私自身はストレートレザーを使っていません。ですから、この記事はネット上の情報をまとめたものです。私の経験則は入っていません。
実は安い中華ストレートレザーをAliexpressで輸入中です。ストレートレザーと両刃カミソリで、剃りやすい泡の違いを調べることとが第一の目的です。もう一つ、週一回の父親の髭剃りは、ハンドルがあたってしまい両刃では剃りづらいため、ストレートを試そうと思いました。
ストレートを使い出すと自分で研ぐために、砥石に凝り始め、砥石に凝り始めるとより良いレザーが欲しくなるという悪循環に陥る方が多いようです。私はできるだけ現状にとどまるようにしたいと思っています。そのために事前に情報収集した結果をまとめています。全体の構成をさほど考えたわけではなく、知った内容を適当に並べて書いています。
ちなみに、私は現在「あの」三条市に住んでいますので、最初は「例の」和カミソリを手に入れようとしました。しかし、ご存知の通り、国内国外から引く手あまたのため、地元人であろうと入手困難です。TPPが発動すると、世界中から求められている安全な日本の食材を日本人が食えないようになりそうなことを表す予兆ですね。農業特区新潟の農家の人は、今から企業努力をしておくべきでしょう。農家で長者になれる世の中はもうすぐです。
さて、革砥の前に本来ならば砥石云々という話なのでしょうが、そちらはマニアの方が大勢情報を提供されていますので、しゃしゃり出る必要はありません。
何に使用するか
どんな主題でも同じですが、何を目的にするかで方法論は異なります。
そもそもカミソリの種類により、革砥の重要性が異なります。西洋カミソリでは重要性を増し、研ぎあげることを重視する和カミソリでは低くなります。
特に日本語の情報では和カミソリを研ぎあげる情報は多いですが、西洋カミソリをできるだけ研がずに革砥で長切れさせるという視点での情報は少ないようです。
刃のきわに付ける、少々鈍い角度の刃を小刃とか糸切り刃と言います。鋭い刃は角度が鋭く鈍りやすいため、長く切れ味を保つためにあえて二段階に鈍い刃を付けることがあります。この小刃を付けることを目的にする場合と、できるだけ付けずに本来の刃をより鋭くしようとする場合では、革砥の使い方もことなるでしょう。
日本の古い床屋さんは、わざと少々なまくらにしたカミソリで力を入れ気味に剃る「根掘り」できれいに剃ってくれます。また、技術のある床屋さんは革砥でレザーやカミソリの鋭さをお客さんに合わせて調整する方もいらっしゃったようです。こうした経験に基づいた変化もあります。
絶対的な方法が存在せず、完全に正しいやり方もありません。各自のスキルや道具、経験、目的に基づいて、様々な方法があります。
さらに、学習時に混乱を生みやすいのは、ネット情報(実は書籍でも同じですが)では方法論だけが紹介されがちで、目的の紹介がなおざりになっていることです。研ぎや研磨はそうした情報が多い領域です。様々な情報を参照しつつ、推測しながら、理解するしかありません。
この記事は、入手が困難な古い道具について言及するのではなく、比較的入手しやすい現状の製品についてまとめます。
ラッピング
べらべらと韻を踏みつつ、音楽に乗って謳うスタイルのミュージックは、同じラップでも”rap”です。
残り物のご飯を包み、水分が抜けないように包むラップの方は”wrap”です。
今は死語となった「ラップトップコンピューター」のラップは”lap”で、これが今回の主役です。ラップトップのラップは膝(大腿部)ですが、動詞としては、「同じ所を行ったり来たりしながら擦る」という意味合いがあります。
砥石などゴリゴリこするのは”hone”で「研ぐ」です。研ぐと研ぎ傷ができますので、キャンパス、布、バフなどなどでこすり、傷をなめらかに擦りとることを工業的な用語では「ラッピング仕上げ」と言います。ですから、「ラッピング」は「研磨」や「磨き」を指す言葉です。
