間接灸を卒業して、直接灸(いわゆる点灸)にトライしたい人へ、実践方法のアドバイスです。直接灸のほうがお金と時間を節約できます。
直接灸と間接灸
お灸を大きく2つに分けると、直接灸と間接灸にわけられます。肌に直接もぐさを乗せるものを直接灸と呼びます。皮膚ともぐさの間に空間を開けたり、しょうがなど別のものを挟む方法を間接灸と言います。今、薬局で手に入るお灸製品はほとんどが間接灸です。
間接灸はもぐさを多く使用するため、かなりの煙が発生します。マンションなどで煙感知式の報知機などがある場合、誤報の危険性があります。一方、直接灸に使用するもぐさはとても少ないため、もぐさを燃やすことによる煙は少なくて済みます。
時間も間接灸はじわじわもぐさを多く燃やしながら、じっくり温めるため時間がかかりますが、直接灸は着火から一つを燃やすまで10秒かかりません。その代わりに、必要に応じ何度か繰り返しお灸をしますが、それでも通常は間接灸を一つ行うよりとても早くすえることができます。
直接灸は肌に直接置くため、もぐさを焼き切るとやけどになります。やけどと燃やす際に生じるタールや燃えかすの炭の色が肌に残ります。それを灸痕と言います。
見た目を気にする人が多いため、最後まで焼き切る方法は最近あまり多用されないようです。直接灸でも8割燃えたところで取ってしまう八分灸や、暖かさを感じた時点で取り去る知熱灸が使われることが多いようです。
直接灸最大のメリットは、なんと言ってもコストが安いことです。製品として生産される間接灸商品より、かなり安く実践できます。間接灸も直接もぐさを購入し、工夫すれば安くできるでしょうが、手間がかかります。鍼灸院を営業している方でない限り、間接灸用のもぐさをわざわざ購入し、使用するメリットは少ないかと思います。
お手軽にお灸をしたい場合は、薬局などで間接灸用製品を購入し利用する、安く実践する場合は直接灸用のもぐさを購入し、目的に合わせて燃やし切ったり、八分灸を行ったりと活用するのがよいでしょう。
ツボ刺激の基本
お灸はもぐさの熱でツボを刺激し、健康効果を狙います。それにはさほど高温は必要なく、40度で「刺激」としては十分です。(具体的な温度の参照元を失念しています。見つけ直したら、参照として貼り付けておきます。ヒートショックプロテインが生成され、これが役立つという解説をしているところは多いのですが、その大本の資料です。)
ですから、間接灸で温めるだけで効果があります。もしくは、40度以上に温めた器具で皮膚を刺激するだけでも良いのです。多くの人がタバコを吸っていた時代は、タバコの火で温めるタバコ灸という手法もありました。
しかし、あえてもぐさを使って灸をするのは、もぐさに含まれるよもぎの揮発成分が皮膚に浸透するメリットがあるという意見があります。また、燃焼時に発生するタール分も刺激に関与するという意見もあります。これらについては、実証されているわけでないようです。
肌に灸痕が残ってしまうのですが、焼き切る方法が一番効果があり、その効果も持続すると言われています。理由として、皮膚に50度程度の熱を与えることで、筋肉まで刺激を与えることができるためです。刺激量が多いわけです。
さらに効果の持続性が期待できます。灸痕とはやけどです。やけどは約一週間から10日ほどで治癒しますが、そのやけどがツボを持続的に刺激し、治療効果が長続きします。治癒過程の血液の変化や皮膚再生の過程に起こる現象も、刺激になるようです。
こうした知識を持っていれば、特に効果が欲しい場合や、効果を長続きさせたい場合で、跡がしばらく残っても良いのであれば、焼き切る方法を選択できます。逆に、健康管理などで毎日朝晩お灸をすえる場合は、八分灸や知熱灸で跡を残さずに行っても十分な効果が得られると判断できます。
