清潔という意味でのクリーンシェービング

外人さんが動画であごの周辺を撫でながら、「クリーンなんたら」と言っている場合、それは深剃りを表しています。クリーンには綺麗とか清潔という意味もあります。神経質と言われない程度に、清潔に剃るヒントをどうぞ。

この記事にまとめるのは、プロフェッショナルな理容師さん向けではありません。個人でウェットシェービングを楽しむ人に向けて、個人的な見解を紹介しています。

カミソリ

クラッシックシェービングを勧める人は、「カートリッジは細菌がたまりやすいから不潔だ」という主張をします。構造が細かいから、汚れが落ちづらく、そのため細菌の温床になるという指摘です。

実際は、構造が単純なストレートレザーであっても、剃り上がった後にお湯で流し、タオルで水分を拭きとっても、刃の部分には剥がれた皮膚やらゴミやらが残っています。洗剤を使い、よほどゴシゴシ洗わない限り、残ってしまうものです。

体を傷つけた時に、水洗いをすることを推奨されているのは、ゴミや細菌をできるだけ洗い流すためです。数を少なくするということです。多少は残っても、私達の体の免疫が後の面倒を見てくれています。

それと同じ感覚で、道具をお湯で流せば、その水圧で流れ、細菌は少なくなります。自分だけで使用する道具であれば、それで十分です。ですから、使用する前になんであれ洗い流しましょう。

また、剃り終わった後は、細菌の栄養分となる石鹸や剥がれ落ちた皮膚や髭をできるだけ流しておきましょう。

カートリッジの細菌問題に対応するため、抗菌プラスチックにしたり、抗菌コートにしたりと、カートリッジ式カミソリメーカーも手を打っているでしょう。スムースに剃るためのジェル分にも抗菌剤なり、殺菌剤を含めているでしょう。あまり神経質になる必要はないはずです。

水垢や石鹸カスがたっぷり付いた、両刃のカミソリより、カートリッジのほうがまだ清潔でしょう。両刃のカミソリも、たまに手入れが必要です。綺麗にしてあげましょう。

どんな道具を使うのであれ、使い終わったら洗う。使いはじめる前に洗う。たまに手入れをして、水垢や石鹸カスをきちんと落としましょう。

手・顔・皮膚

道具は手で持ちます。手はさほど綺麗ではありません。ですから、食品を扱うところは原則使い捨て手袋を使うところが多くなっています。あまり神経質になり、海外のように寿司を握るときも手袋着用が義務付けられませんようにと願います。

アメリカの理容師さんのコンテストを見ていると、最近は手袋をしているところもあるようですね。ゴム手袋はダサいですが、漆黒の手袋はかなりかっこ良く見えます。

普段の私達の手は汚れています。だからといって、髭剃り時にあまり神経質になってもしょうがありません。顔を洗う時に一緒に手のひらも綺麗にする程度で良いのではないでしょうか。

手だけでなく、シェービングに使用する道具にも細菌などはいるでしょう。手のひらや顔を洗ったところで、シェービングの時の圧力やカミソリを握る時の力で、毛穴の中に潜んでいる細菌などが表面に出てきます。

私を含め、多くのシェービング愛用者が髭剃り前の洗顔を勧めています。それで落ちる分の細菌は落とし、それでOKとしましょう。神経質になると、きりがなくなります。

ネット上の「超清潔神話」に惑わされないように。通常の健康な人であれば、免疫が適当に対応してくれます。私達は、普通の細菌より強い存在です。

ブラシ

これが一番、道具の中で不潔になりやすいものです。通常、動物の毛が使用されており、乾きづらいからです。

「生乾きの洗濯物が臭うのは、細菌のせいだ」と私達は洗剤の広告で勉強しています。:) 洗っただけでは細菌とそれらの栄養分を完全に落とすことはできません。そうした細菌のほとんどは、水分が低いところでは活動できないので、さっさと乾かす必要があると学びます。