髭剃りレザーで革砥を使い、ラッピングするのは、一回髭剃りに利用するごとに研ぎ直すのは手間ですし、刃も必要以上に減ってしまいますから、短時間で効率よく刃の鋭さを蘇らせる目的で行われます。同じ刃物でもナイフでは、研ぎ傷を消してピカピカに仕上げることを趣味としてラッピングしている人も多いようです。
“strop”は革砥という意味です。動詞としては革砥でラッピングすることを指すようです。”hone”、”strop”という単語を知っていると、検索時に役立ちます。
カノヤマ
現在の世界的な革砥生産地は中国とカザフスタンです。両国とも革砥だけでなく、シェービング道具の生産も未だに盛んです。現代では日本の鍛冶屋さんでシェービング用品を作成している方はわずかしかなく(和カミソリ2箇所)、刃物で有名なドイツの「ゾーリンゲン」地域でも、同様のようです。
カノヤマは日本で唯一残っている革砥製造メーカーです。世界中で最高品質の評判を得ている革砥です。最高級のコードバン(馬のおしりの革)に最大の手間をかけ製造されています。値段もそれなりに高いものです。
カノヤマの革砥に関する知識や技術は、古い床屋さんに蓄積されているでしょうが、なかなかネットでは紹介されていないようです。
カノヤマ製品に、以降で説明するようなワックスやペーストをラッピング時や手入れに使用しようすることは勧められていません。詳しい説明は検索していただけばすぐに見つかりますが、手入れは軽く湿らせ、サンドペーパーをかけ、よく拭き取り、布で乾拭きを行います。余計なものを使わず、最高級の皮を最高級のラッピング素材として利用する方法を推奨しています。
この最高級の道具について、あえて言及する必要はないでしょう。
布砥
デニム・キャンバスなどの布砥は、単独で購入するというよりも、革砥を購入するとおまけのように付いてきて(もしくは皮のウラ面で)、これはどうやって使うのかと皆さん悩むようです。いろいろ意見はありますが、自分の手法に合わせて好きに使えというのが一般的な解答でしょう。その自分らしい手法を編み出せるように、この記事で情報提供しています。
和カミソリの研ぎの達人の中には、刃物を研ぐと作業面の裏側に付く「返り」をきれいに取り除くために使用するという説明をされている方もいらっしゃるようです。
多分、35年位前だったかと思います。確かNHKの朝のニュース番組でカノヤマの革砥が取り上げられたことがあり、その時に布砥はバリをきれいに取り、革砥へバリが付かないようにするために使うと説明されていた記憶が、うっすらと蘇ってきました。だいぶ前ですので、記憶間違いかもしれません。
よくある意見は2つあり、革砥は「一層切れやすくするため」に毎回剃る前に使用し、布砥は「やや鈍くなった刃先を作り直すため」、切り刃を切削するために使用する方法です。削りだす効率を上げるために、研磨剤を使用することが多いようです。
もう一つよく見かけるのは、革砥で「よく切れるように仕上げる」前、つまり革砥にかける前に、毎回布砥を使用する方法です。布砥に10回程度かけた後、革砥を50回以上かける方法です。切り刃のバリや皮膚のカスなどをクリーニングするための目的もあるのでしょう。
革砥
カノヤマの革砥を使えるのであれば、推奨されている使い方をすれば良いと思いますが、なかなか手が届きません。OEMもあるようですので、実際にはカノヤマ製品を使っているかたもいるかもしれませんね。しかし、最高級を追求するのでなければ、より安い製品を使うことになるでしょう。
革砥にも引っ掛けて使うタイプと板の上に皮が貼り付けてあるタイプがあります。これについてはDOVAの説明があります。「木のハンドル」と表現されているのが、板に皮を貼り付けてあるタイプ、もしくは厚めの皮をハンドルの付いた木枠に強く張ってあるタイプと考えられ、これは”flat ground”の刃の形状に使われると説明があります。”1/2〜full hollow ground”の形状には、吊り下げて使う革砥が使われると説明されています。必ずしもこの情報に従う必要はないでしょうが、一つの指針となるでしょう。(刃の形状はリンク先で図示されています)