ツボを刺激する以外の方法として、皮膚炎やしもやけなどの患部へ直接お灸をすえる方法があります。この場合に焼き切るのが良いのか、八分や知熱程度にしておくのが良いのか、指針は存在していないようです。ただ、余計な刺激で悪化させないように、やけどを残さない八分灸や知熱灸を行うか、焼き切るのであれば極めて小さいお灸を使用するのが、よいかと思います。かゆみはお灸をすえた後、2時間程度で消え去ります。
また、ほくろの除去にも使用できますが、この場合は焼き切ります。やけどによりメラニン色素を作っている組織を殺す方法です。やけどの跡が残ります。それがきれいに治れば、ほくろはなくなるわけです。場合によってはやけどの跡がひどく残ってしまうかもしれません。手術により切り取るにせよ、どんな方法でもリスクはあるのです。お灸で焼き切るのであれば、やけどの跡が残るリスクは、覚悟をしておくべきです。もちろん、自己責任です。
温度の調整
基本的に熱さを感じる程度の温度で良いわけです。皮膚の表面温度が50度程度になるくらいが理想的です。
もぐさを燃やすとその温度は500度や、1000度にも達すると言われます。それが直接肌に触れれば大やけどするでしょう。しかし実際には、燃やしきってもそれほどの大やけどになりません。(たとえば溶接で出る溶けた鉄が皮膚に触れるなど、非常に高温でやけどをすると神経も焼き切るため、痛みを感じないこともあります。)
その秘密は燃やしたもぐさが高温であっても、そのもぐさ自体が非常に軽く、かつ少量であるところにあります。皮膚は金属などに比べれば決して熱伝導率は高いものではないため熱が滞りやすいのですが、燃やすことで発生した熱は空中に放熱されたり、皮膚に伝わったりします。皮膚に伝わった分だけ、燃えているもぐさの温度は下がります。点灸をするときは皮膚表面に伝わる熱が50度程度になるように、うまく調整するわけです。(わかりやすい例が、サウナです。流れが少なく、乾いた100度の空気ではやけどになりませんが、100度のお湯に入ればやけどします。空気は質量が小さいため、高温であっても皮膚に与える熱量はさほど多くありません。汗も蒸発し続け、皮膚の温度を下げます。それに比べるとお湯は質量が大きいため、高温であれば持っているエネルギー量も大きくなります。皮膚へ触れれば、与える熱量が大きく、結果やけどになるわけです。)
また、もぐさを皮膚上へ固定するため、皮膚に水や軟膏を塗るのですが、これが膜となりガードすることも温度を下げる一因です。(後述しますが、水分は逆に上げる可能性もあります。)
もぐさを大きくすれば、燃える量が多くなり、発生する熱量も大きくなります。もぐさを小さくすれば、逆に発生する熱量も少なくなります。
また、同じ大きさであっても、成形する時に強く圧縮すると燃える材料が多くなるため、高温になります。できるだけ弱い力で成形すると、同じ大きさでも低くなります。
基本的にもぐさの大きさと固める強さを変化させることで、皮膚に与える熱の刺激を調整します。これが基本の知識になります。(自分の腕などで実験するとよくわかります。ただ、熱いですのであまりおすすめしません。プロを目指す人達は学校で試してみるようです。)
もぐさをひねる
もぐさを成形することを「ひねる」と言います。Youtubeなどで動画を検索してもらえば、プロになろうとしている方々向けのやり方が説明されています。
左手に大豆大のもぐさを取り、指で転がしながら細くし、右手の親指と人差し指で必要な大きさに切り取り、皮膚の上に置きます。ただ、この方法はプロが患者さんに行う方法です。私達素人が自分に行うために、この方法を習得しなくてなならないというわけではありません。
もし、この方法ができないとお灸をしてはいけないということであれば、お灸は廃れるでしょう。より多くの人に親しんでもらうには、より手軽で簡単な方法が必要です。
また私の場合、指先が荒れているため薬やワセリンを塗っているのですが、指紋が浅くなっており、かつ表面が乾燥がちのためもぐさが滑り、うまく形にまとめられません。
