シェービングのウソホント3

ウソホントシリーズ3です。

穴熊ブラシの保水力

穴熊ブラシは豚毛や人工毛よりも、保水力があります。その理由が「毛が油で覆われており、濡れても互いにくっつかない」からという解説があります。

これは嘘でしょう。まあ、仮に油で覆われていて水を含まないとしましょう。水を含まないのであれば、水を振り落とせば、ブラシはカラカラな乾燥状態になるはずです。穴熊のブラシをお持ちの方はお試しください。カラカラになりました?

またまた仮に油で覆われているので、水を弾くとしましょう。ところがソープやクリームは石鹸です。界面活性剤です。水と油を結びつけることができます。そのため、水であれば弾くことでまとまるのを防ぐことはできたとしても、泡立てるに十分な濃さの石鹸水は弾けないでしょう。

多少は毛に油は残っているでしょうし、毛の中心部へ染みこむ油もありますが、濡らせば、毛が濡れます。実際に水ははじきません。毎日石鹸水でブラシを洗っているようなものです。油なんて表面にそうそう残るものではありません。

そりゃあ、新品であれば多少は多く残っています。でも、新品は匂いますよね。ええ、大抵の香りは脂溶性です。油に溶けています。新品は油を持っていますから、臭いです。匂いが消えるということは、油が抜けたということでもあります。数回洗っただけでは消えないのは、根元の部分の油はなかなか抜けないからです。でも、無理に洗って痛めないでくださいね。

ちなみに、安い穴熊のブラシとシルバーティップの一番の違いは吸水性です。シルバーティップは吸水力が違います。

ロンドン3Tが最高品質

ロンドンに存在する古くから営業しているサロンは、名前がTから始まる部分が含まれています。ブランドの製品の値段と格付順で言えば、Truefitt&Hill、GEO. F. Trumper、The Taylor of Old Bond Streetです。

その歴史から最高品質であると言われています。しかし、実際の製造は既に外部委託で、歴史云々で格付けしても意味はありません。マスプロダクションによる安い製品が溢れている現在では、どのブランドでも自国内のみで生き残るのは無理でしょう。様々な国で販売できるように、品質の保持を行うために化学薬品を使わざるを得ず、その手の知識も必要となると、家族経営でつないでいるこの手の会社では製造が難しいのが実体ではないでしょうか。

ですから、こうした格式のあるブランドを使うのは、雰囲気を味わうためであります。ツルーフィット&ヒルが一番高級で値段が他の2倍近いのは王室御用達だからでしょう。

残念ながら、製品の品質は外部委託している業者に依存することになります。たとえば、テイラー・オブ・オールド・ボンド・ストリートのサンダルウッドは一番人気でよく売れるためか品質が良いですが、人気のない香りではレビューがばらばらで、どうも品質が一定していないように感じられます。また、3T全般にソープが売れ筋ではなくなったからなのか、積極的に売ろうとする意欲もないようですし、最近はレビューも少々落ちているようです。

基本的にシェービングソープもクリームも石鹸です。どんなブランドであれ、そんなに原価が高価いものではありません。それに香りを付けています。この香りの部分のコストは製品に反映されているようです。たとえば香水をメインとして扱っているブランドのシェービングソープやクリームは、基本的に高級な自然の精油などを使うため、かなり高い値段で販売されます。シェービングブランドでも、Castle Forbesは天然の精油のみを使っているため、他のブランドの2倍の値段です。

3Tに憧れるのは、まあ、女性がブランドが確立されている、高級な化粧品に心躍らせるのと同じ心理です。今や、品質が最高級で安定しているとは言えません。昔ながらの製法でもありません。選択肢の一つとして捉える程度にしておきましょう。

そう言いながらも実際の話、日本国内では泡立てるシェービングソープやクリームは見つかりません。アマゾンでふっかけた値段の製品を購入するか、自分で輸入するしかありません。安い製品を輸入しようとしても、製品と同額程度の送料がかかります。どうせ送料がかかるなら、高級品を購入したほうが良いかなと思う気持ちにも同意できます。

獣脂

ソープが獣脂ベースだからどうのこうのは、まず考慮する必要はありません。売り手側の宣伝文句の一つです。

基本的に獣脂とは、牛脂です。日本の釜焚き石鹸の多くは牛脂ベースです。牛脂だけでは溶けづらい石鹸になるため、やしなど別の油も混ぜます。日本で百円、二百円で手に入る無添加石鹸や浴用石鹸の多くは、牛脂ベースです。日本人の感覚からすれば、獣脂石鹸は高級品でもなんでもありません。

