Titanストレートレザー、使用レポート

使い始めたばかりですが、使用レポートを書きつつ、色々と試していきます。

切り刃

パンフレットに指示されている通りの方法で、とりあえずやってみようとのことで、おまけの布砥におまけのワックスを塗りこみ、それでカミソリをラッピング(研磨剤などに擦って細かく仕上げる方法。特にカミソリでは吊り下げた革砥でラッピングする。タッチアップとも言う。)しました。詳細は、前回の商品到着の記事を参考にしてください。

それで1回剃ってみようと、刃先に触れないように、油を食用洗剤で落とし、剃ってみました。

やや髭の軟化が甘かったのか、固いままでしたが、それなりに剃れます。ただ、気持ちよく剃れるというほどではありません。髭が固いことを考慮しても、何か引っかかる感じがします。

実は、到着時と最初のラッピング後に顕微鏡で刃の状態を観察していました。残念ながら、撮影できるタイプでない簡単なもので、画像は無いのですが、到着時はけっこう粗めののこぎり刃になっていました。ラップをかけた後は、粗さが取れ、より細かいのこぎり刃になりました。

そこそこ剃れるが、切れ味はさほど良くないので、更に良く肉眼で観察すると、目視で確認できる程度のごく小さな欠けがいくつかあるのを見つけました。

そこで、とりあえず手持ちの粗い砥石で、自分で研ぎ直すことにしました。

1000番手砥石とラップ仕上げ

確か数年前に髭剃り系の海外フォーラムで、砥石の1、000番手の後に、ラッピングで仕上げる方法を見つけた人が、その方法が有効かどうか試すスレッドを立てました。

カミソリの研ぎについて全く知らない人向けに、まず大まかに「研ぎ」について説明しましょう。

砥石には粗砥、中砥、仕上げ砥があります。大まかに削るには荒砥を使います。普段刃物を研ぐときには中砥、より切れ味を増すには仕上げ砥石を使います。粗い砥石ほど大きく削れますが、仕上がりはザラザラで、切れ味は落ちます。細かい砥石は削る力は落ちますが、仕上がりはより細かくなり、切れ味が増します。

また、粗砥、中砥という呼び方では、具体的な細かさがイメージしづらいので、研磨剤がどの程度存在するかを表す数字により、粗さ・細かさを表します。ただ、削りの細かさは、研磨剤の量や大きさだけでなく、研磨剤の成分や、それらをつなぎとめている接着剤なども影響します。ですから、一応の目安です。

一般に刃物に関して、刃がかけている場合など大きく削る必要があるとき、荒砥石から利用します。普段使いの包丁などで、刃が欠けていなければ、大きく削るのはもったいないので、中砥石から使い始めます。

普通の包丁であれば、中砥の2、000番あたりの中砥が一本あれば、最低どうにかできます。カミソリの場合、刃がとても薄くなっています。そんな刃をどんどんと削るともったいないですし、その必要も通常ありませんので、5、000番から8、000番あたりの砥石あたりが、最初に必要な砥石になります。その後、10、000番台を越す仕上げ砥を使い切れ味を増します。

ここに人工砥石だけでなく、天然砥石の話も加わり、複雑になってきますが、そうした詳細を省略すると、切れ味が落ちたら、一般的には5000番手以上の細かい砥石から研ぎ直すというのが、常識だったわけです。(一般的に細かい砥石ほど値段が高くなります。また、西洋カミソリには天然砥石が適していると言われており、天然物は日本のものが最高品質ですが、もう採掘されていないため、現存の日本産天然砥石の良い物はとても高価です。)

そうしたカミソリ研ぎの常識があった中で、「1、000番の砥石で研いで、ラッピングで仕上げたら、うまく剃れた」ので、方法論として確立できるのか、試して欲しいというスレッドが海外髭剃りフォーラムに立ったわけです。実際には使用する砥石も、ラッピングの方法も試す人により異なりますので、厳密な科学的実験ではありませんから、「うまくいった」という人もいれば、「それほどでもない」という結果もありました。

考えてみれば当然のことで、研ぎの技術を持ち、良い砥石を持っている人が仕上げれば、ラッピング無しでも、最高な切れ味のカミソリに研ぎ上がります。普段そうしたカミソリを使っている人にとって、より荒いラッピングで仕上げられたカミソリが、「いつものように最高」に切れるはずはありません。

しかし、あまり研ぎがあまりうまくない人が、この方法を使えば、「普段通り」にうまく剃れるでしょう。カミソリは刃物の中でも、研ぎは難しいとされています。包丁などに比べ、より鋭い切れ味が求められるからです。

この1、000番砥石で研ぎ、ラッピングで仕上げる方法は、ストレートレザー使用者の裾野を広げられる可能性がある方法です。1、000番ほど粗いものでなくても、2、000番程度の一般的な中砥石であれば、さほど値段も張りません。西洋カミソリを使い始めれば、革砥は必要になります。本格的に自分で研ぐのであれば、砥石への投資が本体と同額程度、凝ってしまえばそれ以上かかります。安い砥石でどうにかできるのであれば、これからストレートレザーを試そうとしている、初心者への福音となります。