そこで、コルク素材の板を利用しています。専用の板もあるのですが、2000円位します。単なるコルク板にこの値段は馬鹿らしいです。
私が使っているのは、100円ショップで購入できるコースターです。小型の円形のもので表面は滑らかな方が使いやすいです。(コルクは表面が荒いのが特徴ですが、その中でも細かくて滑らかなもののほうが、もぐさの形を整えるためには使いやすいです。あまり粗い表面だともぐさが引っかかり、まとめにくいです。)
コースター表面に小豆や大豆大のもぐさを置き、もう一枚のコースターではさみ、もぐさを転がしながら、細長い棒状に成形します。この時に一度に圧力をかけるのではなく、長めのストロークを繰り返し、最低限の力で伸ばすようにします。(力を加えるて固めると、燃焼時に高温になることを思い出してください。高温のお灸を利用したいときは強めに固めますが、通常は低い温度のほうが好ましいため、優しく弱い力でまとめます。)
できるだけ均一な太さに成形します。とは言え最初は両はじが細くなり、中央が太くなりがちです。円形のコースターをおすすめしたのは、太い部分だけにコースターをあてて転がし、修正するのがやりやすいからです。(四角でも角の部分を利用すればできますが、持ちづらいためです。実際に試してみるとわかりますが、そのためには円形と四角形の2つを購入しなくてはなりませんね。)
この時、もぐさの品質が出来上がりの細さに関係します。高品質なもぐさは1.5ミリ弱まで細くできます。(指先で更に細くできます。)中級クラスのもぐさでは2ミリ程度までにすることができますが、繊維が短いためほぐれやすい状態です。より品質が悪いもぐさでは、2ミリまで細くできません。無理に細くしようとするとほぐれて切れてしまいます。
参照:点灸に使用する艾の品質
そのため、基本的には良い品質のもぐさを使ったほうが、簡単に思いのまま整形できます。燃焼温度も低い傾向がありますので、イボやほくろを焼き切るという使い方でなければ、高級品のほうが使いやすいでしょう。(プロは当然、直接灸には最上級品を使っているようです。ただ、鍼に付けるお灸は直接灸ではないので、プロでも不純物の多い間接灸用のもぐさを使います。)
では、品質の悪いものは使えないでしょうか。そうとも言い切れません。
成形しづらいのですから、どうしても大きめになってしまいます。燃焼温度も高めです。ならば、燃え尽きる前に取り去る八分灸、知熱灸として十分利用できます。
プロは左手親指と人差し指で細くしながら、右手で必要な分をちぎり、次々皮膚の上に置いて点火します。私達も予め紐状にしておいたもぐさを使用し、この方法で比較的スピーディーにお灸ができます。
しかし、プロではなく、スピードが要求されない私達素人ならではの方法も取れます。場合により、「もうちょっと、小さくひねりたい、あまり熱くしたくない」こともあるでしょう。その場合、紐状のもぐさをそのままちぎるのではなく、ゆっくりと引っ張りつつ、多少ほぐしながら細く形成することができます。品質の悪いもぐさは繊維が短く、かつ不純物によりちぎれやすいのですが、時間を少しかければ細く小さくできます。まれにガッチリと絡まって、ほぐれない部分もあるのですが、その場合はその部分は捨てて、伸ばしやすいところで小さく軽くひねってください。
参照先を見ていただければわかりますが、量をある程度購入するのであれば、品質の高いもぐさもさほど値段が張るものではありません。本格的に行うのであれば、良い品質のもぐさを購入したほうが、簡単だということはアドバイスできます。
形
基本的には円錐形にまとめます。つまり片方の先端が細くなるように形成します。「木綿糸」程度の太さ(実寸が示されている説明は見つけられません)にひねる「糸状球」では、細い紐上のまま皮膚に立てます。
