自分でお灸に使用するため、艾(もぐさ)の等級について調べました。購入しやすい製品の品質についてコメントします。また、上質なもぐさの入手先についても紹介します。
心臓病を発症してから、血圧の薬を飲んでいます。直接の原因は、高血圧ではないらしいのですが、治療法として複数の降圧剤を組み合わせるのが有効らしいからです。
しかし、先日父親が他界する前に病院へ数カ月入院しているゴタゴタで、自分の薬を飲まなかったのですが、そうしたらそれまで改善できなかった血液検査の結果が一気に良くなりまして、どうやら服薬の影響があるらしいです。薄々気がついていましたんですが、主治医が血液検査と服薬に主眼を置いているので、早々薬を減らすことに賛成してくれそうもありません。
そこで、体質改善も兼ね、まずお灸で血圧を下げ、「下がっているようなので、減らしてくれ」という方向へ持っていこうと思い、まずは艾を手に入れることにしました。
入手可能な艾
今はインターネット社会です。こうした古い製品で、実店舗ではもう取扱がないものであっても、ネットを駆使すれば手に入ります。実際、私は艾を購入しようとして市内の薬局を回りましたが、取扱がありませんでした。その後アマゾンで簡単に見つかりました。
今や昔からの会社も生き残りのために、ネット通販を行っています。艾は製造元、販売元、卸などや、アマゾンやヤフーなどのショッピングサイトなどから購入可能です。
調べてみると購入先や値段、購入量が様々なため、とりあえずは誰でも入手しやすいアマゾンで、少量で購入できるものを取り寄せました。また、直接肌の上に置き、火を付ける「点灸」もしくは「知熱灸」という手法に使用する艾に絞りました。直接肌に置かないタイプのお灸は、肌に跡が残らないという点で好ましかったのですが、なにせ燃やす艾の量が多いため、煙たいのです。このタイプの千年灸オフをしばらく使い、煙が気になったので、昔ながらのごく少量を肌の上で燃やすタイプに挑戦することにしました。
結論から話しますと、これらの製品は点灸用の艾としては中級以下の製品でした。(用途によっては、中級以下が役に立ちます。詳細は後述します。)
アマゾンから購入した艾
購入したのは以下の5点です。
10グラムというのは誤表記です。3.7グラムです。
製造元から購入
通販で購入しようか、それとも近くに販売店はないかと探している最中に、たまたま自分のすんでいる「新潟」県と「もぐさ」をキーワードに検索してみたら、いくつかの知見が得られました。
艾の生産地の有名所はいくつかありますが、現在では上級の艾を製造しているのは、新潟県がほぼ100%のようです。新幹線が通り、道路が整備される前、新潟の農家の人たちは冬に仕事がなくなるため、出稼ぎにでていました。冬は労働力が余っていました。艾は空気の乾燥している冬季が生産時期ですので、その時期の労働者が安く雇えたという歴史的な事情があります。また、新潟県周辺は艾の原料のよもぎの生産量が日本一らしいです。気候的にも品質のよいものが取れるようです。他の艾の生産地でも新潟産のよもぎを日本製のよもぎとして使用しているようです。
そして、上級の艾は佐藤竹右衛門商店で6〜7割を生産しているようです。こちらの会社は、最近鍼灸師の方や勉強中の学生さんが勉強のために工場見学されるようになっているようです。自分たちが使用するものの、生産現場を実際に目にするのはよいことです。
この、佐藤竹右衛門商店さんは通信販売も行っています。最低でも約500円ほど送料がかかりますが、点灸用の「純和灸」艾は1グラムから販売してもらえます。高品質の艾は最低でも100グラム単位での販売が多いのですが、100グラムはプロでもお灸を多用しない人であれば、使い切るには数年かかる量です。お灸は年数を置いたほうが高品質になると言われていますが、通常の家庭の環境では湿気を吸い、品質が落ちるだけです。そのため、一年程度で使い切れる分量の高級艾を毎年購入したい場合、ここ以外に購入先がありません。
品質
一般的に艾の品質は、生産時にどのくらい丁寧に不純物を取り除くかにかかっています。
不純物を丁寧に取り除いた上級品ほど、白くなります。また、肉眼やルーペで観察すれば、黒い小さなゴミのような不純物が、高級品では少なく、品質の悪いものでは多くなっています。
また、高級品ほどよもぎの葉の毛が長いです。つまりお互いに絡みやすくなっています。お互いに絡みやすいと細く撚ることができます。
品質と温度