なぜ、歴史的に牛脂ベースの石鹸が利用されたかの理由は、石鹸学のすすめに詳しく解説されています。

牛脂のソープは皮膚に対して刺激がとても少ないとされています。シェービングソープやクリームの場合、必要な特性が「細かで持続する泡立ちと、泡立ちの良さ、滑りの良さ」です。そのために原料が調整されています。

牛脂は細かな泡という特性は満たしますが、泡立ちと持続性を改善するために、材料が調整されます。

大抵のソープやクリームは工業的に製造するために、主な原料の脂肪酸として、ステアリン酸とミリスチン酸から製造されます。この2つは皮膚刺激性がないため、あえて牛脂を使用するメリットを多くのソープやクリームでは、初めから備えています。

基本的に牛脂ベースの石鹸による製造が避けられるのは、動物性のものを避ける主義のビーガンが増えているのも一因だと思います。植物ベースで作っておけば、ビーガンやイスラム教徒の人にも買ってもらえる可能性が増えます。

匂いの持続

ソープやクリームのレビューを読んでいてると、同じ製品に対し「匂いはすぐ消える」から、「半日程度香る」まで、幅広い意見が付いていることがあります。

人間の嗅覚は個人差があります。しかしながら、差がありますね。もちろん、製品が均一でないとか、保管方法がが適切でないために香りが飛んでしまったという理由もあるでしょう。

ところが、自分一人で使っていても、持続する時とすぐ消える時があります。それは、石鹸分が肌に残るか残らないかという単純な理由です。

たとえば、入浴時に剃り、シャワーで洗い流す場合、香りの強いクリームであっても、さほど持続しません。

逆に、ありがちなのが耳のうしろやエラの横らへんの石鹸を流さない場合、弱い香りのクリームであっても持続します。比較的体温が高い箇所であり、香りを立たせるために香水をつける場所でもあります。そこに香りがあるものをつけていれば、そりゃ持続します。

たまに、剃った後に流さない人もいるようです。床屋さんのようにタオルで拭きとるだけという人です。基本的に石鹸ですから、多少肌に残っても害はありませんが、洗い流すことを前提として、化学物質を加えていることもあります。可能であれば洗い流しましょう。

泡立ち

泡立つか、泡立たないか、これもレビューで意見が別れます。もちろん、製品の不品質もあるでしょう。大抵は外国産です。日本ほど、高品質で均一な製品を作っているところはないでしょう。

泡立ちを決める要素は、まず水の違いです。鉱物が多く含まれている硬い水では、石鹸は泡立ちづらくなります。日本では幸いにして、蛇口からでる水はほぼ、鉱物分が少ない軟水です。井戸水を使っているところでは硬水のこともありますが、洗剤が泡立たないとか、汚れ落ちが良くないとかありますので、家の水が硬水かどうかは、住民の方なら理解しているはずです。

もう一つ、泡立てる時の温度です。高温のお湯を使ったほうが泡立ちが良く、しかも簡単に泡立ちます。たとえば、蛇口から出る30度程度のお湯で、いつも泡立てるのに1分くらいかかっていても、ポットで沸かした熱めのお湯で泡立てると20秒かかりません。ブラシで泡立てる最初の数回転から違いが分かります。

これはクリームの節約術としても役立ちますよ。少ない量で泡立ちが良くなりますから。

ただし、ブラシの根本には熱湯をかけないでください。根本を固めている樹脂は熱湯には耐えられません。ブラシの先でかき混ぜれば温度は下がりますから、直接かけなければ、神経質になることはありません。

刃の持ち

これも評価が別れます。基本的なことですが、人により髭の硬さが異なります。硬い人は持たないですし、柔らかい人は長く持ちます。違いがあって当然です。

私がカートリッジ式のカミソリを使っていたころは、入浴時に剃っていました。十分に髭が柔らかくなっていましたので、2パスできれいに剃れ、刃の寿命はメーカが提示する期間の倍以上もっていました。さすがに長くなると切れ味の鈍りより、心配が先に立ち、交換していました。

現在は両刃のカミソリで朝剃ります。手抜きをして事前の軟化の手順をさぼり、硬いまま髭を剃ると、全く持ちません。例えば、きちんと毎朝十分に軟化させれば5回程度剃れます。しかし、刃を交換した初日に硬いまま剃ると、その後髭剃り前に十分に軟化させても、3日目には刃が鈍り剃りづらくなります。