なぜ細くするのか、理由の説明は見たことがありません。多分推測するに、着火しやすくするためでしょう。太い部分で着火しようとすると、細い部分で着火するより熱が必要です。通常お灸は線香で着火しますが、実際に細い部分と太い部分で着火しようと比べてみれば、細いほうが短い時間で着火できるのがわかります。
ただし、細い部分をあまりにも軽く成形すると、繊維がスカスカで繋がっている状態になり、下の方まで燃えていかず、途中で消えてしまうこともあります。
着火する先端部分はある程度しっかりとまとめてもよいかと思います。それができるほど人間の指の感覚は鋭いのです。
直接灸向けに形成するもぐさの基本的な大きさの目安は米粒の大きさです。米粒大、半米粒大という表現が使われます。しかし米の大きさも様々です。これは実寸が書かれている資料を見かけたことがありました。米粒大は底辺が2.5ミリ、高さが5ミリです。半米粒大は底辺が1.25ミリ、硬さが2.5ミリです。しかし、これはあまり当てにしないほうが良いでしょう。
米粒大は良いとしても、このサイズの半米粒大では小さすぎ、着火するのが面倒です。皮膚に線香が近くなりすぎます。半米粒大でも着火の手間と安全性を考えるのであれば、5ミリほどの高さはほしいところです。
私達素人が紐状のもぐさを使う場合、必要な量をつまみとった後に、再度目的の大きさ、硬さに成形しなおしても良いわけです。プロになろうとする人は、一定時間に決まった数のお灸をすえる試験があるため、速さも習得する必要があります。私達素人はスピードは重要ではありませんから、いろいろと工夫しましょう。特に自分にお灸を行う場合、両手ですえる必要があります。利き手と反対の手でつまみとったもぐさを形成する必要が起きます。これはプロには必要のない技術です。
糸状灸については、太さの参考としてあげられている「木綿糸」には、バラエティーがありすぎて、何の目安にもなりません。指でひねられる最小の大きさと理解するのが良いでしょう。もしくはもぐさはある程度自然の大きさの塊になっていますので、その自然に絡まっている塊の束一つか二つが繋がっている状態であると考えましょう。たぶん、通常1ミリ以下の太さです。
基本的に糸状灸は燃やし切るようです。八分灸や知熱灸のような、途中で消すためのお灸ではないようです。非常に細いお灸で、最低限度の熱刺激を与える目的のものだと、理解しましょう。品質の高いもぐさでなければ、糸状にまで細くするのは難しいです。皮膚に立てて、燃やしきっても、さほど熱く感じません。感じても一瞬です。
皮膚炎の治療のために糸状灸を八分灸として使用しているビデオがYoutubeありましたが、すえているもぐさは結構太めでした。半米粒大と言ったほうが良いサイズでした。
最後に、底面を平らに整えます。慣れてくると底面を整えなくても、肌に乗せられるようになりますが、初めのうちは底面を平らに整えたほうが、すえやすいです。
固定
形成したもぐさを皮膚の上に固定するには水を使います。プロではやけどにも効く軟膏を使うこともあるようです。私達素人が初めて挑戦するのであれば、水道水で十分です。
更に綿を入れ、少々の水分を含ませて使用するのがプロ的な方法です。素人向けのセットで普通のスポンジを用意しているものもありますが、天然の海綿でないと上部まで水を吸い上げないため、使いづらいかと思います。
ただ、綿やスポンジは適切な水分を指先に付けるために使用するだけなので、折りたたんだテッシュペーパーでも良いわけです。
私は、縁のある浅い皿に水を少し入れるだけです。指先についた水分が多すぎる場合は、皿の縁の乾いた立ち上がっている部分をチョンチョンと叩いて、余分な水分を落とします。いろいろな方法を試した結果、これが一番やりやすかったからです。
水分で濡らした手で、お灸をすえる場所を軽く湿らせます。水滴ができたり、光が反射したりするほど付ける必要はありません。逆に多すぎます。