引っ掛けて使用するタイプの革砥の場合、しっかりと引っ張らないとたるんでしまいます。逆に強く引っ張り過ぎると、たわんで変形します。昔の床屋さんでは、ある程度の強さで引っ張り、少々しなる分についてはそれに合わせてカミソリの角度を合わてこすっていた記憶があります。
いざ革砥を使いはじめるとき、まず最初にワックスやペーストを塗るかどうかの決断をしなくてはなりません。油を補給し、革砥の乾燥を防ぐ目的のワックスを利用すれば、革砥は柔軟性を保つでしょうが、油分を塗るわけですから滑りが良くなりますので、革砥の表面の凸凹で「研磨」する効率は落ちます。逆に塗らなければ、皮と表面の凸凹によりダイレクトに「研磨」されます。
ワックスやペーストの中には、研磨剤や粘土が混ぜてあるものがあります。革砥の表面には目的とする「細かさ」より粗い凸凹や、傷があります。それらはレザーの刃に傷を付ける恐れがあります。それらを埋め、目的とする細かさの研磨を行うため、塗りこむタイプです。
ワックスやペーストの種類
革砥に使用するワックスやペーストの製品には説明が少ないものがあり、どんな使用を想定した商品なのかわからないものがあります。
そのため、まず簡単に革砥や布砥に使用する製品の整理をしておきます。
まず、油分だけを補給するタイプです。この種の製品には通常「研磨剤は含まれていない」とか書かれています。乾燥防止や柔軟性の向上、滑りを良くすることを目的とする製品です。
次に、革砥表面の凸凹や傷を埋めるために、研磨剤や鉱物、粘土を混ぜているタイプもあります。研磨剤のみのタイプでも、凸凹や傷を埋めることを目的としていると説明しているものもあります。
最後に、もっぱら研磨を目的としている製品もあります。中華製品の中には、革砥とおまけとして研磨用のダイヤモンドペーストをつけてくる販売者もいます。こうしたおまけには具体的な説明が通常ありません。購入者の自主性や判断に任せられています。
次に、具体的な製品を見ていきましょう。
製品
シェービング用品の供給元としても有名なDOVOは、革砥や布砥で使用する製品をいくつか出しています。DOVOのサイトでは製品が紹介されていませんので、eBayのページを紹介します。
2本一組みのブロックです。赤い包み紙が鈍くなった刃を研磨するためのもの、青い包み紙の中身は黒らしく、こちらは磨き上げ用となっています。両方共に革砥へ使用するための製品です。違ったタイプの研磨剤を使用する場合は革砥を分けるのが通常のようですので、両方共に使用するのであれば最低でも2本革砥が必要となります。
4本一組のチューブです。黄色のチューブは単独でも製品に付けられていることが多く、ネットでもよく見かけます。黄色は研磨剤が含まれていない、皮を保護し滑りを良くするための油です。多分、これと同じ成分のワックスが容器入りでも販売されています。
白は布砥へ使用するためのペーストです。研磨剤が含まれているのか、何の目的に使用するのかは説明されていません。他のサイトの情報によると、チョーク(白亜)が含まれているペーストで、これ自身は研磨力を持たないようです。
赤は刃が少し鈍くなった時に、緑はとても鈍くなった時に使用するペーストと説明されています。布砥、革砥どちらで使用するかは説明されていません。推測するに赤ペーストは酸化セリウム、緑ペーストは酸化クロムでしょう。日本語では赤棒、青棒で検索すると情報が得られます。実際にこの2つを使うような状況になった場合、研げる人は研ぎ直すでしょう。研がない、研げない時に使用するペーストと理解したほうが良いかもしれません。
