoのソープと同じ程度の柔らかさです。ソープを缶に詰める時に、手で押した跡が付いており、それにクレームコメントを付けている、初心者もいます。(他のブランドでも、小ロット生産のところは、押しこむために手を使うことがあり、その凸凹が残っているものも結構あります。製作時はビニール手袋をしていると思います。出来立ての石鹸は、まだ反応していないアルカリ成分が残っていることがありますので、扱うには手荒れ防止のためにも手袋が必要です。)
そうしたコメントもあり、製作者側からと思われる「ホームメードだから」というコメントもあり、当然自社生産しているんだろうと思っていました。ところが今年の初め頃でしたでしょうか、「ソープの種類を増やしたい」というクラウドファンディングでお金を集めていました。日本円で、確か200万円程度集めたかと思います。出資額に応じて、ソープやその他製品を送ってもらえるシステムでした。(うる覚えです。もう、終了しています。)
自社生産しているのであれば、ソープの香りを増やすために、それほどのお金を集める必要がないはずです。単に商品にしたい香りを作り、ソープに混ぜ、試作品を作れば済む話です。実際、他の小ロット生産のブランドは、そうしています。
これも推測になるのですが、別の目的でお金が必要になり、ソープの種類を増やすのを理由に集金したのではないかなと想像しています。
そうした、興味をひきつけられるブランドなので、一度購入してみようと思いました。
パッケージ…
amazon.comからの輸入です。約10日ほどで届きました。
4オンス入りです。このサイトで紹介しているWet Shaving Productsのソープと同じサイズの缶に入っていました。
缶に多少の傷がついていますが、これは米アマゾンでは頻繁にあるようです。送料が安いので我慢しましょう。(一応、パッキングに対するアンケートに、「倉庫の従業員か、システムが悪いんじゃないか」とクレームしておきました。)
本体と蓋が、テープで密封していました。「香りが逃げないように手間をかけているんだな。なかなかやるじゃん。」
ところが開けてびっくり、なぜテープで貼ってあったかというと、スクリュー缶なのに本体とフタのサイズがあっていないのです。つまり、フタの方が若干大きく、本体の缶の上に「ただ乗っているだけ」状態でした。
これは、ブランドでサイズを間違って発注して…という、また「想像」の話になってしまいますから、省略します。ただ、これでは長期間利用していくうちに、香りが逃げ、弱くなったり、印象が変わってしまいます。顧客のことを考えるのであれば、フタを発注し直すべきです。もしくは、事情を明らかにして、安売りすべきでしょう。
どうも、顧客のことを真剣に考えているブランドではないようです。
香り
商品コメントに、たくさん書かれていますが、印象としては「バニラ」そのものです。ところが、バニラは使用されていません。
「オレンジピール、マンダリン、コリアンダーリーフ、スターアニス、クマル」
確かに、集中して判別すると、バニラほど甘くはありません。やや、柑橘系の香りがしますので、それがオレンジピール(オレンジの皮)とマンダリンなのでしょう。
若干、青臭い独特の香りがしますが、それがコリアンダーです。甘い香りはスターアニスとクマル(トンガ豆)の香りだと思われます。
アイスクリームでおなじみなバニラは、刺激性があります。そこで、直接肌に触れる製品であるシェービングソープですから、別の香料でバニラの香りを再現したのでしょう。
バニラ好きな人には、ぴったりです。
甘い香りは結構慣れやすいため、シェービング中はカンファ臭と柑橘系の香りを感じられます。甘いバニラの香りは、そうした他の香りのせいもあり、どちらかといえば、本来クマルの持つナッツの香りに近づくため、ココナッツのような香りです。
既にこのサイトでレビューを紹介した、キャベンディッシュソープの香りに近くなります。残り香は特にそっくりです。私の場合、剃り心地は、こちらのSmolderのほうが上でした。
ソープとしての実力
手元に届いたソープは、アメリカでの輸送時の気温のせいか、はたまたアマゾンの倉庫の温度のせいか、溶けてフタにピッタリと付いていました。本体に戻したらソープと缶との間に隙間が空いてしまいました。
要は「低温でも溶けやすい」ソープということです。