水分が多すぎると、もぐさが湿り、最後まで燃え尽きません。水の温度により、刺激する部分が冷えてしまい、温感を感じづらくなる、もしくは逆に水分のほうが熱を伝えやすいため熱く感じたりします。また、もぐさ(木材なども同じですが)は、水分を含んでいると高温で燃焼します。水が多すぎれば消えますが、全体が湿ってしまうと、燃焼温度が上がることを覚えておきましょう。
私の場合、ちょっと多めに肌に水分を乗せ、それを周辺にこすって移動させることで、すえる場所を適度な湿り気に調節します。反射はしないが、うっすらと湿っているのが皮膚の感覚で感じられる程度です。場所により水分を弾く部分では、強めにしばらく押し付け、肌に水分を吸わせます。
全体が軽く、皮膚との接地面が狭くなる糸状灸や半米粒大のお灸を皮膚に乗せるのは、より大きい米粒大のものより面倒です。水分が少なすぎると乗らなかったり、乗っても線香で着火する時に、線香へくっついてしまいます。よりシビアな水分コントロールが必要です。
あと、特に男性の場合、体毛があると非常に乗せづらくなります。お灸をすえるツボの部分ははさみでカットしておくか、剃っておくほうが良いでしょう。事前に処理できない場合は、一度多めの水分を塗り、水分で柔らかくなった毛をかき分けておき、対象部分だけこすって水分量を調整する方法がとれます。しかし、何度かすえる予定であれば、毛を処理しておいたほうが、何倍も楽にすえられます。
すえ方
どちらかの手の親指と人差し指で形成したもぐさを保持し、つぼを湿らせたなら、肌の上に形成したもぐさをすえます。親指と人差し指をすえる場所の真上から肌の上に下ろし、指先が軽く肌を押す程度の強さで触れたら、そっと指を広げます。
人間の指、時に人差し指は繊細な動きが可能です。親指と人差し指のつまむ角度を調整し、肌に触れる前にもぐさの底面部分が親指と人差し指の先端を結ぶ線上に来るようにしましょう。そしてその角度を保ったまま、肌に触れ、ちょっと押すくらいの強さで触れれば、もぐさの底の部分が皮膚にピッタリと接触します。
肌を湿らせた水分量が適当であれば、もぐさがピッタリと張り付き、立ちます。水分が多すぎると、倒れてしまいます。(もしくは、着火しても途中で火が消えます)少なすぎれば指についたままか、肌の上を室内の風に乗って移動してしまうでしょう。
一度プロが実践しているビデオをYoutubeで見つけて、参考にすれば、簡単にやり方を理解できます。
線香
少々高いですが、専門の線香があります。仏事に使用する線香よりかなり太く、煙はやや少なめです。燃焼速度は一般的な線香とあまり大差ありません。太くて折れづらいのが利点です。
昔から一般家庭では普通の線香でもぐさに着火していたので、どうしても必要だということではありません。線香が折れてお客さんに余計なやけどを作っては大事ですから、プロの人は専用の折れづらい線香を使っているわけです。太い線香のほうが「火力が強い」ので、熱を与えて着火するという点でも有利です。
仏具用の線香であろうと、香りを楽しむ線香であろうとどちらでも構いません。もぐさに火を着けられればよいのです。(実際、区別はありません。仏事に使用する線香は良い香りを届けて供養するという意味があるため、色や香り、形状に本来決まりがあるわけでありません。)
ただ気がかりなのは、線香を燃やした煙について、害があるのかないのかはっきりした研究成果がないことです。中国産の線香の煙に有害物質が含まれているのが検出されたことはあります。日本の製品については解析結果を見たことがありません。
お灸で健康になろうとしているのに、有害な煙を吸っては意味がありません。ですから、お灸に関しては日本のメーカーの線香をとりあえず使用しておくのが良いかなと思います。
