まずは、入院するまでの話です。
最初に熱と血中の酸素濃度を計られました。女性の看護師さんです。このかたはベテランですが、怪訝な顔つきをし、酸素濃度を測る機械を指先に付け直して、再測定したので何か数値がおかしいのだと、分かってしまいました。症状を聞かれたので、答えている最中、咳と息切れで呼吸が荒くなったら、「過呼吸になるので、ゆっくり呼吸しろ」とのこと。あとで気づいたのですが、酸素濃度が低いのであれば、過呼吸になる可能性は低いはずです。まあ、看護師さんがそこまで気が回るかといえば、無理なんでしょうね。
次に内科医の先生に話して、ひと通り状況を話しました。しかし、この先生「酒臭い」。もしくは、口臭でしょうが、目がやや赤いのと連休中だったということを考えると、深酒したため、残ってしまっていたのでしょう。この時はお昼でした。
数日間水があまり飲めなかったので、点滴をとりあえず打って、検査するということです。血液を取り、レントゲンを取り、その後、小さな部屋に閉じ込められました。ペレットに痰を入れろとのこと。指示通り、透明な痰ですが入れて看護師さんにわたしました。歩きまわらないでくれと指示されたため、「たぶん、結核を疑っているのだろうな」と思いました。説明がないまま、二時間くらい待たされました。そうしたら、やたらと元気のいい先生が来て、自己紹介。別の内科医の先生です。ここでやっと結核の検査をしているとのこと。連休中で検査に時間がかかるため、もうちょっと待てという話でした。ここで待っている間、呼吸器から上がってくる痰は出しきったのですが、検査のためもう2つ出してくれとのこと。喉がカラカラでもう痰も出そうにありません。仕方なく、ペットボトルの水を少しずつ取り、一時間かかってやっと2つとれました。それから結果が出るまで3時間、雪隠攻めです。
すると、先ほどの元気の良い先生がやって来て、「結核ではありませんでした。心臓病の疑いがあります。そこで、担当の医者が変わります」と説明を受け、次の先生へ。雰囲気的に自信が無さそうでしたし、遠慮がちで「もしかしたら、研修医?」とピンと来ました。
病室に、エコーの機械持ち込んで、ドクターが直接検査。レントゲンで、心臓が肥大していたのもわかっていたし、判断は「心筋梗塞」疑いです。「今すぐ、入院してもらいます」とのこと。緊急入院することになりました。入院予定は二週間、その間に検査して、もし手術が必要ならば、もっとかかりますとのこと。心臓の病気は4つあり…という説明を受け、要は確率の高い方から説明されて行きました。処置としては安静にして、利尿剤で体の水分を抜き、心臓の負担を軽くする。その後、検査するとのこと。
まずは、絶対安静で、寝たきりになるため、トイレに行けません。そこで、尿道にカテーテルを通して、おしっこをバックに貯めるようにします。点滴用の針を通すのと、このカテーテルを通すのは医者の役目らしいです。点滴の針はうまくいきました。カテーテルを通すときは、別の先生がやってきて、「なんだ、やったことがないのか?」とその先生と話しています。
なんと、入れられる私も初めてですが、入れる方も初めてです。ドキドキでした。
ちょっとベテラン(と言っても、若い先生より二つ、三つだけ年上らしい)の先生の指示の下、若い先生が従って用意していきます。看護婦さんも手伝います。尿が漏れた時のシートの用意とかして、滑りやすいようにローションを付け、いざ挿入。看護婦さんが「ハイ、ふーと息を吐いてください。」と声をかけられ、一気に挿入です。たいして痛くはありませんでした。 😀
ところがです。確かに、挿入したときは尿が流れました。けれど、利尿剤を打たれ、尿意を覚えているのに、力を抜いてもおしっこが管を通って行かないのです。そこで、ちょっとだけ力んでみました。そうしたら、管の外側を通って、出てきました。お陰で、パンツはびしょびしょ。
病室を用意しているあいだ、診察室で待っていましたが、そこで「もれちゃいました」といったら、ベテランの先生がひとつ上の太いカテーテルを用意するように指示、続けて若い先生に入れられました。一日に2回も。2回目は太いやつです。
カテーテルの交換が終わったら、パンツはびしょびしょのまま、病室へ連れていかれました。尿が漏れたというのに、診察室の看護師さんはほったらかし。しょうがないので、病室の看護婦さんに脱がしてもらいました。点滴・心電図のセンサー、尿道のカテーテル、指先の酸素濃度計、フル装備で自由が効かなかったからです。
弟がコンビニでパンツを買ってきてくれました。それに履き替えさせてもらいました。その時点で、更に利尿剤を追加。この初日のみ、利尿剤を倍投入です。それ以降は初日の半分、朝に点滴の管を通して投入です。
すると、また激しい尿意を覚えてきました。前と同様、全然流れません。力を抜いても流れません。そこで、ちょっと力んだら、また漏れました。看護婦さんを呼び出し、またパンツ交換です。看護婦さんに「力まないほうがいいみたい」と言われました。けど、流れなかったらしょうがない。
その看護婦さんが、チューブを下げてくれたら、すーと流れて行きました。何もしなくても、尿が流れていくのが分かります。看護婦さん曰く、たまに尿を貯めるパックへ上手く尿が落ちないことがあるとのこと。そこで思い出したのが、前年にがんで亡くなった叔母のことです。最後の入院のとき意識もなく、もう手は尽くせなかったのですが、その入院中に尿がチューブを流れないと尿漏れすることがあるので、流れているか確認しろ、流れないときはチューブを動かして流してやってくれと付き添いの我々に説明があったのです。
つまり、叔母が入院していた地方の病院でも、尿道にカテーテルをいれチューブで排出させる方法では、尿がうまく流れないことがあるのは常識であり、私の入院していた病院でも、その日、その看護婦さんはそれを知っていたということです。私を診察した先生方や、その時の看護婦さんは知らなかったわけです。私はそれを身をもって経験したわけです。
「ああ、流れていくのが分かります」と言ったら、看護婦さんは「よかったですね。また、流れないようなら、教えてください」とのこと。その日は、わざわざ看護婦さん呼ぶのも何ですし、病室に入ったのは9時頃で、消灯時間も過ぎていましたので、自分でチューブを上げたり、下げたりして、一晩中尿を流していました。なにせ、強い尿意で寝られませんでしたから。
朝方に、尿意も治まり、三時間ほど眠り、初日の夜は明けました。
教訓:新人であれ、ベテランであれ、酒の残った状態で、患者さんの前に出てはいけません。不安に感じさせます。
教訓:経験のない医者であることを、患者に悟られないようにしましょう。患者を不安にさせます。
教訓:医師・看護師・その他の医療従事者間で、情報・経験は共有しましょう。あなたの「当たり前」を他の人は知らないかも知れません。