成分:「ステアリン酸、ココナッツオイル、水、アルカリ液(lye)、ベジタブルグリセリン、香料」
アルカリ液は通常水酸化ナトリウムですが、推測するに「自然派」的に見せかけるため、”lye”と表示しているのでしょう。もともとlyeはアク汁のことです。アク汁とは草木を燃やした灰に水を入れ、しばらく置いた後の上澄み液のことです。でも最近では、特に手作り石鹸の領域で、アルカリ性分をlyeという単語で表します。
ベジタブルグリセリンは、植物から取ったグリセリンという意味です。植物油から分離すれば、「植物性」ですから、特に意味はありません。要はグリセリンです。
ステアリン酸とココナッツオイルをアルカリ性分で石鹸にしましたという組み合わせです。それ自体ではあまり泡立たないが、泡の持続性があるステアリン酸と、泡立ちがよく、溶けやすいココナッツオイルという、シェービングソープではお決まりの配合です。これをそのまま100%石鹸にすると固い石鹸ができます。ところが、製品は柔らかいのでアルカリ性分に、液体石鹸を作る水酸化カリウムを多めに使っているか、もしくはアルカリ性分を少なめにし、石鹸にならない脂分を残していることになります。
柔らかいのでローディングは簡単です。しかし、泡立ちは弱めです。クリーミィな泡を作るタイプのシェービングソープです。すると、アルカリ性分を少なめにし、ソープに油分を多めに残したタイプのソープだと判断できます。
この商品に「泡立たない」と低評価を付けている人は、「あわあわ」の泡を期待している人だと思われます。シェービングソープの中には、とても剃りやすいヨーグルト状の泡ができることで評価を得ている製品があることを知らないのでしょう。
特に強い保護性能や、滑りやすさはありませんが、ほどよい程度に調整されているようです。そのため、慣れていない人でも「使いやすい」ソープだと思います。「あわあわ」信仰を刷り込まれていない初心者に持って来いでしょう。
どのくらいの回数使えるかは公式に宣伝されていませんが、ローディングが簡単とは言え泡立ちが弱いタイプのため、一回あたり多めにソープを消費するかと思います。また、完全に鹸化(石鹸にすること)させないタイプであろうという仮定があたっているならば、酸化は早いので、3ヶ月以内、できれば2ヶ月以内に使いきるのがよいかと思います。
ただし、石鹸が酸化してきても、甘い香りが強いため、臭いからでは判断しづらいでしょうね。
ただ、今回手元に届いた製品は、キャップのサイズがあっていないため、間を開け、ゆっくり使っていると香りも逃げてしまうでしょう。
まとめ
感触としては、若い経営者がいきあたりばったりで経営しており、たまたまソープがアマゾンであたったという感じでしょうか。
前に説明した新商品のためのクラウドファンディングから、多分半年経ちましたが、ホームページではまだ石鹸の種類は増えていません。
缶の本体とキャップのサイズが異なり、それをアマゾンに出荷してしまうという感覚も疑問に思います。
ソープのつくり手としての信頼や情熱を感じることはできませんが、アマゾンで売れている限りは潰れないでしょう。
もし、ずっと同じ商品を使いたくてソープを探している方がいたら、上記のような状態ですので、Blades Grimはおすすめしません。
ただし、初心者がウェットシェービングを始めるのであれば、最初に持つソープとして十分に役立つかと思います。(正直、初心者にはProrasoを勧めます。使いやすく、値段も手頃です。ただ、日本のブランドと同じく、化学薬品を使用しています。当然ながら適切な薬品ですので、通常は怖がる必要ありません。「化学薬品を使っているから、日本製品でも大手ブランドは使わない」という主義の人には、このSmolderか、その他のハウスブランドによる、職人(artisan)ソープをおすすめします。)
ベテラン、ソープコレクターの方には、「まあまあ、そこそこ、中くらいのレベルのソープだよ」とお伝えしましょう。
私の学びとしては、アマゾンのベストセラーをみる限り、アメリカ人は甘めな香りを好むのだなという感想です。
追記:やはり、シェービングマニアの間では「製品も、カスターマーサービスも良くない会社」という評判が固まってきています。英語で直接やり取りしない限り、カスタマーサービスが悪いことは日本人には直接関係ありませんが、製品に対する情熱や管理が悪いので、別のブランドを選択するほうが賢いかもしれません。