最近父親が他界したもので、ご仏前としていただいた線香が私の手元にたくさんあります。毎日香が多いのですが、お休養として鼻に近いところで使用するには香りがきついため、ちょっと香りの良い、別の線香を使っています。(香典返しのショップがカタログと一緒に置いていった物です。)
手持ちの線香がなくなったら、煙と香りの少ない線香を購入して、利用予定です。(供養にならないので香りがないものは当然ですが、煙の少ないタイプの線香も仏事には本来向いていません。お坊さんによっては使っていると叱られることがあります。お灸の着火専用として購入するつもりです。)
お灸に火を付ける直前に、軽く灰皿を線香で叩き、先端の灰を落とします。灰は燃焼部分より温度が低いため、もぐさに火が付きません。着火する前に、軽く灰皿を叩き、線香の灰を落とす癖をつけましょう。
消火・撤去
八分灸は燃えている状況を目で確認し、8割燃えたところでお灸を取り去ります。通常、指先でつまんで灰皿等へ捨てます。思い切ってやれば、熱くありません。最初は、やけどするのではないかという恐怖でためらいがちですが、何度かやってみれば熱くないことがわかり、簡単に取り除けます。
コツはためらいなく、勢い良くつまむことです。指先でぎゅっとつまむことで、酸素の供給を絶ち、炎の温度を指先で冷ますことで、火は瞬時に消えます。もぐさ自体は小さな炎でさほどエネルギーを持っていないため、一気につまんでしまえば、やけどするほどの皮膚温度にならないのです。
さすがに、品質の悪いもぐさを米粒大にひねったものをつまんで取り除くと、指先に暖かさを感じることはあります。大きいですし、質の悪いもぐさは燃焼温度が高いからです。ですが、半米粒大であれば、ほとんど熱感を感じることはありません。
半米粒大くらいになると、底面の直径が1.25ミリから2ミリ弱程度ですから、小さすぎてつまむのが難しいときもあります。そんなときは一気に上から指で押しつぶして火を消すこともあります。ただ、この場合は指先に熱さを感じることはありませんが、すえている皮膚の方は以前から連続して熱を与えられているわけですから、一瞬熱さを感じることはあります。
もぐさだけを取り除くと言うよりは、多少皮膚をつまむくらいの感じで行ったほうが確実です。小さいもぐさでも取り除けます。
八分灸は目で確認して取り除く方法でした。もう一つの知熱灸は肌で暖かい感じを感じた瞬間に、つまんで取り除く方法です。
温かいと感じたら、即座に取り除きます。取り除くまでに「熱い」くらいになります。一瞬「熱い」と感じる程度です。
ためらい、一瞬取り除くのが遅れると、「あちちち」と言うくらいに熱くなります。焼き切るのと大差がないほどの熱さになります。ですから、火を着けたらすぐに取り除けるように指を近くで準備しておき、温感を感じた瞬間にためらいなく取り除くのがコツです。
私は知熱灸がメインです。皮膚が冷えている時(本来、そこまで冷えている場合は他の手段で温めてからお灸をしたほうがよいのですが)は、暖かさを感じずに、最後まで焼き切ることもあります。現在は体調管理や体質の変化を促すためのお灸を行っています。朝晩行いますが、暖かさを感じる程度で良いということですので、温感を感じたなら一荘(一つ)で止めます。温感を感じにくい場所では、感じるまで複数回すえます。特に足の裏の指先の根本は感じにくいため、米粒大のお灸を何回かすえることになります。それ以外のツボは半米粒大か糸状灸を一荘で温感を感じますので、それ以上繰り返しません。
灰皿
タバコを吸う人が減るにつれ、灰皿を用意してある家庭は減っていると思います。もしあれば、それをご利用ください。
燃えない容器であれば何でも良いのですが、小さな蓋付きの瓶がよいかと思います。100円ショップで販売していますし、お惣菜などの空き瓶でもかまいません。
