シェービングソープの香り

シェービングソープの香りについての解説します。

香料

香料には化学合成されたものと天然の材料から抽出したものがあります。もちろん、もともとは天然香料しかありませんでした。

天然の香料は、原料から揮発したものを冷やして集めたり、アルコールに溶かし出してからアルコールを飛ばしたり、油脂に吸着してから分離したりすることで生産します。天然の香料は人手がかかるため、一般に値段が高くなります。

そこで、香りの成分を分析し、それを人工的に合成することで生産された合成香料が現在では一般的に使用されます。値段が安いためです。

一般的に天然香料が安全で、合成香料は体によくないと考えられています。特に、何でもかんでも「自然」のものが良いという考えの方が喧伝するため、信じている人もいるでしょう。

しかし、一概にそうとも言い切れません。たとえば、アロマテラピーで使われるエッセンシャルオイルもよく使用される香料の一つです。しかし、よく考えてもらえばわかりますが、植物から取るものであれば、同じ品種であっても土地や気候、肥料分などで、植物自体の構成がかわります。それらから抽出されるオイルも成分は異なります。そのため、同じ植物のオイルでも産地により香りが異なるのはよく知られています。

香りが異なる、成分が異なれば、毒性も変わるはずです。ですから、同じ種類の天然オイルがいつも安全だと限らないわけです。

規制の厳しいフランスでは、かつて治療に使用されるエッセンシャルオイルには生産ロットごとに分析することが義務付けられていました。(「かつて」と書いたのは、現在はわからないからです。最近、エッセンシャルオイルを購入していないためです。)有効な香料成分が一定の割合で含まれていることを証明する必要がありました。

また、オイルによっては経口で体に取り入れる、皮膚につける、皮膚に付けた上で紫外線にあたることでトラブルが起きるものがあります。アロマテラピーが本格的に流行る前、フランスの一部で取れる「ツルーラベンダー」から取られたエッセンシャルオイルは、希釈せず皮膚につけてもトラブルは起きないとされていましたが、最近は皮膚科のポスターにラベンダーによっても皮膚炎が起きることが注意されています。

ラベンダーの名誉のために説明しますが、これは知識のない利用者が誤用した可能性、ラベンダーの種類が違う、実際は合成物であったなどの可能性もあります。しかし、医療機関側でそこまで分析しないのと、ラベンダーは皮膚の刺激性がないと情報が流されているため、皮膚科ではラベンダー一般について注意喚起されています。

一般的なラベンダーオイルには香料が多く取れる品種のものが使われています。収穫される地域が限定されているツルーラベンダーはもともとの収穫量が少なく、香りも異なります。ラベンダーは皮膚刺激が少ないため、敏感肌の方向けの香りとして利用されますが、それはもともとツルーラベンダーのオイルについての説明でした。その他の品種や合成物について、言われていたものではありません。

つまり、天然香料であっても、安全であるとは言い切れません。

では、合成香料についてはどうかと言えば、たとえば日本の香料会社が販売するときは、最低限の毒性のテストは行われているでしょう。しかし、香料についても最近は中国産が多いようですし、世界中各地の工場が安全に生産しているのかは不明です。

そもそも、香料は少しの量で十分香るものが多いのです。使用側では少量であるから健康被害は少ないだろうという考えがあります。そのため、天然であれ、人工であれ、安全性は軽んじられる傾向にあるようです。

たとえば、皮膚刺激が大きいために通常石鹸には使われない、バニラが使用されるシェービングソープがあるわけです。本来、バニラの香りがほしければ皮膚刺激のない香料を組み合わせる必要があるのですが、知識不足や「まあ、大丈夫だろう」という考えで販売されます。

エッセンシャルオイル

通常、「エッセンシャルオイル」というときは、植物から抽出した天然物を言います。

そのため、エッセンシャルオイルを100%使用しているという製品は、値段が高くなります。

ただし、天然物を100%使用していても、全ての香料が液体ではないため、エッセンシャルオイル100%と記述しない真面目な会社もあります。また、天然物では使用できないムスクなどのみ、合成物を使用しているものもあります。その場合でも、100%ではないと記載している会社は真面目で信頼できるでしょう。