実証

手元には多くの中砥、それと手番のわからない仕上げ砥がありますが、仕上げ砥は面が大きく狂っている(通常、砥石は使用面を真っ平らにしてから使います)ので、面倒で使っていません。

カミソリには小さな刃欠けがあります。そこで、浸水しなくても使える荒砥の800番と、15分位の浸水で使用できる1200番の中砥を使うこととしました。ついでに台所の包丁も数本研ぎました。

カミソリを研ぐのは初めてでしたが、荒砥に5分、中砥に5分程度です。荒砥で刃欠けが見えなくなるまで刃の角度を保ったまま研ぎ、その後、中砥で砥グソ(研いでいる時のカス。これを出しているときはバリバリ砥げている)を出しながら数分で両面30回程度。次に砥石を洗い、きれいな状態で力を入れず、砥グソを出さずに数十回研ぎました。(砥グソを出さないように力を抜いて研ぐと、出しながら研ぐ時ほど削れませんが、より細かく研げます。)

見た目の感じでは、到着時より少々まともな感じです。しかし、さすがに1200番の中砥では、指先で触った感触でも、切れそうにありませんでした。

次に、既におまけワックスが塗ってある、おまけ布砥で100回程度ラッピングしました。少し速度を上げると私の技量では、こすりつける最後の瞬間に、刃先だけを布砥にこすりつけてバリバリ音がなっているのに気づき、そのままではせっかくの刃先がなまってしまうので、速度を落とし、ゆっくりと慎重に2分間くらい布砥にかけました。

刃先の状況をみるためにそっと指先を付けてみましたが、それだけで「さくっ」と皮膚が切れる感覚が分かりました。これなら十分に剃れそうです。念の為に、爪に軽くあて横に引いて、引っかかる箇所があるかテストしましたが、どこにも引っかかりませんでした。

顕微鏡で切り刃を見てみると、到着時より細かいのこぎり刃になっています。ラッピングがまだうまくないため、うまく擦れているところと、擦れていないところがありました。場所によっては小刃が付いたようになってしまったところもあります。

使用報告1日目

自分で研いだあと、最初に父親の髭を剃ってみました。今までは両刃剃刀で剃っていました。十分に髭を蒸し、問題なく剃れました。唯一、喉仏のあたりは、本人がつばを飲み続けて動いてしまい危険なため、両刃カミソリにしました。

翌日、布砥によるラッピングをかけずに、そのまま自分の髭を剃ってみました。最初の順剃りパスは問題ありませんでしたが、2パス目に逆剃りを行い、最後の口髭に関しては、髭が固いことと切れ味が鈍ってしまったため、うまく剃れませんでした。

もうちょっと、研鑽を積む必要があります。

使用報告2日目

使用前におまけ布砥+おまけワックスで10回ずつラッピング。(交互に行うのではなく、パンフレットに書かれているとおりに、片側を10回行い、反対側を6から8回やろうとしたら、間違って10回やってしまった)

食用洗剤で油を洗い流し、使用してみた。少し慣れ、何かに時間をかけたせいか、昨日よりも剃りやすい。まだ、あごと鼻の下は逆ゾリが難しい。うまく張れていないから。

気がついたのは、カミソリの感覚からいうと、両刃より深剃りできるということ。例えば両刃で追い込んできれいに剃ったときの、カミソリの刃に髭が全く引っかからない状態を10、それほど追い込まない状態を8から9とする。今日のストレートレザーで顎の部分は6から7程度で、髭の引っかかり具合からすれば、まだまだ剃れる感じがする。しかし、後ほど鏡でじっくり観察すると、両刃で8から9割り剃りあげた見た目になっている。

つまり、カミソリに引っかかる髭の感覚を元にすると、ストレートのほうがやはり深剃りできるようだ。もしくは切り口がきれいなため、目立たないのかもしれない。

使用報告3日目

ラッピング無し、24時間休ませただけ。

無理をせず、今日は順剃りのみ2回繰り返してみた。切れ味はそこそこだが、剃りやすい。二回目のほうが当然ながら、スムーズにカミソリが進む。「順剃り、横剃り、逆剃り」で少しずつ剃っていく重要性を再確認する。

ストーレートの剃り工合は一般的に「剃り工合はカミソリの切れ味で決まる」と「切れ味よりテクニックで決まる」の2つの意見にわかれるが、日本の根掘りテクニックが存在するように、テクニックのほうが重要なのではないかと、思われる。