また、替刃には当たり外れがあります。複数枚刃の場合は、確率的に均されてさほど違いは感じませんが、一枚だけ利用する両刃カミソリでは、善し悪しがダイレクトに分かります。

ですから、「何日ごとに交換」と決めるよりは、刃のあたり方や剃り味の低下を見極めて、交換するほうが良いでしょう。

シルバーティップが最高

好みの問題、経済性の問題です。私は、しっかりとブラシでこすっている感覚が好きなので豚毛が好きです。さすがに購入してすぐには使いません。数週間、毎日泡立てて、柔らかくしてから利用します。(実際に使いはじめるまでの手間のことを、ブレークインと言います。慣らしとか仕込みという意味です。)

しかし、Semogueの豚毛ブラシは、そこらの穴熊よりも柔らかく、保水力もあるという評判です。必ずしも豚毛だから、ブレークインが必要だとか、硬いとかとも言い切れません。

穴熊の場合、ブラシはいろいろなグレードがあります。ブラシのグレードははっきりと定義されているわけでありません。ブラシメーカーにより、呼び方やラインナップが異なります。それでも、シルバーティップは高級なグレードです。

よく言われるのは、「シルバーティップはお腹の部分で、歩く時に地面にこすれるため先端が細くなり、ブラシとして最高」と言われます。もっと幅広く、「穴熊なお腹の部分で…」と言われることも多いようです。

ところが、シルバーティップは首周りの一部の柔らかい毛のことです。擦れて先端が細くなるわけではありません。

基本的に穴熊ブラシのグレードは、柔らかさと吸水性と関連しています。安い穴熊ブラシは「固く、吸水性が低い」、高級になるにつれ「柔らかく、吸水性が高く」なります。

どの程度のグレードなのかを見分けるのに、吸水させ、泡立てて、洗い流し、水気を拭きとった後に、ブラシがどの程度広がるかで見分ける方法もあります。シルバーティップクラスのブラシは花が咲いたように大きく広がります。低いグレードのブラシでは、少ししか開きません。(この現象を、まさに花が咲くことになぞってブルーミングと言います。花咲くという意味です。)

でも、実際に何が最高のブラシなのかは、どこに目的をおくかで決まります。もし、素早く泡立てるのを目的とするなら、化繊のブラシに水をたっぷり含ませてソープを泡立てる方法があります。化繊ブラシは一般に柔らかいのですが、毛が密集しており、泡立ちが早くなります。

硬めのブラシであることを利用して、豚毛を使えば、ブラシに必要なソープを取る(ローディング)のは簡単ですので、適切に含ませた水分で、適量のローディングを素早く行うのに向いています。

3パスまで厚い泡を利用したくて、それをブラシに保持したいのであれば、大きな穴熊のブラシが必要でしょう。私のように、1パスは厚く、2パス、3パスと段々薄い泡を好むのであれば、大きすぎるブラシは非経済です。

顔、手、ボウルのどこで泡立てるのか、クリーム、ソープのどちらを使うのか、趣味として贅沢さを楽しむのか、逆に実用本位で経済的に行うのか、ブラシの肌触りは柔らかいほうが好きなのか、硬いほうが好みなのかなど、自分にあったものが本当の「最高」なブラシです。

ビデオ紹介

最後は、ビデオ紹介です。

イギリスの床屋さんが、オールドスクール(昔ながらの)シェービング方法を紹介しています。とはいえ、床屋さんによりいろいろバリエーションはあります。この型の場合、2パス目をシェービングオイルで剃っています。

皮膚をつまんで張る方法を多用しています。

続いてアメリカ、ペンシルバニア床屋さんですがシェービングソープはプロラソ、剃刀にフェザーのアーティストクラブ、しかも和剃刀バージョンですね。

タオルの載せ方に工夫があります。髭の硬い部分に二重にかかるようにしています。

歳を取り、しわのある顧客を剃っています。

今回は国際色豊かに行きましょう。トルコの床屋さんです。ただしアイルランドで開店しているようです。日本にもある、皮膚の乾燥防止に役立つスチーマーを使用しています。ブラシの使い方は、イタリアンぽいです。

反りのスピードは早いです。皮膚をつまみ、その山の頂点を剃るテクニックを見せてくれます。確かに、張っても剃りづらい部分がありますので、良い方法ですね。ただし、私達素人が行うときは、力を入れすぎ、カミソリ負けしないように注意です。

鼻毛と耳毛は剃るのではなく、ワックス脱毛です。耳の産毛はトルコ伝統の焼ききる方法です。泥パック、更にトルコ伝統の紐を使った産毛脱毛と、盛り沢山です。


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: