シェービングブラシの柔らかさ、固さ

シェービングブラシの柔らかさ、固さについて、一般的なことを書いておきます。

毛の材料

シェービングブラシの毛には、アナグマ、豚、馬、狸、ナイロンなどの人工毛が使用されます。

硬い順にリストすると

  • 豚毛
  • アナグマ

です。馬や狸については思い出せません。確か馬が固く、狸が柔らかかったと思いますが、我々の手元に届くまでには、加工されています。そうした加工により固さは異なるでしょう。

ただ、シェービングブラシには固さも求められます。柔らかいだけであると泡立てるために苦労します。肌へのマッサージ効果や毛穴の洗浄効果を求めるのであれば、なおさらです。

アナグマが賞賛されるのは適当な固さ、つまり「コシ」を持ちつつ、毛先が柔らかいからです。アナグマの毛自身も英語で「剛毛(bristle)」と表現される通り、硬い毛です。衣服に利用されるような柔らかい毛ではありません。(初めてアナグマブラシを購入した人の勘違いコメントをよく見かけます。)

アナグマの毛もクラスが低い毛では、ただ固いだけです。豚毛についてはクラス分けは一般的に行われておらず、確か一社だけ行っていたかと記憶しています。豚毛は一般的にアナグマより固いのですが、使用を続けていると全体が柔らかくなります。特に毛先はバラけてきて、枝毛になり、シェービングに適するようになります。「アナグマは最初からよくて、豚毛は使っていくうちに良くなる」と表現されます。

また、豚毛も加工により、本来の性質から変わっています。豚毛は毛先が枝毛ですが、中国で加工時に長時間煮るため、枝毛が落ちたり、キューティクルがなくなったりします。

人工毛は、原料や細さで異なります。シェービングブラシ向けに製造されたものは、アナグマ毛の色合いに着色したものが多く、先端は細くなっています。固さ、コシについても様々です。原料や毛の太さで調整できますので、自然毛に似せることも、より固くも、柔らかくもできます。

ですが、キューティクルがなく、疎水性がありますからつるつるする感じがあります。水分も多く保持できません。固さを自然毛に合わせても、使用感は異なります。抵抗が少なくつるつるする感覚は、柔らかさを感じさせますので、全く同じ固さや弾力の人工毛と自然毛があれば、多分人工毛のほうが柔らかいと錯覚するでしょう。

毛の長さ

ブラシの毛が長ければ、柔らかく感じます。短ければ、固く感じます。何か細いもの、例えば針金や爪楊枝などで試してもらえば、すぐに理解できます。短くなるほど折りづらくなります。

特にアナグマブラシに関しては、水分を含んだ後に乾かすと花が開くように広がります。これをブルーム(開花する)と言いますが、もちろん長いほど変形しやすいのですから、大きく花開きます。

品質

アナグマの毛はクラス分けされています。アナグマは何もシェービングブラシだけに使用されるわけでなく、様々なブラシで使用されます。ただ、さすがにシルバーティップが最高級だとしているのはシェービングブラシの世界だけのようです。

アナグマは住んでいる箇所により毛色が異なりますので、ブラシの色も異なります。最近、アリババのサイトでいろいろ調べ、大きな工場を2つ見つけたのですが、シルバーティップの色が片方は白く、片方は茶色でした。工場ではっきりと色が分かれているのが解せないところです。

真実かどうかはわかりませんが、中国のアナグマは「害獣駆除」、もしくは食用として狩りで集められたものということになっています。多分食用として飼育される分には余り問題にならないとは思いますが、毛皮と同様に毛を取るためだけに飼育されているとなると、動物保護団体からの反発が起きます。

中国は広いですから、毛色が茶と白のアナグマがいても、もしくは夏毛と冬毛で色が異なっているのであれば、問題ありませんが、もし毛のためだけにヨーロッパ種を飼育しており、それにより毛色が真っ白なのであれば、後々問題になるでしょう。

色の薄い部分が真っ白のブラシを製造している工場では、毛先を漂白しているのであれば、問題はないと思います。実際に、色の濃い部分を残して漂白できるかどうかは知りません。

他の条件が同一のアナグマブラシであれば、クラスが上の柔らかい毛を使ったものほど、大きくブルームする傾向があります。一般にシルバーティップが上質だと言われるのは、先端が柔らかく、水分を多く吸収するからです。

アナグマに使用されている毛の品質を表すには、ナチュラル、スーパー、ファイン、ファインネスト、ファーストクラス、シルバーティップなど色々ありますが、それらはブラシメーカーやブランドで決めている呼び方であり、統一された規格が存在するわけでありません。

シルバーティップの名前が有名になりすぎ、中国の販売店レベルでは、外見の色合いからほとんどが「シルバーティップ」と呼ばれていますが、本来は首周りの柔らかい毛のみに使われていた名称らしいです。(腹の部分という情報もあります。)実際、アナグマ毛のクラスは柔らかさで分けられているようです。(取る場所により固さは決まります。まあ、牛肉や豚肉の名称のようなものです。)そのため、同じブランドから販売されているブラシでは、クラスが上のアナグマブラシのほうが、一般には柔らかくなっています。