同じ現象です。ブラシは水分を保持する能力が大きいほど「有能」とされています。水分を保持する能力に優れているほど、水分を多く含んでいるのですから、乾きづらいです。

ブラシが水分を保持できるのには、2つ理由があります。一つは毛と毛の間の隙間に、水分が毛細管現象で溜まるものです。もう一つは、毛の一本一本が給水する分です。

毛と毛の間の水分は、ほとんど振り落とすことができます。しかし、密集している根元の部分は多少残ります。気になる方はタオルで吸水すると良いでしょう。

もちろん、早く乾かすために暖かい風を当てるのは有効です。ただし、リスクもあることを覚えておいてください。

ブラシの根本を固めているのは通常樹脂です。ブラシをハンドルに開けた穴に固定するのも樹脂です。中国産ブラシだと、恐ろしいことにゴム系の接着剤や日本でいうところの「セメンダインC」系の接着剤を使っている製品もあります。

そうした樹脂や接着剤には高温に弱いものが多いため、早く乾かそうと極端に温度を上げるとダメージを与えてしまいます。人工樹脂の場合、硬さがなくなってしまいます。

また、これは「衛生か、製品の寿命か、どちらを取るか」という話になるのですが、ブラシの根本は硬い樹脂で固めているため、毛が濡れることによる膨張と、乾くことになる縮小で段々とダメージが蓄積されます。古い床屋さんが「ブラシの根本は乾かさないほうが長持ちする」という知恵を教えているのは、そのせいだと思われます。

さらに、石鹸水という栄養分を吸収するブラシの毛ですから、濡れたままでは細菌が繁殖し、その細菌の中には毛にダメージを与えるものもあるというリスクも考えられます。

つまり、動物の毛のブラシを使うということは、いろいろと考え、選択する必要があるのです。徹底的に乾かして清潔優先で使うか、製品寿命を考慮して程々に乾かすかという、どちらかをまず選ぶことになるかと思います。

また、根本に水分がたまりやすいということは、そこに石鹸分も残りやすいということですし、石鹸カスもたまりやすいということです。そのため、定期的にクリーニングする必要があります。

私個人の行っている方法は、アルカリ性分の高い洗濯用石鹸でよく泡立て、きれいに洗い流します。その後、食用酢を入れた水に30分程度浸してから、丁寧に洗い流します。酢水に長時間付けると、金属部分がサビますのでご注意ください。

完全に乾燥したブラシは、十分に給水してから使いましょう。吸水が不十分ですと石鹸水が毛の奥にまで入り込みます。そうした石鹸分は取り除けません。毛の内部に入ってしまうからです。毛の内部に染みこむのを可能な限り防ぐ意味でも、使用する前に十分な吸水をさせます。

動物の毛のブラシを使う場合にお薦めなのは、カミソリと同様に自分だけで使うのものであるなら、毎回完全にきれいにするより、程々にしておきましょう。ブラシに細菌が残っていたとしても、ブラシを使う前に水圧でできるだけ流してしまえば、数は減ります。残った細菌のうち、わずかな割合でしょうが、石鹸と接触することで死んでしまうものもあるでしょう。大部分は生き残るにせよ、シェービング後に洗い流せば、ほとんど皮膚に残りません。

ブラシの使用前にきれいに洗い、使用後にきれいに洗う。シェービングが終わったら、ソープの泡をきれいに流す。それ以上はあまり神経質にならなくても良いのではないでしょうか。

もし、清潔第一のシェービングを目指すのであれば、人工毛のブラシのほうが有利です。

最近の人工毛のブラシは、結構優秀で使い勝手もよいものがあります。なにせ、毛自体が給水しません。これは、水分を多く保持できないという欠点でもありますが、乾燥しやすいという点では利点です。それに、水分を多く含めないというのは、ブラシマニアがいうほど重要でもありません。足りない分をどこかで足してやる工夫をするだけです。

シェービングビデオや「今日のシェービング」として投稿される写真などを見てみると、人工毛のブラシを使っている人の数はかなり増えているのが分かります。特にソープやクリームを毎回変える場合、以前の香りが残りにくい利点があります。また、水分を振り落としやすいため、ブラシが保持する水分量の誤差を少なくでき、泡立てる時の水分量をコントロールしやすいのも利点です。