せっかく、赤棒、青棒の話がでましたので、この種の研磨剤の紹介をしておきます。上記のリンクは、たまたま最初に見つかった商品リンクですが、検索してもらえばいろいろなところで販売されています。1つあたり1キロは、個人がレザーを磨くには多すぎます。ホームセンターでも販売されています。
バフ掛けとかバフ研磨とか、鏡面磨きとかの主題で情報がたくさん見つかります。レザーには青棒と呼ばれる「緑」の製品が主に利用されます。酸化クロムです。eBayでは革砥用に数グラムの製品も売っていますが、価格はぼったくりです。ただし、中には粒子の細かさがきちんと説明されているものがありますので、情報がきちんとしている製品を購入したい場合に利用すると良いでしょう。
情報が少ないのですが、青棒としての粒度は3000程度のようですので、それ以上の細かい仕上げ砥で研ぎ上げる場合は、青棒を使用する意味がありません。研磨用の酸化クロムパウダーは粒子0.5マイクロメートルのものが、海外から入手可能です。どうも酸化クロム自体は0.5らしいのですが、青棒には他にも酸化アルミニウムが入っているらしく(未確認情報)、手番としては下がるようです。
ちなみに酸化クロムには毒性の強いものもありますが、研磨に使用される緑色のものは黒板(昔はその名のごとく黒かったのですが、確か昭和50年代頃に緑色になりました)につかわれる酸化クロム(Ⅲ)で、毒性はありません。毒性のある酸化クロムは黒や赤です。(酸化クロムに毒性がなくても、研磨剤に使用されている油や添加物には毒性があるかもしれません。使用後はきちんと洗浄しましょう。)
Titan razor wax wax for razor wax
中華ストレートレザーとしては、金豚、Gold Dallor、Titanが知られており、この順序で製品が良いと日本では紹介されているようです。実際はもっと多くのメーカーが中国にはあります。金豚は情報が少なく、Aliexpressでまれに商品を見つける程度です。私の調べたところ、Gold Dallorは一般消費者むけで、Titanの方がよりハイエンドのようです。
Titanは日本統治下の韓国で生まれ、すぐに台湾へ工場を移したようです。
この商品はTitanが直接発売している革砥用のワックスです。構成物が”Rare mineral soil from Turkey,paraffin wax,mineral oil and some environmental additives.”となっており、訳すと「トルコの貴重な鉱物土、パラフィンワックス、鉱物油、何種類かの環境添加物」となります。正直、何だかわかりません。
わざわざ購入しなくても、AliexpressでTitanから直接ストレートレザーを購入すると、おまけとして革砥とこのワックスが付いてきます。(追記:製品により布砥のみ、レザーのみになるようです。)革砥は13ドルちょいで販売されていますが、別の製造元へ大量発注すれば一つ3.5ドルで作ってくれる製品です。このワックスについては正体がわかりません。色が黒っぽいので炭化ケイ素かもしれませんが、鉱物土ではありません。トルコ産の黒っぽい粘土ですと、セピオライトかもしれません。ベントナイトと色付きの脂を混ぜているのかもしれません。
(追記:Titanの革砥は人工皮革でした。製品としては薄く、毎日使用する人であれば半年持つか、持たないかていどの品質です。)
各ストレートレザーの商品ページでは、おまけについては言及されていません。そのため使用方法も明記されていません。ワックスの購入ページには、図示されています。中央の10センチにワックスを塗り広げ、レザーの背面を使い、こすりながら上下へ広げるように書かれています。
冒頭で話した、Aliexpressから購入した中華レザーは、Titalのストレートレザーですので、商品が届いたら後ほどレポートをこのブログへ上げておきます。