ムスクを使用しているのに、天然100%の香料と書いているところは、少々不誠実です。まあ、割合が少ないため繰り上がって100%という考えもあるので、間違いとは言い切れませんが、消費者にできるだけ正しい情報を伝えようという意志は少ないかと思います。

フレグランスオイル

フレグランスオイルは、まあ「香りのオイル」ですので意味合いからすれば天然香料と人工香料の両方が入ります。ですから、どちらなのかと完全に言い切れません。

しかし、たとえばシェービングソープの商品説明に「エッセンシャルオイル」、「フレグランスオイル」と説明がわけられている場合、フレグランスオイルは合成香料を使った出来合いのオイルという意味合いで使われます。実際のところ、どの程度の割合で天然/人工香料が使用されているかどうかはわかりません。

一般的なシェービングソープの香りなどは、フレグランスオイルとして予め調香されたものがソープ混合用に販売されています。

石鹸と香料

日本で言う「香水」は、香りを楽しむ化粧品のことです。香水の英語表記はperfumeと私達日本人は考えますが、実際に日本語の香水にあたる言葉は、fragranceのほうが適切のようです。欧米では含まれる香り成分の濃度により呼び方が変化し、一番濃度の濃いものがperfumeです。濃度が下がるにつれEau De Parfum (EDP)(オーデパルム)、Eau De Toilette (EDT)(オードトワレ)、Eau De Cologne (EDC)(オーデコロン)になります。一番薄いのは日本語でコロンとも言われますね。

濃度が高いため、パフュームやオーデパルムは、有名ブランドでなくても数万の値段になるものも多いです。

こうしたデオドラント製品では、水やアルコールに対して香料を加えます。

シェー瓶ソープのように石鹸に香料を加える場合、2つの問題があります。熱とアルカリです。

現代の石鹸製造の主流は、石鹸素地を作り、それを粉にし、他の成分や香料と混ぜ、乾燥させ、整形する方法です。乾燥は真空にすることで、水分を飛ばす方法です。熱で乾燥する方法は、成分が変化したり、石鹸素地が酸化したり、香りが飛んだりしやすいためです。

シェービングソープもこうした方法が取られるものがあります。古いブランドが製造しているシェービングソープは容器にピッタリはまるように整形されています。そうしたソープは工場生産品のため、混ぜ合わせてから、乾燥、整形という製造方法です。

あまり大きくないブランドは、小ロットを自宅や小さな工場で製造しています。そうしたハウスメイドのソープは「アーティザン(職人)ソープ」と呼ばれます。シェービングマニアには、こうしたアーティザンソープのほうが人気があります。

アーティザンソープは、いわゆる手作り石鹸の製造方法です。大手では石鹸素地を作ってから、添加物を入れますが、アーティザンソープはまだ固まらないうちに香料を加える必要があります。ソープ製造時は油脂とアルカリを反応させるために加熱します。反応が進むと固まりますが、完全に反応が進まなくても冷えると固まります。

固まると、混ぜ込むことはできませんので、柔らかいうちに混ぜます。柔らかい状態では、まだ熱を持った状態です。

香料は一般に揮発性です。蒸発しやすいわけです。熱いところに蒸発しやすいものを入れれば、そりゃ、たくさん蒸発します。つまり、加えた香料の100%そのままソープに残るわけでなく、予め蒸発する分を増やして投入するわけです。

もう一つの問題はアルカリです。石鹸はアルカリ成分を油に加え作ります。アルカリは水中で「水酸化物イオンを生じる物質」です。なんだか面倒ですね。私も、もう思い出せません。

ただ、石鹸に関して理解しておけばよいのは、この水酸化物イオンが香りの成分と結びついてしまうことです。つまり、香料をアルカリ性の物質に入れると香りが弱くなる、もしくは一部が弱くなることで香りが変わってしまうということです。

そのため、お気に入りの香りを調香できたからと言って、それを石鹸に加えれば良いというものではないわけです。香りが弱くなったり、変わったりするわけですから、水酸化物イオンと結びつく分を余計に加える必要があります。

つまり、熱とアルカリ性で弱くなる分、ソープには同じ様な強さの香水よりは、多くの香料が含まれているということです。

香料が多く含まれているということは、値段の張る天然のエッセンシャルオイルのみを利用すると、とても高くなります。ですから、天然エッセンシャルオイル100%の製品は、値段が高く販売されています。