さらに、人工毛は動物の毛より、殺菌剤などに対しても耐性があります。徹底消毒したい方にもってこいです。

ソープ

道具の中で不潔になりやすいのがブラシならば、消耗品の中で不潔になりやすいのがソープとクリームです。(ブラシの毛の部分(ノット)も、長く使用できるものではないため、消耗品といえますが、ソープ、クリーム、ローション類よりは、ずっと長持ちします。)

缶入りスプレー式シェービングフォームや、プラスチックチューブ入り製品が衛生面で有利なのは、手やブラシなどの汚染されている可能性のあるものに、直接触れる機会がないからです。(ブラシに直接チューブ入りシェービングクリームを付けたり、手で取ったりすれば、触れてしまいます。)

日本の粉末シェービングソープは、衛生面で言えばかなり優秀です。水分をほぼ含んでいませんし、容器などへ振り入れるため、ブラシや手の最近で汚染されることはまずありません。

通常、欧米で販売されるシェービングソープは、工場で大量生産される、いわゆるトリプルミルドの硬い型抜きソープと、小ロット生産で容器に熱く柔らかい状態で詰め込む、いわゆるアーティザン(Artisan、職人のこと)ソープの2つへ、製造方法により主に分類されます。

絶対ではありませんが、工場で大量生産されるタイプのソープには品質保持剤とか殺菌剤、酸化防止剤などが含まれます。少数生産のアーティザンソープの場合、商品のウリはそうした化学薬品を含まない「ナチュラル」であることです。

では、そうした化学薬品を含まないことが安全かといえば、必ずしもそうと言い切れません。今までの話の流れでお気づきでしょうが、「清潔=細菌類がないこと、少ないこと」と定義づけるのであれば、殺菌作用のある成分を含んだ製品のほうが、より好ましいこともあります。

シェービングソープも石鹸ですので、石鹸についての一般的な知識をまず理解してください。石鹸は油の成分で作られます。完成した石鹸は通常、水分が少ないので細菌類が活動できません。

では、水分がない状態で永遠にそのまま保存できるかといえば、酸素がある限り少しずつ酸化してしまいます。酸化した石鹸でも一般的に洗浄力には問題ありませんが、変色したり、いわゆる油焼けした臭いがするようになります。

シェービングソープは男性の場合、特に顔で使用しますので、酸化した臭いがするようになると、とても使いづらくなります。ただし、通常は香料が含まれており、その香りにより酸化しているかを判断するのは難しいでしょう。ソープとしての性質に変化がないとしても、酸化した石鹸がどの程度まで肌に影響があるのか、もしくは影響がないのかは不明です。資料をかなり前から事あるごとに探していますが、見つかりません。

こうした酸化を防ぐのが、酸化防止剤です。

逆に石鹸の酸化を促してしまう一つの要因は、水分です。水分自体が直接酸化させるわけでありません。昔習ったことがある、陽イオンと陰イオンの世界のお話です。私はとうに忘れています。それでも簡単に説明すると、脂肪酸とアルカリがくっついた石鹸の状態は安定しており、元の油より酸化しづらいですが、水分に溶けると安定が崩れ、脂肪酸の部分が酸化してしまうとのことです。

グリセリンも石鹸を酸化させる原因となります。グリセリンには吸水性があります。空中の水分を引き寄せて、石鹸の表面に集めてしまいます。

特にシェービングソープでは、「洗い流した後に肌に残り保湿する」という宣伝文句(もしくは迷信)のため、グリセリンは配合されます。剃った後に洗い流せば、肌に残ることはありません。

もう一つの配合する理由は、泡の持続性が上がるからです。泡が消えてしまうのは、水分が蒸発するのが主な原因ですが、グリセリンは蒸発しにくいため、濃度の変化が起きにくくなり、泡の持続性が上がるのです。そのためには、水分に対するグリセリンのパーセンテージはかなり必要なのですが、シェービングソープは極端に水に薄めて使用するわけでありません。ソープに含まれるグリセリンの量が多くなくても、泡の持続性に役立っていると考えても良いでしょう。もし、持続性にも役立たないとしたら、シェービングソープに入れる必要性は事実上無くなります。

石鹸の酸化を促してしまう3つ目の要素は、余剰な油脂分です。石鹸は油脂をアルカリで鹸化します。鹸化された分は石鹸です。アルカリ分を少なめにすると、石鹸の中に油脂が残ることになります。また、鹸化が済んだ石鹸に油を加えることもあります。いずれにせよ、鹸化されていない油脂は、油脂そのものです。油脂の酸化のしやすさは、種類により異なりますが、いずれにせよ段々と酸化していきます。