使用報告4日目

ラッピング無し、24時間休ませただけ。

剃る前に顕微鏡チェック。刃の状態が所々でことなる。さすがにこの顕微鏡で見える程度ののこぎり刃がなくなった場所は、復活しない。

本日3パス。ただし、切れ味は流石に鈍っており、無理して剃ったため、濃いヒゲの部分を中心にカミソリ負け。テストのためとは言え、さすがに無茶だった。痛い。

鼻の下、あごの逆剃りは刃が滑らず中止。両刃カミソリへ逃げた。

新しい発見としては、ブラシの抜け毛があると、力の入り方が変わり、皮膚の方へ刃先が入るため、切りそうになる場合があった。両刃だけを使っている時に、ストレートのビデオを見ると、神経質に毛を取り除いているのを不思議に思ったが、謎が一つ解けた。

使用報告5日目

昨日は全く剃れくなっていたため、おまけの布砥と革砥を使い、約100回ほどラッピングした。Titan指定の片面をラッピングしてから、裏側を行う方法ではなく、標準的な表裏を交互に行う方法を使用した。

この時点での顕微鏡チェックは、研ぎ傷にワックスが埋まっており、よく見えない。ワックスには色々な大きさの粒子が見られる。たぶん研磨剤だろう。いずれにせよ、よく洗わないと髭は剃れない。刃先を触らぬように食用洗剤とスポンジで洗浄する。

髭剃りは1パス目の順反りだけ試す。さすがに昨日とは全然比べ物にならないほど剃れる。ただし、研いだ直後ほどの鋭さはない。残りのパスは両刃カミソリで仕上げる。

この時点で顕微鏡を見てみると、スポンジで直接洗わなかった切り刃に、細かい研磨剤が残ったままになっていた。ネットスポンジのネットは硬いため、状態が変わるのを恐れて、洗わなかったのが良くなかった。スポンジだけを買ってくる必要あり。

顕微鏡で観察した結果、さすがに100回もラッピングすると、かなり削れることがわかった。以前研ぎだした刃の3/4程度のところから、少し鈍い角度で刃がついていた。これだけ研磨力があれば、パンフレットに記述のある「永久に切れ続ける」というのは、嘘ではないだろう。たぶん削れ過ぎだ。革砥を手に入れる必要があるが、怪しい製品は多けれど、手頃なものが見つかっていない。

使用報告6日目

本日も順反りだけ。24時間休みのラッピングなし。あごと口ひげの部分は、刃先が鈍っていて、剃りづらい。

忘れなければ、明日はTitan指定の方法で、ラッピングをかけ、試してみよう。

ちなみに、順剃り以降のパスは、両刃を使っているが、ストレートで剃っていたら、両刃のスキルがだいぶ上がった。

使用報告7日目

Titan指定の方法でラッピング。片面を10回、反対側を8回。直後を顕微鏡で見ても、ワックスの油と研磨剤が邪魔で、刃の様子が見えない。

食用洗剤で洗う。切り刃の部分は横にこすらず、刃のないスパイン側から切り刃の方向へ洗う。その後チェックしてみたが、少々切り刃に細かい研磨剤の粒子が残ってしまう。そこで、手のひらで数回ラッピング。これできれいに研磨剤も落ちた。

これで、どの程度まで切れるか試してみる。順方向、横方向の2パスまでは問題なし、3パスは最後に残しておいたあごと口ひげの部分が、剃りづらくなったため、無理せずここでストレートは終了。最後の逆剃りは両刃で行った。

顕微鏡チェックした結果わかったことは、Titanのワックを使い、指定方法でラッピングすると、荒目の研ぎ傷が消え、刃先も整う。つまり手元の顕微鏡でみる限り、本当に細かい切り刃で、ぱっと見はまっすぐのように見える。髭を沿った後は、髭によりできたと思われる傷が現れ、切り刃が粗めにギザギザになる。

もう一つあり、おまけの布砥は薄いため、ピンと張ると横方向に多少たわむ。手元の布との場合は、どうも中央がやや盛り上がるらしい。そのせいでラッピングすることで切り刃にできる、より鈍い角度の小刃が、刃の中心部分は短く、つまり鈍角になり、両端は長く、つまり鋭角になる。

つまり、ピンと張るよりも、多少緩めに持ち、レザーのスパインを押し付けた時のたわみに合わせて、角度を合わせる方法のほうが、均等にラッピングできそうだ。もしくは、より簡単にするには、たわまない厚めの布砥か革砥が必要になるということだ。

更に、毎回洗剤でワックスを洗い落とすのも手間だから、本格的にこのストレートレザーを導入するとしたら、きちんとした革砥を用意し、剃る前に毎回ラッピングするのが良いかもしれない。より高級なレザーで、より研ぎあげたものでないと、「できるだけ研がずに、ラッピングで済ます。使用間隔を開けて、刃先ののこぎり刃の状態を復活させる」という方法は、できないのかもしれない。

もしくは、私のひげが固い可能性も大いにある。

いずれにせよ、どの方法を取るにせよ、当初の「あまり深みにはまらない」という方針に反してしまうので、何かうまい手、かつ安い手が見つかるまで、しばらくお休みだ。

(後日、追加予定)


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