販売されているソープ用のフレグランスオイルがあります。これらは通常天然100%ではありません。前述の通り、何がどの程度含まれているのか、100%合成香料なのかは通常わかりません。しかし、ソープのアルカリ成分により香りが弱くなったり、変わってしまったりすることには、対応できるように調香されています。ソープ製造側としては便利な製品なのです。

最後に、天然であろうが、人工であろうが、香料によってソープの性質が変化することがあります。無香料のときより固くなったり、柔らかくなったりします。そのため、同じブランドのソープであっても、香りにより性質が変わることがあります。

香料濃度の安全性

つまるところ、ソープ混合専用に考慮された香料でない限り、ソープには多くの香料が使用されている可能性が大きいのです。それらは、あまり香らないこともあるでしょうが、ソープの中にもともとの香料に含まれていた成分が水酸化物イオンと結びつき残存しているのです。

もし、たくさん残存した香料の成分の一部、もしくは水酸化物イオンと結びついた成分が、肌に合わなければ、反応が出るかと思います。同じ香りでアフターシェーブやフレグランスとして使用しても大丈夫なのに、ソープでシェービングすると、ヒリヒリしたり、カミソリ負けが起きたりすることが起きます。それは、肌へカミソリの刃でダメージを与えていることもありますが、ソープに含まれる香料成分の一部が起こしている可能性もあるのです。

ですから、シェービングソープは剃り終えたら、きれいに洗い流すことを私はおすすめしています。化粧品大手であれば、そうした濃度も考慮して製品開発をしているでしょうが、アーティザンソープを製造しているクラスの会社では、そこまで手は回らないでしょう。

ムスク

天然、人工という視点でみると、ムスクは興味深い香料です。

現在、アーティザンシェービングソープを製造しているような、アメリカ、カナダ、ヨーロッパの各国は、ワシントン条約に入っているはずです。日本も入っています。本来のムスクはジャコウジカから取りますが、ジャコウジカが絶滅危惧種になったため、ジャコウジカはもちろん天然のムスク、試用した製品は輸出入禁止です。つまり、通常のシェービングソープには使えないわけです。

ところが、エジプトや中国では「天然ムスク」として輸出しようとしています。実際は他の動物からもとれますし、鹿を毎回殺しているわけではないようです。

もともと、ムスクは値段が高いものでしたので、人工ムスク開発の歴史は古いわけです。最初に開発された人工ムスクは発がん性が指摘されたため、現在は使用されていません。

天然のムスクは非常に多くの成分を含んでいるため、そのものを人工物では代用できません。しかし、同じ特徴と傾向を持った香りは、いくつも開発、販売されています。

ムスクは、香水のベースの香りとしても優秀です。様々な香りをまとめる役割があります。そのため、シェービングソープにもよく使用されています。

ときより、「天然香料」を使っているのが売りの製品なのに、ムスクが入っていることがあります。それは「天然ではなく人工のムスク」か、「天然ムスクを密輸」のどちらかを行っているというわけです。いずれにせよ、あまり信用できない製造元であると判断できます。

ベースノートと残効性

ムスクや他のベースとして利用される香料は、香りをまとめる以外に残香性を高めるという機能も乗っています。

つまり、他の香りと結びつき、本来先に飛んでしまう香りをゆっくりと長続きさせるという性質です。

製品の成分表を読み、ベースとしてムスクを使っている製品は、長く香りが続く傾向があると判断できます。

無香料ソープ

商品のラインナップに、香料を使用していないソープを用意しているブランドも多いようです。

無香料は香料が入っていないのに、香料入りと通常値段は同じです。何だか損をしている気持ちです。

たしかに、石鹸の材料よりは同じ重さの香料の値段は高くなりますので、原料費だけで考えれば、多少は割高でしょう。

しかし、前記のとおりに天然の香りを多く使用している場合、かなり多くの香料を混ぜ合わせていますので、その分代わりにソープが多く入っていれば、使用可能回数は増えることでしょう。

商品により、1割ほど多く剃れる可能性があります。

ただし、水分を含んだソープは急速に酸化します。香料が入っていないと、油の酸化臭がするようになりがちです。一度使用を開始したら、連用して早く使い切るか、毎回十分に乾燥させるようにしましょう。

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