水分についてはさらに、細菌やバクテリアを活性化させます。乾燥していれば活動しませんが、湿っていればどんどん活動します。脂肪酸であれ、油脂であれ、細菌やバクテリアの中にはこれを栄養として繁殖するものがあります。要は、石鹸自体が餌なわけです。

しかしながら、いくら酸化を加速させ、細菌が増える原因になるからと言っても、水分なしに石鹸は活用できません。

ですから、使用後の石鹸からできるだけ、水分を取り除いたほうが良いわけです。石鹸の表面に水分があれば、石鹸がどんどんと吸い込んでしまいます。大量に水分があれば、どんどんと内部へ染みこんでしまいます。

たとえば浴用石鹸の場合、シェービングソープよりも一回あたりの使用量が遥かに大きいわけです。つまり、水分を吸い、酸化し、細菌が増えやすくなったとしても、その分を次回の使用で消費できれば、さほど石鹸自体の衛生度は下げなくて済みます。

ところが、シェービングソープの場合、一回あたりの使用量が少ないことが問題になります。水分を含んだ分を次回の使用で使いきることはまずないでしょう。使用するごとに余計な水分をソープに残すことになり、その分酸化し、細菌が増えたソープの量が蓄積されます。

かといって、十分に乾燥させるために、毎回空気に晒していれば、その分香りが抜けてしまい、ただの石鹸になってしまいます。

このように考えると、取り扱いが難しい製品であることがわかります。ですから、適切な化学薬品が使用されていることで、「便利で、かつ衛生的」に使用できるのです。殺菌剤が含まれていれば、一つの製品がなくなるまで連用しても、細菌の繁殖をある程度抑えることができます。

実のところ、シェービングソープだけでなく、化粧品からシャンプーなどでも同じように衛生面を考え、化学薬品が加えられています。中には、そうした薬品に対し身体的なトラブルを起こす方もいるので、絶対的に善だとは言いませんが、多くの方にとって「便利で安全」な製品にするため、加えられています。

イタリアの人気大衆シェービングソープ、Proraso(プロラソ)は、大量生産品ですが型抜きの固い石鹸ではありません。固形石鹸と液体石鹸を混ぜた、ソフトソープです。適切な化学薬品を使用しています。そのため、溶けやすく、泡立てやすく、連用しても変色、臭いが悪くなることがありません。(乾燥して変色することはあります。)

使いやすいため、ウェットシェービングで初めてブラシを使って泡立てるというビギナーに、私はおすすめします。ただし、化学薬品を使用しているという点が、気にする人には受け入れがたいということも承知しています。

削る方法

私は最近、レビューのためにシェービングソープを複数で使いまわしています。一回の使用で吸水されたとしても、次の使用はローティーションの中で、多分1週間以上の間隔が開きます。その間に、願わくば吸水された分の水分が、飛んでくれることを願っています。

しかし、臭いが飛ばないようにフタをしっかりしているということは、水分も飛ばないということです。多くのソープが酸化し、細菌を増やす状態にしてしまっています。

そこで、毎回使用する分を削り取る方法を取ることにしました。最初に、陶器のシェービングボールで、底が凸凹でソープを削れるものを探しました。ところが、手持ちのソープの多くが、缶入りのもので、削り取るために取り出せないことに気が付きました。

そのため、ソープを別の道具で削ることにしました。ギザギザのついているスプーンや、スチールの帯でできている製品を削るために使おうかと思いましたが、いまいちです。

先日、100円ショップで「なにか削る道具ないか?」と探したら、ピッタリの道具を見つけました。レモンの皮を削るためのピーラーです。

ステンレスの板の先に小さな穴が空いており、そこでレモンの皮を削れるようになっています。ソープも余裕で削れます。スティック状のため、缶入りソープでも問題なく利用できます。削りだすソープは細かいですので、凸凹のないステンレスのボールに入れても、ブラシで簡単に溶けます。パーフェクトでした。