ブリキか鉄の蓋を灰皿にして、お灸をすえ終えたら灰などを瓶の中に入れ、蓋をきっちりします。可燃物が残っており、万が一発火しても、蓋をした瓶の中であれば酸素がなくなり次第、鎮火します。
間違ってもすえ終えた直後の灰を他の可燃物と混ぜないことです。何らかの原因で発火することがあります。瓶の中に数時間放置しておいた灰であれば、まず発火しません。安全対策をきちんとしましょう。
昔はお灸の火の不始末で火事が起きたことが、数年に一度報道されていたものです。きちんと取り扱えば、火事を出すことはありません。
複数荘のすえ方
お灸にはいくつもの流儀があるようです。大抵の流儀では、複数荘すえるのが基本です。「陰陽」の影響を受けるため奇数回数すえるという考えもありますが、これはあまり現代的ではありません。
最後まで燃やし切る方法の場合、前回の燃えかすをそのまま皮膚に押し付け、その上に新しくもぐさを置く方法が多いようです。燃えた炭に含まれる成分が皮膚に浸透して有効に働くという考えのようです。逆にその都度燃えかすを取り去る方法を採用する場合は、元の位置から外れずに正確な場所へすえることができるという利点を重要視しているようです。
流儀
鍼灸やマッサージなど、ツボや体の気の流れをもとにした理論で行う施術方法には、いくつもの流派があります。
対処的に効果的なツボを中心に即座に効果を出す方法に主眼を置いたり、逆に根本的な変化を促すため体質を治すために時間をかけることを前提とした流派もあります。日本のお灸は対処的、中国の流れをくむお灸は根本的のようです。
どれが自分に合うのかわかりません。ですから、あまり最初から期待せずに行ってみて、実際に効果があった流派を中心に取り入れれば良いでしょう。
いろいろな流派のものを取り入れ、たくさんのツボを刺激してしまうのは止めましょう。また、最初から何荘もすえることも避けましょう。逆に体調が乱れます。お灸の場合、「灸あたり」と呼びます。
私はツボは以下のように考えています。
本来体は健康状態へ戻すように働いています。しかし時々、その仕組みが狂ってしまうことがあります。たとえば、既に治っているのに危険信号の痛みだけが残ってしまったり、逆に悪い所を知らせる痛みがあるのに、治癒力が働かなかったりします。体に水分が多すぎるのに、排泄機能が動かなかったり、足りないのに排泄し続けたりします。治癒力を働かせる場所の優先順位がおかしいこともあるでしょう。
そんな時に、センサーをリセットしたり、治癒力を働かせるスイッチを入れたり、不必要な機能のスイッチを切ったり、優先的に直したい部分のスイッチを入れるのがツボだと考えてください。もともと、体全体の治癒力は一定です。治癒力を一時的に上げるツボもあるでしょうが、体の他の機能が代わりに抑制されるわけです。「今、優先したい機能を選択する」のがツボへの刺激です。
お灸をすえすぎてスイッチを働かせ過ぎたりすれば、代わりに他の部分の動作が抑制されたり、活発に動作している周りの仕組みに乱れが発生します。あちらこちらのスイッチを一度に入り切りしてしまえば、調和しながら働いていた体全体の動作が一時的に乱れてしまいます。その結果、一時的に体調が乱れます。
ですから、できるだけ自分の現状にあっているツボを選択し、数少なく刺激するのが良いのです。同じ症状でも流派により、推薦されているツボが異なることがあります。だからといって、それらを全部押して良い結果が得られるわけではありません。
とりあえず、一つの流派に従ってやってみる。効果がなければ別の流派でやってみる。これが比較的安全で、賢い方法です。効果がないのに続けてもしょうがありません。効果がでているのに変えるのも馬鹿な話です。
うまくひねれない場合
もぐさをひねり、うまく形成できない方は、無理にもぐさを使わずとも、ツボをタバコや線香で温めましょう。皮膚に近づけ、暖かさ・熱さを感じたら離します。
実のところ、昔から行われていた方法です。適切に加熱すればよいのですから。