リンク先はGold Dollar製ストレートレザーの商品ページですが、おまけとして革砥とダイヤモンドペーストがついています。(実際はおまけというよりはレザー+ペースト+革砥のセット+利益という価格設定です。)販売はCold Dollarの製造元ではありません。多分個人が色々な商品を合わせてセット販売しているものです。
なんでダイヤモンドペーストなのかとも思いますが、推測するにステンレス製のレザーで硬いから、削りやすいようにダイヤのペーストをおまけにつけているのかなと想像しています。(追記:海外のフォーラムの情報などを読むと、0.5マイクロメートルの大きさの粒子のコンパウンドで磨くと、切れ味を上げるために役に立つことに、多くの人が合意しているようです。このおまけのダイヤモンドペーストも、この大きさですので、切れ味を出すための目的で使うのでしょう。)
研磨用のダイヤモンドペーストは、細かさに合わせ製造各社が色付けしている製品が多いようです。日本のダイヤモンドペーストは油性・水性ともに別売りの薄め液を併用する製品が多いようですが、中国の製品では薄め液を見たことがありませんので、そのまま使えるタイプが主流なのだろうと推定されます。(追記:実際に購入してみましたが固いため、広い部分にまんべんなく広げるには、機械油などで弛めて使うようです。)
写真のペーストには0.5と書かれているようですので、0.5マイクロメートルの製品でしょうか。粒子の細かさから、砥石の表示で見られる細かさの数字(多分インチあたりの粒子数だと思いますが)を計算ではだせません。次のリンク先の表が参考になります。
上記の表の通り、粒度と番手は製品により異なりますが、ダイヤモンドペーストを使う研磨の場合、上記のセットに含まれている0.5マイクロメートルの場合、たいてい10,000番手程度と表示されることが多いようです。
レザーに関するフォーラムの投稿などを読みますと、レザーの仕上げにこの粒子サイズのダイヤモンドペーストが上げられているところがありますので、まず間違いなく仕上げ用のラッピングに使えという意図でおまけにしているのでしょう。
ちなみに、この販売者に「どうやって使えばよいの」と尋ねましたが、答えは返ってきませんでした。
中華ダイヤモンドペーストはAliexpressで購入すれば10ドル以下で粒子サイズが10種類以上組み合わせたものが入手できます。まあ、日本のアマゾンやモノタロウでも購入できるのですが割高になります。特にアマゾンのセット用品はAliexpressで購入すれば数分の一から十数分の一程度の値段で購入可能です。
バルサ!
革砥ではありませんが、ダイヤモンドペーストや青棒つながりで触れておきましょう。
木材のバルサを使いラッピングする方法もあります。バルサは簡単に削れるため、研磨剤を変更する場合に削って使用できるという利点があります。また、整形がしやすため、革砥ではいびつにラッピングされてしまう、刃が曲線に付いているレザーに合わせて加工することもできます。
削った後は、サンドペーパーをかけてから、ダイヤモンドペーストや青棒を塗りつけラッピングします。
ラッピングペーパー
最近ではラッピングペーパーで仕上げるのも流行っているようです。フィルム上に研磨剤を均等に塗りつけてあるものです。
薄いものですから、平面のガラスに水分やスプレーのりで貼り付け、ラッピングする方法がよろしいようです。均一に晴れるからです。通常のボンドを使用したり、両面テープを使ったり、面の粗い木材などでは、素地や接着剤のの凸凹がラッピングに悪影響を与えてしまいます。
一つの指針
ざっと情報を紹介してきました。
ストレートレザーでは、なまくらになったら「いかに研ぐか」という話題がやはり多いようです。研ぎを楽しむ方々に向けた情報はけっこうありますが、実用的に「できるだけ研がないで済ませる方法」の情報が少ないようです。