これでソープを削って利用すれば、ソープ自体に水分を含めずに済みます。大量のソープを酸化させず、細菌やバクテリアの餌にすることもなく、それぞれのソープをローティーションし、長期間で衛生的に使用することができるようになりました。

追記:普通のバターナイフやスプーンで削り、それをシェービングボールの底に押し付けて固定する方法のほうが、石鹸は溶かしやすいです。今はこの方法をおすすめします。

クリーム

シェービングクリームも石鹸です。単純に言えば、水分を含んでいるソープです。上述の危険性が初めから存在しているわけです。

そのため、品質保持のため殺菌剤と酸化防止剤を含めるのが通常です。それを嫌うため、アーティザンソープを売り出すブランドでは、クリームを販売しないところが多いのです。

ウルグアイの”Dr. Selby 3x Concentrated Lavender Luxury Shaving Cream”クリームは、「三倍濃縮クリーム」ですが、これは何と比べて「3倍」なのか、という疑問が残ります。製造工程に関する古い文献に、昔のクリームは水分でソープを3倍に薄めてあると書かれているのを読んだことがあります。では66%の水分を除けば、石鹸に戻るのだなと思いました。このクリーム、とても硬くて水分を含んでいないので、石鹸です。要は水を加えていないソープというわけです。

では、すべてのクリームが全部3倍に水で薄めているのかといえば、そうではありません。石鹸を作る時に使用するアルカリ性分を水酸化ナトリウムから、水酸化カリウムへ代える、もしくは割合を増やすことで石鹸を柔らかくすることができます。

原料の油脂の種類を大幅に変更することでも、柔らかくなりますが、あまり行われません。シェービングに利用される石鹸ではステアリン酸が主に利用されます。普通の石鹸では主役にならない脂肪酸です。泡を持続させる力は強いのですが、それ自体では泡立たたないからです。また、皮脂は落とすが、細胞間の油脂を落としづらい性質もシェービングに向いています。泡立てるために、ココナッツオイルなどと合わせられます。こちらも固い石鹸を作ります。「ステアリン酸+ココナッツオイル」はシェービングのゴールデンコンビなのです。

そこで、通常はどうしても水分が必要になります。ある程度の割合で水分を入れることになります。そのため、品質保護成分を入れざるを得ません。

たとえ、品質保持の薬品が入っていても、ブラシや指を直接突っ込むのは避けたほうが良いでしょう。殺菌剤の量により、水分が入らなければ、品質を保てる可能性はあります。しかし、水分が入ってしまえば、その分「薄まる」わけです。

殺菌作用が働くには、ある程度の濃度が必要です。殺菌作用は濃度と時間で決まります。殺菌剤は原料として長時間存在するわけですので、副作用などを考慮し、最低限度しか入れないでしょう。

ところが、濡れた指やブラシを容器に直接突っ込み、クリームを取ったり、ローディングすれば、水分で薄まっていき、やがて殺菌できる濃度を下回ってしまいます。指やブラシについていた細菌などが増殖してしまいます。

個人でクリームを複数所有し、ローティーションで使用する、もしくは気分で使い分けるというのでしたら、清潔なスプーンや、使い捨てのスパチュラ(アイスクリームの使い捨てヘラのような、化粧品を取り出す時に使用する使い捨てヘラ)で取り出すと「衛生面」では、万全です。

Taylor of Old Bond Streetの店舗では、理髪店も兼ねています。そこではクリームにブラシを突っ込んでいます。それは、一日に何人もの客の髭を剃るわけです。まあ単純計算で1パックで100回剃れるとして、私達が個人で使えば、使い終えるまでに3ヶ月以上です。しかし、店舗で一日10人の髭を剃れば、10日で使い終わります。(その他の古い理髪店は、今ではラザーマシーンを使っているという、色気のないことをしています。)

水分が入っている期間が長いほど、細菌やアメーバが繁殖します。複数の製品を同時に使い分けていれば、使い終わるまでにより長期間必要です。何もせずとも、劣化は進みます。

ちなみに、品質保持剤を使用せずに油脂の割合や、鹸化の割合、後から油などを加えることで調整し、クリーム状にして販売しているブランドもあります。その場合、化学薬品を使っていませんので、より衛生面に気をつける必要があります。