お灸の艾は大まかに分けて、直接肌に乗せる用途と、間に空間を作ったり、別のものを挟んだりする間接灸用の製品と別れます。艾はよもぎに生えている産毛様の毛です。これを精製し、不純物を取り除いたものが、直接肌に乗せる用途の艾です。ある程度、不純物を残しているものが、間接灸用の艾です。
不純物はよもぎの葉や茎が乾燥したものです。こうした不純物が多いほど、燃焼温度が高くなります。お灸はできるだけ低い温度でじっくりと効かせるのが効能があるとされているため、直接肌に乗せるタイプのお灸に使用するためには、不純物をできるだけ取り除くほうが好ましいわけです。逆にいえば、間接灸に使用する目的であれば、不純物を残しておいても良いわけです。
精製の技術が優れており、さらに高品質のよもぎが自生しているため、直接灸用の艾は日本でしか生産できません。そのため、中国のお灸は間接灸なわけです。
不純物と燃焼温度
佐藤竹右衛門商店が販売している点灸用の艾、中級、上級、特級の三種類全部をルーペで拡大し、比較してみました。その結果、品質が高いものはやはり不純物が少ないようです。中級と上級の間は見分けが付けやすいですが、上級と特級の間はさほど顕著ではないようです。ただ、収穫年によっても変化があるでしょう。2016年の10月に購入したものでの比較です。
この三種類と、アマゾンから購入した5種類をルーペで比較してみました。主にどの程度不純物が多いかを比較しました。さすがせんねん灸は大手だけあって、佐藤竹右衛門商店の中級レベルの製品でした。それ以外の3社から販売されている艾は、不純物が多いため、艾としての品質は更に低いと判断できました。
また、せんねん灸は箱入り線香付きと、叩いて袋に入れた製品がありますが、ルーペで拡大した範囲では同じ製品のようです。
実際に品質と熱さを自分の腕で比較してみましたが、プロのように一定の大きさ、一定の圧力で艾をひねる(形を整えること)ができないため、厳密は比較はできませんでした。ただし、うっすらとですが、佐藤竹右衛門商店とせんねん灸の製品と、それ以外の製品の間では差を感じることができ、不純物が多い三社の艾のほうが燃焼温度は高いようです。
形成と燃焼温度
成形、つまり艾を撚る(ひねる)、艾をよじり小さな固まりに形を整えることに関しては、上級品ほど整えやすいです。これは私のような素人でもすぐに感じられます。
力を入れずに軽く成形すると燃焼温度が低く、がっちり力を入れて固めると高くなります。通常は燃やした時に熱くなりすぎないように、最低限の力で整えることになります。ところが、不純物の多い艾は固めて、形成しづらいため、小さく細く撚るのは難しい、もしくは不可能です。
力づくで小さく固めることはできるでしょうが、燃焼温度が上がってしまいます。
逆に、良い製品はひねりやすいため、小さくも大きくも、軽くも固めも、調節できます。目的に合わせて、コントロール可能です。大きさと温度の調整が容易にできるため、プロの方は良い艾を使用するわけです。
燃焼時間
高級品ほどじっくり燃えるという記述があります。逆に、さっと燃え尽きるという記述もあります。
いろいろ試した結果、柔らかく撚るとさっと燃え尽きるようです。固く撚るとじっくりと燃えます。
保存方法
可能であれば桐箱で保存すると良いとされています。そのため、高級品は桐箱に入っています。(もしかしたら、切り以外の木製かもしれません。)
桐箱は調湿作用があるため、昔から保存箱としていろいろな用途に使用されてきました。現在でも、高級海苔や素麺などは桐箱(もしくはよく似た材質の箱)に入れら販売されています。
製品がビニール袋に入れられて販売・郵送されたときは、こうした桐箱で補完するのが理想的です。それがない場合は、紙袋で保管しましょう。(アマゾンの商品コメントで、紙袋じゃなくて、保存用のビニール袋をつけろというものがありました。紙袋は若干の調湿作用があるため、わざわざ昔ながらの紙袋で販売されているのです。)
艾や材木は水分が多いと燃焼温度が上がります。お灸では温度が低めが良しとされる状況が多いですので、乾いた場所で保管しましょう。
「寝かせると品質が上がる」とも言われています。ただ、商品の艾を寝かせる場所は、通常専用の蔵などです。家庭では吸湿して品質が下がることのほうが多いかと思います。寝かせるよりは、こまめに使い切って、新しいものを購入したほうが良いでしょう。
一覧表
今回購入した艾を表にまとめてみます。重さは0.1グラム単位で測定できる手元の秤で艾の重量を調べた値です。