今の世の中では「カートリッジ式」が「実用的」と考えられています。剃れなくなったら、交換すれば良いからです。よりクラシックな方法としては両刃のカミソリがあります。わざわざ研ぐ必要のあるストレートのレザーは、時間がより重要と考える近代では、実用というよりは、「趣味の世界」です。実用的な目線での解説が少ないのも当然です。
それでも、「できるだけ研がず、できるだけ革砥でラッピングもせず」という実用的な方針で解説している記事を見つけました。全文翻訳の許可を著者に取ろうと思いましたが、残念ながら既にメールアドレスが無効になっており、連絡が取れません。そのため、以降で内容の一部を妙訳します。内容が、今までの記述と重なる部分もありますが、ご了承ください。
タイトルは、”Personal Observations About Straight Razors and Strops”、「ストレートレザーと革砥に関する個人的な所見」でArthur Boon氏により書かれています。原文はこちらです。英語が読める方はぜひご覧ください。
革砥について
髭を剃れば、どんな形であれ刃は顕微鏡レベルで乱れる。ごく小さなのこぎりのように見え、バラバラに曲がっている。カミソリをそのままにしておけば、24時間以内に自然と刃は伸びる(育つ)。3回か4回剃った後に、きれいに整う部分は少ししかなくなり、そうなったら革砥をかける必要がある。正しくこれを行い、刃を丁寧に取り扱えば、研ぐのは毎月一回、場合により年一回ですみ、形を削り直してもらうためにプロへ送るはめになることは絶対にない。正しい革砥と正しいペーストが必要なだけだ。これは革砥だけを使うことで、できるだけ研ぐのを引き伸ばすというゲームなのだ。それ以外の結果が起きたなら、手入れを間違ったということだ。革砥は研ぐ時と全く同じ角度で使う。革砥をかけると刃を磨き上げ、極小ののこぎり刃に残っている乱れを整える。正しい方法には、角度を正しく保つために、吊り下げた革砥を制御することも含まれる。
ペーストタイプ
- 白:ストラップのキャンバス時の面に使用するチョーク(白亜)配合のペースト。
- 黄:皮の面に使用し、ベタベタでしなやかにする、ただの油。
- 赤と緑:きめの荒い赤、極めてきめの荒い緑の研磨剤。元々ストレートレザーに使用するものではないので、使う必要がない。刃をダメにし、レザー砥石のほうが良いので、筋が通らない。革砥を使っても十分でなければ、研ぐべきだ。
- 黒:白と黄と同じように、研磨力のない、ほとんど磨くだけのペースト。刃を鋭くするには必要ないが、光らせたいのなら、欲しくなるだろう。しかし、黄ペーストを使えば、革砥に含まれる珪酸塩が磨いてくれるので、黒ペーストは使いどころなし。
どの革砥にどのペーストを使うか
多分最高の組み合わせは、釣下げ型の革製の持ち手が付いた革砥で、Juchten-Leder製の450ミリの長さ、幅が50ミリで、ウラ面がキャンバス地のものに、皮の面には黄色のペースト、キャンパス面には白のペーストを使うことだろう。ペーストは3センチほどを年に2〜3回、革砥へ塗れば十分だ。何箇所かに付けて、手のひらで広げれば良い。革砥がべたつくようになるが、切り刃を整えるために役に立つ。小さなチューブで数年間持つだろう。
革砥テクニック
革砥は髭を剃る前にだけにかける。剃った後は最短で24時間、できれば48時間そのままにしておき、刃を「成長」させる。剃った直後に刃に革砥でラッピングしてしまうと、顕微鏡で見られるレベルではノコギリ状の刃がバリのようになっており、壊れて皮の中に突き刺ささり、革砥はサンドペーパーのようになる。研いだ直後に革砥をかける場合、水と石鹸を使いきれいに洗い、刃には触れずにタオルで水分を取る。吊るすタイプの革砥の場合、持続的に張り続けるようにする。そうしないと刃を丸く、鈍くしてしまう。革砥の上を動かす時には、本刃が革砥に完全に接触し続けるようにする。レザーの重さ以上の力をかけないようにすること。まずキャンバスで約10回往復させ、次に皮で10から60回往復させる。
Arthur Boon