中国のノット(ブラシの毛の部分)メーカーから出荷される時点では、毛の品質による値段の違いは一つ数ドル程度の違いです。クラスが上のノットには、高級な(そう見える)ハンドルが付けられます。安いノットにはそれなりのハンドルが付けられます。そうしてブラシは数ドルから数百ドルという値段の幅で販売されます。

もちろん、わずかに中国以外にもアナグマのノットを作成しているメーカーは残っているようです。鳥獣保護の観点から欧米からはアナグマ毛が手に入らないため、ほとんど中国産の毛が原料です。

密度

一般的に工業製品は「密度」が濃ければ「上質」なのですが、ブラシに関しては密度は柔らかさと関係します。ギチギチに詰め込めば、ブラシは固めの感触になります。スカスカにすれば柔らかい感触となります。

アナグマの安い製品は、肌触りを柔らかく錯覚させるため、硬い部分の毛をまばらに毛がまとめられています。中国サイトやアマゾン、その他の通信サイトで購入するときにでも、安いブラシの写真をよく見てみると分かります。

ただし、ノットの大きさには注意してください。ノットの大きさが少し変わっただけで、写真の印象も変化します。

水分を吸った後のブルームも、ギチギチに詰め込んでいるブラシのほうが大きく花咲きます。スカスカであれば、小さく広がります。

シェイプ

ブラシの形状によっても、固さは変化します。ブラシの形を細かく分けると色々と分類できるのでしょうが、穴熊の場合は大きく2つに別れます。独仏系のバルブ(電球)型と英型のファン(扇)型です。

バルブ型を肌に対して90度の角度でそのまま当てれば、中央部が一番強くあたります。中央部は周辺を毛で囲まれています。その分のプレッシャーを受けていますので、曲がりづらくなっています。曲がりづらければ、固く感じてしまいます。

ファン型の場合、中央から端に向けて毛先が広がります。毛の側面部分が多く肌にあたることになり、自由に動ける分が多い分だけ、バルブ型の中心ほど固定しようとする力はかかっていません。力が分散する分だけ、柔らかく肌にあたります。

ファン型よりも更に肌にあたる部分を平面にしたブラシもあり、「毛先を利用しつつ、柔らかさも追求」できます。

豚毛のシェービングブラシは、ほとんど同じような形をしています。そうした豚毛のブラシは、指先で根本を持ち、ブラシの形を変形させることで、固さを和らげ、適当な圧力でブラッシングできます。イタリヤの床屋さんの動画をYoutubeなどで参照してください。

吸水時間

毎日使用するブラシでは、アナグマは数分、豚毛は5分ほどぬるま湯に付け、吸水させます。

特に豚毛では、吸水させなければ硬め、十分に吸水させ柔らかめと、好みに合わせて調整できます。

ブラシのコレクションを始めて複数使用するようになり、前回の使用から日数の経っている、完全に根本まで乾いたブラシを利用する際は、事前により長時間水に付け、完全に吸水させてから使用します。柔らかさを取り戻し、脱毛を防ぐことができます。

泡の量

同じブラシでも、節約して使用する場合は固く、贅沢にたっぷりと泡を含ませる場合では、感じる固さが異なります。

節約する場合は、ブラシの直感が直接伝わりやすくなり、固く感じます。それに比べて、泡をたっぷりと含ませている場合は、泡自体がクッションの役目を果たすために柔らかく感じます。

育てる

初めてアナグマのブラシを使い、ある程度使っていて、別のアナグマブラシを手に入れると起こりがちなのが、新しいブラシをすぐに「固い」と思ってしまうことです。もちろん、最初のブラシの品質が低く、より高級で柔らかいブラシを入手した場合は別です。

いくら「アナグマのブラシは初めからよく、豚毛は使っているうちに育つ」と言っても、実のところアナグマが真のパフォーマンスを発揮するまでに、やはり2週間以上かかります。

豚毛は最初、とても硬いですので快適に使用できるようになるには最低2週間、人によっては一ヶ月以上も、使用を開始する前に準備として、毎日本当に使用するかのようにブラシや手で泡立てから洗い、乾燥させを繰り返し、好みの柔らかさに仕立ててから使用を開始します。使用を開始することをブレイクイン(break in)と言いますが、この準備期間や手順をそう呼ぶ人もいます。

豚毛の準備期間を短縮するためのテクニックとして、サンドペーパーや材木、皮にこすりつけたり、風や温風で強制的に乾燥させたりする方法があります。しかし、こうした方法は必要以上にブラシを痛めることにつながりますから、寿命が短くなります。そのため、自然な方法を取る人も多いようです。

また、一部の豚毛愛用者は事前処理を取らずにそのまま使用開始し、硬い毛がだんだん柔らかくなっていくのを楽しむ人もいます。豚毛ブラシの製品中には、たとえばSemogueの豚毛ブラシのように、初めから柔らか目なものも存在しています。

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