名前 | 販売 | 値段 | 重さ | 1グラムの値段 | ||
純和灸(特級) | 佐藤竹右衛門商店 | 82 | 1 | ¥82.00 | 送料別 | |
純和灸(上級) | 佐藤竹右衛門商店 | 62 | 1 | ¥62.00 | 送料別 | |
純和灸(中級) | 佐藤竹右衛門商店 | 52 | 1 | ¥52.00 | 送料別 | |
せんねん灸もぐさ箱入り300 | ゼネファ | 292 | 3.7 | ¥78.92 | 線香つき | 中級相当 |
せんねん灸もぐさ袋入り300 | ゼネファ | 303 | 3.7 | ¥81.89 | たたき艾 | 中級相当 |
点灸もぐさ | 小林老舗 | 540 | 4.9 | ¥110.20 | たたき艾 | 中級以下 |
伊吹御?艾 | 亀屋左京 | 594 | 3.5 | ¥169.71 | たたき艾 | 中級以下 |
常磐モグサ | 丸一製薬 | 324 | 2.8 | ¥115.71 | たたき艾 | 中級以下 |
ここから読み取れるのは、以下の項目です。
- とりあえず試してみるのであれば、せんねん灸の線香付き箱入りがおすすめ。
- ちょっとお灸、特に点灸にはまりたい方は、佐藤竹右衛門商店の純和灸「上級」がおすすめ。中級と上級との間には品質の開きがある。上級と特級の間には値段の開きがある。そのため上級がベストバイと思われる。
- もちろん、特級を購入しても良い。50グラム単位で割引になる。ただし、100グラム単位であると他の販売店のほうが値段が安くなるところもある。(ただし、品質については基準があるわけでなく、各販売元が勝手にランク付けしているだけであるため、実際には購入してみなければ、わからない)
3.7グラムという、一見中途半端な重さは、日本の古い重量の単位である匁(もんめ、=3.75グラム)相当だと思います。昔からの商品のため、重さを変更せずに販売しているのでしょう。艾は乾燥したり、吸湿しやすい製品ですので、多少の重さの誤差は出るかと思います。0.1グラム程度の誤差はあります。
佐藤竹右衛門商店の純和灸(点灸用の艾)は中級、上級、特級です。中級は上級、特級と比べやや濃い色をしています。細く撚る場合も中級とそれ以上では差があります。
上級と特級は色味には差がありません。使用感も似ています。ループでみると確かに特級には不純物が少ないのがわかります。
中級と上級とはグラムあたり10円程度の差ですが、上級と特級とでは20円ほど開きます。そう考えると佐藤竹右衛門商店の純和灸を素人が毎日使用するために購入するなら上級を一年か二年ほどで使い切れる量を購入するのが良いかなと思います。更に、時々ごくごく細く撚るときのために、特級を数グラムほど購入すればよいかと思います。
必要な分をグラムで購入しても良いですが、「純和灸 上級50g」が2,880円と割安になっています。これなら、グラムあたり57.6円です。これにたとえば特級を2グラム購入して164円。送料は発送先により異なりますが、本州なら525円です。合計3、569円です。50グラムあれば個人使用でかなり持ちます。
佐藤竹右衛門商店から何かもらっているわけでありません。ただ、お灸が売れないと将来に渡って自分も購入できなくなるので、このサイトでも一助になればと紹介しました。良い製品を安く販売しているところは、長く製造販売を続けてほしいからです。
ほくろを焼き切る
あまりに安易にほくろをお灸により除去しようとする人が多いようです。
そもそも、お灸は熱いもので、その熱によりやけどを作り、それによりほくろ、メラニン色素を作っている細胞を焼き殺すことで、除去する方法です。ちょっと考えれば、熱いこと、やけどの後は残ることは自分の頭でわかりそうなものです。
そして、やけどの跡が残るか残らないかが、きれいに除去できるかどうかです。
全て自己責任でやっているはずです。
ところが、「やけどの跡が残った」と商品レビューを書いているアホがいるのです。情けない。レビューを書くほどの知力があるのに、そんなこともわからないのかと。わからずに行ったのかと。
焼き切るのです。やけどします。やけどの後は残ります。それがどの程度残るかは、わかりません。自己責任です。それだけわかれば、安易に行うのは止めましょう。行うのであれば、リスクは覚悟しましょう。現代的な手術にも、リスクはあります。そのリスクを覚悟してまで行うのかは、自分の責任です。